YouTube動画と書籍はどちらが信用できるか?

黒坂岳央です。

新聞、書籍、ブログなどのテキスト文化が隅に追いやられている中、動画メディアが活況だ。YouTubeはもちろん、海外発の動画プラットフォームも次々と出てきている。海外マーケティングをする筆者の元には「うちのサービスを使って収益化に挑戦しませんか?」という営業DMが届くたびに、新たなる動画サービスの誕生を知るという事が続いている。

ざっくり肌感覚で言えば、世の中のユーザーはテキスト派が2割ほど、動画派が8割ほどではないだろうか。つまり、「文章を読むのはしんどいが、動画ならいくらでもイケる」という人の方が圧倒的だということである。昨今の動画プラットフォームの活況ぶりはこのようなユーザー比率に裏打ちされたものだろう。

現時点ではYouTube動画に比べ、書籍や新聞などの旧来から存在するマスのテキスト媒体における社会的信用度の方が高いと感じる人が多いと思う。だが、将来的にこの構図は逆転すると予測する。

davidf/iStock

YouTube動画の情報は信用できない?

中高年層の中には、「YouTube動画など、素人でも誰でも参入できるのだから情報も玉石混交。やはりプロの編集の手を通した書籍や新聞などのマスメディアの方が信用できる」と考える人もまだまだ多いと思われる。そして人口比率でいえば、この年代層は非常に分厚いため、彼らの意見が大きく聞こえるのかもしれない。

確率論でいえば、確かに情報の質が極端に低いものが交じる可能性はYouTube動画の方が高い。YouTuberによってはお金に目がくらんで、本心とは異なるステマをしたり、知識の欠如故に意図せず視聴者をミスリードさせてしまう事例もよく見る。

よく見るのはチャンネル登録者が非常に多い、影響力のあるYouTuberが、門外漢の領域に手を出す失敗だ。彼らは堂々と間違った情報を大勢に伝えてしまっていた、というケースである。皮肉にもチャンネル登録者が多く、話の伝え方が上手いことが悪く作用してしまうわけだ。

以上のことから、「誰でも参入できるから、YouTubeは信用できない。一方、書籍はある程度社会的信用度の高い人が、プロの編集者の手を通すから信用できる」と考える人の理屈は理解できる。

アルゴリズムが情報の信頼性を担保してくれる

だが、近年において信用度が低かったり、視聴する価値の低い動画は、アルゴリズムがかなりの程度排除する仕組みになっている。

情報は不特定多数の支持がある程度質を担保する。炎上ネタなどの例外もあるが、総じて良い情報ほど拡散されるようにアルゴリズムが組まれている。

YouTube動画というプラットフォームは「動画をアップロードして見てもらう博物館」のように思っている人も多いかもしれないが、その実「動画媒体におけるコミュニティ」というのが正しい理解だ。コミュニティであるため、視聴者の支持を得た動画の再生数が回り、アルゴリズムがそのような動画を優遇してより多くの人に見られるようにする循環が出来上がっている。

その結果、ほとんどの視聴者の目に触れる動画は、ソーシャルフィルタリングがなされた良質な動画である可能性が高い。視聴回数の少ない動画を目にすることがほとんどないのは、このアルゴリズムの仕組みによるものだ。特に2020年以降のコロナ禍における巣ごもり行動で、動画も視聴者も大幅に増加した。そのことで、より近年の動画のクオリティや信頼性は高まったと言っていい。

信頼性の低いYouTuberは淘汰される

そしてYouTuberの立場になればわかるが、おいそれといい加減な情報を出せるものではない。

視聴者の多くはその領域の初心者であることが多いが、もちろん玄人も視聴する。税務のチャンネルにプロの税理士がチャンネル登録して視聴する、というイメージである。いい加減な情報を出せば、コメント欄ですぐにツッコミが入るし、コメント欄の使用を禁止するとその意見の行き場は別のSNS媒体へと移る。これは動画のアップロード主に止めることはできないため、「あのYouTuberはウソをいっている」といったような情報を出されてしまうことになる。

特に昨今、視聴者層のリテラシーも過去に比べて向上していることから、YouTuberの評判は必ずと言っていいほど調べられることになる。つまり、信頼性の低い情報ばかり出すようなYouTuberは淘汰されるエコシステムができているわけだ。そのため、発信者側は動画一本の投稿のたびに真剣勝負になるし、視聴者の信用を得るためにも統計データやロジックを用いて挑むことになる。その結果、動画のクオリティも必然的に高まることになるだろう。

YouTube動画はソーシャルフィルタリングによるユーザーの検閲システムをくぐり抜け、アルゴリズムを攻略し、プラットフォーム外の評価に耐えた良質なものがより多くの視聴者の目に触れる仕組みになっている。

この傾向が続けば、「書籍なんか信用できない。再生回数の多いYouTube動画の方が信用できる。」と言われる時代の到来はそう遠くないと思っている。個人的には圧倒的にテキスト派なので、寂しい限りだ。しかし、このトレンドを止めることは、誰にもできない。

 

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