結局、儲かったのは派遣会社だったという事実

尾藤 克之

参院選を前にして「非正規や終身雇用の是非を問う議論」が活発化しています。

1999年の労働者派遣法改正にともない派遣労働を原則自由化となりました。同時期に台頭してきたのが、人材派遣業です。これらの業態が、人材流動化に寄与してきたことは間違いありません。

Cemile Bingol/iStock

変化した労働環境

労働者派遣法改正前は労組が一定の役割を果たしていました。「これ以上、労働環境が改善しないなら自分たちは働かないぞ」と会社に居直って会社に損失を与えたとしても、正規な争議であれば罪に問われることはありませんでした。

たとえば、大手自動車メーカーのなかには、利益だけで数兆円出すような会社があります。それほどの利益を出しているのにも関わらずなぜ自分たちの給料が上がらないのかと疑問に思えばストライキを行使することが可能でした。社員が団結して1週間とか工場を止めることも可能だったわけです。

会社からすれば、ストライキを起こされたら売上は確実に減少します。会社はストライキを解除させるために「〇万円給料をアップしましょう」「基本給の〇%を昇給させましょう」などと組合側に提示して、労使が妥結することも可能だったのです。

ところが、いまの時代は「正社員が働かないなら自分たちがやる」と、派遣や非正規が声を上げることでしょう。そうなると、工場は止めることなく稼働していますから、会社としてはまったく被害を受けることがなくなります。

会社は、「派遣や非正規でまわるなら正社員不要だね」と全部派遣に切り替えることすら考えるようになるでしょう。そうなると、正社員も労働争議を起こすメリットが見当たらなくなります。

日本では第2次世界大戦後、独自の企業別労組が発展します。年功型賃金、終身雇用とともに労使協調の基盤となり高度成長を支えました。昭和50年ごろの労組入会率は30%を超していました。いまは、16.9%と言われています。

儲かったのは派遣会社だけ?

元々、人材派遣は港湾や一部業種しか認められていませんでしたが、労働者派遣法改正により縛りがなくなりました。参考までに、人材派遣大手パソナグループの2020年5月期の純利益は5億9400万円ですが、2021年5月期の純利益は67億8400万円。前期比約1000%を超える結果となりました。

今後、非正規労働は急増し格差は広がるでしょう。ロシアへの経済制裁による物価高や急速に進む円安のしわ寄せは、所得が低く弱い立場の人に向かうことが予想されます。

従来、労働者は労基法によって守られていました。労働者は基本的に不利な立場にあるので権利を保障することが先進国の潮流だったと思います。しかし、派遣法改正によってその枠組みは無くなりました。

企業にとって、無期雇用はできないけど人が必要だという場合においては、派遣を使った方がメリットは高いのです。自社の経営環境が上向かない限り、固定費を下げられる派遣は便利ですから無くなることはありません。

不況が長引けば長引くほど正社員の雇用はリスクになります。雇い入れてスペックが違ったとしても解雇はできません。日本の法律では正社員の解雇が非常に難しいからです。しかし、このような場合、人材紹介などを経由して採用された場合、試用期間中でクビにした場合のコストは、人材紹介側の企業が負担しなければなりません。

企業が独自に採用した場合は、たとえ試用期間中のクビであっても不当解雇になる判例も出ています。そうなると、人材紹介経由の採用ニーズは一定程度維持することになるでしょう。企業にとっても安心材料につながります。

非正規や終身雇用がクローズアップされるなか、参院選後の、各党の政策から目が離せません。

国民の審判は7月10日に下されます。

8月5日(金)銀座百年大学で講演いたします。

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