主要国では緩和政策を維持するのは日銀だけ:黒田氏の大きな賭け

すっかり話題にならなくなったコロナ。日本でも屋外の一定条件下ならマスクはいらないという方向のようですが、カナダでは私の感覚ではすごく増えている気がします。(感染者数をカウントしていないので実態が分かりません。)周りは陽性者が急増し家族もほぼ間違いなく一緒にかかっています。カナダの首相も今週、また陽性になりました。ただ一般的に重篤化しないし、治療もなく「家で安静にして5日経ったら自己判断用のキットで確認してね」という具合です。これでよいのかよくわからないですが、本格的な夏を迎える中、あまり開放的にもなれないのかな、という微妙な気持ちです。

では今週のつぶやきをお送りします。

マネーの攻防、先読みは難しく

これほど金融のニュースが踊るのも珍しいかもしれません。アメリカからはFRBの強力な利上げに伴い株価の崩落でダウは3万㌦割れ。日本の株価も直近安値に顔合わせとなったものの日銀が現状の緩和政策を維持すると発表し、株価は少し戻すも為替は大乱高下。これを書いている日本の土曜日早朝には円が前日比一時3円近く安くなっています。私は抱きかかえていた石油ガス関連の投資を全部売却済みで資源関連も売却を開始しました。理由は明らかなトーンの変化です。

欧米の金融政策は好む好まざるにかかわらず利上げを当面突き進みそうです。そしてその矛先を食料と資源に仕向けるはずで政府も力づくでその価格抑制に本腰を入れると見ました。但し、エネルギー価格の下落は経済、特に株価にはマイナスなのです。5月のアメリカの建築着工件数も前月比14.4%下落で景気後退の足音が忍び寄ります。パウエル議長の目指すインフレ抑制と景気の一定の維持であるソフトランディングは一定効果が見えるまでのタイムラグが相当期間あるため、その成果は現時点で図りにくいものです。機関投資家は既に現金を積み上げて始めています。

では日本。主要国では日銀だけが緩和政策を維持すると発表しました。黒田総裁はいつまでこれを続けるかといえば退任される来春まで変えないかもしれません。金融政策としてはほぼ詰んでいます。内外金利差で円安になれば輸入物価上昇となり金利を上げざるを得ないのに無理な金利抑制策をしていることで日銀のポートフォリオは異様に悪化しています。一番怖いのは「ダムの大放水」。つまり日銀がいつかするであろう方針変更の時です。これでマネーは混乱を引き起こします。黒田氏はその激変を自らの手でせず、後任に託すのでしょうか?それとも欧米の景気後退で金融政策が180度転じる2024年まで攻防戦を行うという策略でしょうか?大きな賭けのように見えます。

黒田日銀総裁 日銀HPより Motortion/iStock

パッとしない参議院選挙

通常国会が15日で閉会となり、いよいよ7月10日の参議院選に向けて政治の世界は賑やかになってきます。岸田首相はその選挙戦の最中、G7とNATO首脳会議出席で欧州に行きますが、選挙への影響を恐れたのか、NATO会議で同席する韓国の尹大統領との首脳会談は設けないようです。ただ、立ち話の挨拶は交わすとみられ、外交好きの岸田首相がどう応じるのか、興味があるところです。さてそんな中、自民党は選挙公約を発表、個人的にびっくりしたのは外交政策をトップに、次いで物価高対策、災害対策、感染症対策の四本柱としました。

一般的には選挙において外交は票につながらないとされます。それにもかかわらず外交をトップ公約に持ってきたのはとやかく噂される岸田氏と安部氏が歩み寄りやすかったからでしょう。安倍氏はとにかく保守本流で国を守る、一方、岸田氏は外交づいているのでこの状況を最大限活用し、野党の切り崩しを行うのでしょう。その一方で中国を意識すればするほど公明はやりにくくなるでしょうが、いつもの組織票でどこまで守り切るかという感じに見えます。

立民は今の社会情勢と泉代表のリーダーシップを考えると苦戦が予想され、維新も一時の勢いがありません。読めないのが国民民主で見方によっては躍進があるのかもしれません。ただ、今国会で提出された法案が全部可決されるなど自民党が圧倒し、首相派閥議員の不祥事があろうが、内閣不信任案が出されようがまるでびくともしない現在の体制がまるで中国共産党のように実質一党独裁になるのも困るのです。以前から私が主張しているように自民は割るべきで、日本に真の意味の政治を復活させないと国民の政治離れはより高まる気がします。

独仏伊、ウクライナへの三国干渉ならぬ戦地見舞い

ドイツ、フランス、イタリアのトップが揃ってウクライナのキーウ入りし、ゼレンスキー大統領と会談しました。そもそもこの欧州を代表する3人はウクライナ問題に腰が引けていました。早く停戦を、早く講和を、というスタンスです。マクロン大統領もプーチン氏に何度もそれを持ちかけていますがほぼスルーされてきました。そこで「三人寄れば文殊の知恵」ではないですが、ゼレンスキー氏に「どうだろう、そろそろ落としどころを探ったほうがいいのではないか?」という進言のはずが「俺は国を守る。皆さんもぜひ、力を貸してほしい」という熱弁で「では、もう少し武器を提供します」というオチで帰国の途となりました。

しかし、ゼレンスキー氏疲れは欧州だけではありません。アメリカもここにきて渋々感が出てきており、特にバイデン大統領は表向きの支援の姿勢とは裏腹に「ゼレンスキー氏と会談する予定は」と聞かれれば「時が来れば」とはぐらかしています。バイデン氏はなるべくかかわりたくないというのがアリアリと見えます。その背景の一つにはただでさえ苦戦しそうな秋の中間選挙においてウクライナ問題の扱いを一歩でも間違えればバイデン氏にとどめを刺すことになるからでしょう。

やや驚いたのは欧州三人衆は三国干渉しに行ったはずが説得された上に「ウクライナのEU加盟の後押し」となったことでしょうか?欧州委員会のフォンデアライエン委員長の発表にそこまで踏み込んだか、と思ったのは私だけでしょうか?もちろん条件付きでありますが、EUに入れてくれと待たされているトルコはどうするつもりでしょうか?イスラムはいやでもウクライナ正教会はよいということでしょうか?これでは欧州の地図はより混迷を深めることになりそうです。

後記
学生運動で熱く燃えた経歴を持つ旧知の方と飲んでいた時、お互いによく知るある方が実は「国士」だと教えてくれました。「それでは学生運動派とは真逆では」と聞けば「今の時代は右でも左でもどっちでもいいんだよ。熱く燃えたその行動意識が大事なのさ」と。確かにこの二人は仲が良く、物事に対する打ち込み方はお二人ともすごいです。命を懸けるほどの勢いって私でもついて行けないぐらいの凄みがあります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年6月18日の記事より転載させていただきました。