難民をルワンダに輸送するイギリス政府

谷本 真由美

xavierarnau/iStock

日本では左翼の人々が日本の難民政策は実にひどいということを繰り返し述べているのであるが、その一方で彼らはなぜかアメリカやオーストラリア、欧州各国が行なっている難民対策に対して全く触れないことが気になっている。

私が2021年12月に出版した「世界のニュースを日本人は何も知らない3 – 大変革期にやりたい放題の海外事情」という本にも記載しているが、イギリスは非常に実利主義で合理的な国であるので、日本の感覚からすると政策も過激だ。

難民に関してイギリスが最近行った過激な政策は、イギリスに不法に入国しようとする難民申請希望者を含む移民を、何とルワンダの収容センターに送るという施策で、これは首相のボリス・ジョンソンが今年の4月にルワンダ政府と公式に締結した。

ただしルワンダに送られるのは、公的な書類を持っておらず、戦争難民などではなく「経済難民」としての不法入国の疑いが深い「若い男性」である。

ウクライナからやってくる難民申請者や女性、子供などは対象ではない。

イギリスを始めアメリカの左翼メディアや活動家はこのイギリス政府の決定に対して「非人道的だ」と避難を繰り返しているのだが、その一方で受け入れ国側のルワンダは、このような左翼の発言に対して大変に怒っている。

左翼の言い分というのは、ルワンダは

「経済的に劣った国であり、 人権に問題があるので、そのようなところに難民申請をしている人々を送るのはいかがなものか」

ということだ。

一方で、このような左翼の発言は、ルワンダ側の怒りをかっている。

ルワンダ政府のスポークスパーソンであるYolande Makolo氏は

ルワンダに行くことを罰だと呼ぶのは 単に無礼だ。ルワンダは大変な発展を遂げた。ここに来て自分の目で見てみるべきです

と述べているのだ。

関係者の言い分を会話にするとこんな感じである。

イギリス政府:「難民および違法にイギリスに入国しようとしている人々には、審査中に快適な環境で滞在していただきます。イギリスは現在経済難で、収容センターも古いし収容数が限られています。住宅不足で民間住宅の借上げも困難ですし、インフレで家賃は高額です。公費を最も効率的に活用して、なおかつ申請者の方に快適な生活を保証するため、皆さんにはルワンダに行っていただきます。ルワンダは経済発展している国ですから地元で雇用を見つけることや、スキルアップだって可能です。」

左翼:「難民をルワンダに送るのはひどい!!!あんなひどい国に!!」

イギリス政府:「あなた方は経済発展している国だと知らないのですか?また酷い国とはどの様な意味ですか?あなた方はルワンダの何がひどいというのですか?

ルワンダは今や映画『ホテルルワンダ』の頃とは違うのですよ。虐殺をやっている国ではありません。大変な努力をしてアフリカの宝石と言われている。

女性の政治参加度だって大変高いのです。我々は公費を効果的に活用したいので、イギリスより物価が安く、経済的なチャンスがあり、快適な場所に申請者の皆さんにいっていただき快適な時間を過ごしていただくだけですよ。

あなた、ルワンダに対して失礼でしょう。それは差別ではないですか?」

ルワンダ政府:「そうです。我が国は昔と違うし、経済成長は著しく、ホテルだって外資系のラディソンなど高級ホテルが複数あり『ホテルルワンダ』じゃないし、おしゃれなカフェやレストランもありますよ。女性だって大活躍です。我々をバカにしているのですか?」

左翼:「……」

イギリス政府が指摘しているインフレ率の高さや家賃の高騰、難民申請者の収容センターが足りていないという点は実は事実なので反論のしようがない。

イギリスは10年以上前から収容センターの代わりに民間の住宅を借り上げて申請中の人を滞在させたりしている。難民審査は時間がかかるのでその間に滞在するのだ。

センターを建設するのには莫大な費用がかかるし、申請者の数はかなり変動するので先行きが見えないので公費を使って投資をするのは費用対効果が悪いという実情がある。

移民局の周りには借り上げの家やアパートがかなりあり、政府からの支払いを前提にしている物件を貸し出している大家もいる。

事実そのような地域に物件を持っていると、管理を担当している不動産屋から政府に貸し出す気はありますかというオファーがあったりする。賃料を着実に払ってもらえるので貸し出しを好む大家もいる。

したがって収容センターの業務を海外に外注するというのは納税者の点から見ても非常に納得がいく。

こういった公的施設は利益を生まないし、申請者が難民認定を受けてイギリスに住み始めても、すぐに納税できるわけではなく、一般の人並みに納税をできるようになるのには次の世代になるということも珍しくない。

彼らを支える費用は税金からの持ち出しになってしまうために、コロナ禍後の経済難とロシアとの戦争の中で、手厚い難民施策は有権者からの支援を得るのが非常に難しい。

実はこういう施策を取るのはイギリスが初めてではなく、オーストラリアの場合はなんと2012年から南太平洋にあるナウルの収容センターにオーストラリアに違法に入国しようとする移民を搬送して収容を「外注」している。

さらにオーストラリアはパプアニューギニアにも収容を「外注」していた。長い人の場合は8年も収容されていたのである。

センターには厳しいセキュリティと頑丈な金網が張り巡らされ、日本のセンターに比べると見るからに「収容所」という感じである。

さらになぜか日本のメディアにはあまり登場しないのだ。アメリカの不法移民収容所も日本のセンターに比べると驚くようなもので、金網で囲ったエリアに子供や女性を収容している。

日本のメディアは他の先進国のこのような施策の実態をなぜかあまり報道せず、ひどいひどいと大騒ぎするばかりだが、 もう少し客観的に海外の実情も見てみるべきだろう。