日銀よ、勝負師たれ

小幡 績

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6月17日、日銀は動くべきだ。政策決定会合で、金融政策の修正を打ち出すしかない。

では、何をするか。

その前に、今、何が喫緊の問題か。

異常な円安。もちろん、それは問題だ。修正しなくてはいけない。

異常な金融緩和。もちろん、危機対応はいち早く終了して、正常化の方向に進めなければならない。

しかし、すでに日銀は追い込まれてしまっている。

ヘッジファンドからチャレンジを受けていて、完全に守勢に立たされている。

イールドカーブコントロールという持続不可能な枠組みに自らをあえて陥れたのを、ヘッジファンドが、環境が整ったところで、ついに利用して大儲けするチャンスをものにしようと勝負を賭けてきたのだ。

そして、向こうは、失うものは少ない。

政策決定会合前に、イールドカーブコントロール(現在の日銀の場合は10年物の国債の利回りをゼロに抑え込むこと)の維持が難しくなるように、国債先物を売り浴びせればいいだけで、現状でいえば、利回りが0.25%を下回るように売り(利回りが上昇するとは債券の価格が下がるということ)、万が一失敗しても、日銀が0.25%の利回りで必ず買ってくれるから、0.25%をわずかに下回る水準で買い戻せば、わずかの損失で済む。

一方、日銀が買い支えを断念して、イールドカーブコントロールを放棄する(オーストラリア中銀の政策では2021年11月にそれが起きた)、または修正して、利回りをもっと高い水準に変更することになれば、国債は暴落するから、ファンドはそこで買い戻せば大儲けする。

だからこの戦いは、必ず日銀が負ける。ファンドが勝つまでやれば負ける。

すなわち、日銀の喫緊の課題、今やるべきことは、このファンドをやっつける、または追い払うことだ。

この絡まれている状態のままでは、やるべき政策に移れない。

そしてその前に、ファンドの攻撃の一決で、中央銀行のもっとも大切なものが壊されてしまう。人々からの信頼、中央銀行が発行する通貨への信認、それを守ろうとする中央銀行の政策、言うこと、約束への信用が失われてしまう、ということだ。

したがって、ここはまず、ファンドを打ちのめす必要がある。

そのためには、現在の連日指値オペ、すなわち、毎日利回り0.25%という固定された水準(固定された価格)で国債を無限に買うという約束は、手の内をすべてさらしているだけで、自由に動けるファンドがやりたい放題になってしまう。

だから、この連日指値オペはやめる。

そしてファンドが予期しない手法、タイミングで、国債の売買を行うのだ。彼らを出し抜くのだ。そしてそれを勝つまでやるのだ。

具体的にはどうするか。

現在日本銀行側は、現物の国債を買い入れている。しかしファンド側は、先物で価格を操作してくる。先物を売買している。もちろん、少額で多くのポジションを取れるのが先物だから、中央銀行の買い入れ規模が大きかったとしても、ファンドは対抗できてしまう。

だから日銀側も、先物市場で売買するのだ。

制度改正が必要なら緊急に行い、即刻実施する。

そして、0.25%ではなく、遥かに低い利回り、例えば、0.1%で現物を買い、先物でも0.2%で買うのだ。そして一気に大量に買う。ただし、数量無制限にはしない。無制限だといつでも売れると思ってしまい、ファンド以外の普通の国債投資家がのんびり構えてしまうからだ。0.1%で売れれば、彼らは儲かるから、売りたい。しかし、タイミングと量が限られていれば、今売らないといけない。だから、殺到する。したがって、直ちに国債は値上がりする。

一方、先物市場でも仕掛けてきたヘッジファンドの売値よりも高く買いを出せば、彼らはポジションを解消せざるを得なくなり、財政的に耐え切れず、撤退に追い込まれる。

そんな投機的な売買を日本銀行、中央銀行がしていいのか、倫理に反するという主張は、まったく間違っている。

そもそも、日本銀行のイールドカーブコントロールは利回り0%程度というコミットメントをしている。0.25%の指値オペは実はそもそもおかしいのだ。変動幅の上限が0.25%というだけで、本来は0%の方が望ましいはずなのだ。だから、0.25%を0.1%に下げることは、金融政策としては、むしろ日本銀行が約束していることと整合的で、より望ましいのだ。

そして、投機的にかつ日銀を追い込むことで儲けようとしているファンドが撤退したら、その瞬間に、政策の正常化を一気に進めるのだ。

そのときは、例えば、イールドカーブコントロールの年限の短期化、つまり、10年物の利回り0%程度という現在の政策から、残存期間7年のものの利回りゼロ%程度に変更し、その後あまり時間をおかずに、それを5年物ゼロ%程度にさらに変更する。

こううまくいけば、異次元緩和から普通の金融緩和へと正常化も進む。円安も止まり、反転する。

ただ、これは勝負だから、必ずしもうまくいくとは限らない。

もっとも必要なことは、これは勝負だと認識し、相手は、日本の金融市場を壊して儲けようとしている投機家達だから、むしろ、彼らをやっつけることは、日銀のため、日銀の都合でやっているのではなく、日本経済を守るためであり、全国民、全社会をあげて、日銀のアクションをサポートすることだ。そして、日銀は絶対にひかずに勝つまでやる。

それしかない。