薪ストーブの規制要望が無視される事情
前稿では、住宅地での薪ストーブにより近隣住民が苦しまされている状況を、筆者に寄せられた手記として紹介した。
本稿でも初めに言っておくが、周辺住民、被害者側に一切の落ち度は無く、煤煙排出者にすべての責任がある。しかし薪ストーブ関係者や使用者と思しき人物からか、相変わらず心無い罵言が届く。その罵言はまぎれもなく被害者に向けられているものだ。
そして一般に社会的立場が高いと見なされる者までもが、配慮と冷静さを欠いた乱暴な言動を取られるのは、いかがなものだろうか。
筆者の一連の投稿は学術論文ではない。内容が前後重複することもある。その点を指弾される方には、「高度な知見に基づく学術論文ではありません」とお答えしておきたい。
*再三再四になるが、本稿以降でも論ずる対象は①の冒頭に述べた事例に限るので、再度確認されたい。筆者は、中山間部や過疎地等、生活インフラの不備な地域や極寒冷地での薪ストーブの使用については否定せず、完全禁止を求めるものではない。
まず、本稿で述べる「薪ストーブ関係者の範囲」を定義しておく。
薪ストーブ製造や輸入販売施工、薪ストーブ暖炉を施工する工務店や住宅メーカー、薪の販売業者やそれに関連する造園業者、林業者、材木販売者等が該当し、これらの業界と親密関係にある各議員も広義で包含しておこう。
前置きはここまでにして、本題に入りたい。
諸官庁、地方自治体、各議員の全てが無視する実態
過去稿②「薪ストーブ問題を議員や行政機関、マスコミが避ける現状」では、薪ストーブに対する苦情対処要望、規制要望を諸官庁、自治体、各議員の全てが無視する実態を述べた。これは地域的な差異は見られず、全国に点在する被害者の声に完全に共通する点であった。
ほぼ全国一律と思われる「木質バイオマス燃焼煙苦情への非対応」を例示していく。以降は全て、議員(公人である)や行政機関による「非対応の事実」であり、公にして支障ないと思われるので、私的な経験や、問い合わせへの態度、調査で明確になった客観的事実、あくまで本人や諸機関、組織等が自ら公にしている事実や反応を「陳列」してみたい。
これは、行動を起こし調べる気があれば誰でも調べることができるので、誹謗や攻撃には当たらない。指摘され公にされて困るような酷い対応やサイトへの記載をしなければ済んだことである。
各議員の対応
● 国会議員や政党に対する要請
残念ながら、各政党、選挙区の国会議員とも、全く反応が見られなかった。完全無視姿勢としか判断できないので、ここに記述する内容が皆無であるのが非常に残念である。
これは各レベルの議員に共通するが、普段の言動や発表から、脱炭素が至上、中でも木質燃焼は最高の脱炭素施策と考え、そこから派生する大気汚染についての認識が皆無であるか、認識しつつも国策と齟齬を生じるので苦情は黙殺のいずれかであろうと思われる。
住環境における局地的大気汚染には、誰も興味や問題意識を持っていないようである。
● 町議会議員に対する要請
複数の町議。旧家農家や元・町議の家系や元・町職員等、薪ストーブや野焼きをする側の人間の縁故者の議員や、問題意識も低く漫然と暮らしているような議員が多い。
当然ながら地元付き合いを重んじる彼らは必ず発煙行為者の側にいる。果ては自ら薪ストーブを使用しているが文句あるか?という議員までいた。そのため、議員は全く応答も現地調査も無い。話は承りました。それで終わりである。結果がプアなのでここに多くを書くまでもない。
もっとも酷いのは薪ストーブ家屋に対策を要請したと議員自身が虚言の回答をした例もある。
しかしそれ以前に、市町村レベルの地方自治体にはこの種の規制条例に関する権限は無いことが判明したので、県レベルに対して話すことにした。
● 県議会議員に対する要請
条例は県の仕事であると町からの回答があったので県議会議員(事務員)に。
当該区の神奈川県議会議員の事務所に何度も出向き、薪ストーブや炭焼き、農畜産における燃焼行為や野焼き等、住環境での大量発煙行為について、実態を伝えて現地調査と規制を、との依頼を行ってきた。ツイッター上でも同様の要請を行ってきたが、同氏は一切応答もなかった。実態調査をする動きもない。挙句にはツイッター上でブロックをされた。これは有権者に対するオミットであり、不誠実な行動と言わざるを得ない。
同氏は地元愛を語るが、彼は自身の趣味である海浜、河川関連に偏重し、山林に対しては管理伐採でその樹木を薪ストーブに活用と発言している。
一般住民の声を聴くというより、自身の普段の活動記録からは同氏の仲良しの業界や友人関連の生業のことしか見ていないようである。薪ストーブ関係者、野焼きをする業種、そちらに肩入れだろうか。私的感情や自身の趣味嗜好を優先するとは、議員の資質を著しく欠くと言わざるを得ない。
一般的には「問題」とされ、場合によっては悪臭防止法や廃掃法にも抵触しかねない、煤煙悪臭の苦情と対処要請を受けたとき、それを一切無視する合理的で正当な理由が全く見つけられない。議員という「公人」である以上、私的感情を優先してはいけない。
議員がブロック(ブロックの練達者である自由民主党のK氏が有名だが)するのは、我々庶民のそれとは全く意味が違い、自身に不都合な言説であっても公人の立場として聴取し、また逆に彼自身の思料する点を有権者に公平に公開すべき責務があることをお忘れだろうか。
これは事実であるのでブロックされた旨の画を掲示しておく。誹謗中傷にはならない。これは同氏の自ら取った行動の結果である。
もしこの記事を読まれていたら、改心してブロック解除と真摯な対応を願いたい。それが本当の地元愛、というものである。ただ、同氏の事務所は煙草の煙が充満し、大気汚染や煤煙悪臭対策はこの人では無理だ、とは感じている。
神奈川県等の対応
● 神奈川県
県の環境担当課に薪ストーブに関する苦情対応を送付したが、その回答要旨要約。
環境省「木質バイオマスストーブ環境ガイドブック」により、薪ストーブ等の適切な使用や近隣への配慮を求める。神奈川県生活環境の保全等に関する条例により、工場等から排出される排煙や悪臭について規制基準有りだが、家庭で用いる薪ストーブの多くが問題を生じている状況とは言えず、現段階で条例規制は検討せず。お住まいの地域で薪ストーブの煙や臭いに困りのお話を役場に具体的に。現地確認し使用者に対して周辺住民の生活環境へ配慮するよう要請
つまり、ここまででお判りだろうが、町と県はたらい回し。本来は県の仕事であるが、県は現調すらせず「問題を発生しているとは言えない」と断言。
神奈川県はこの事業を行っている。薪として、燃料としての使用を想定しているようだが、流木・流木チップの無料配布についてこの事業の関係で「規制条例は考えていない」という回答につながるのだろうか。他の県でも伐採樹木や流木の無料配布事業の同様事例は多数存在する。
● 葉山町
町は現調自体を積極的にしているとは見えない。人数的にもすべての問題に対応しきれないというのは理解できる。他の被害者も、かなり絶望的回答をもらって嘆いている方が複数確認できた。薪ストーブも、野焼きも、産廃焼却も、炭焼窯も、煤煙悪臭野放しの、恥ずべき御用邸のある町。と言いたくなる。
ただ、町長にはツイッターでブロックをされていない、お話を聞きます、という姿勢を見せて頂いているのと、環境担当が(法規制の無い範囲の中では)精いっぱいの対応をして頂いているのは評価でき、それが今のところは唯一の光ではある。
国の省庁の姿勢と薪ストーブ関連業界
都道府県や国の諸官庁、各政党やその議員に対して、あらゆる方法やルートで薪ストーブに関する諸問題を提示し、問題であることを認識いただき対処への道を開くように要請を続けてきたが、前稿②の通り、すべて無回答無視であった。「はい、貴重なご意見を」「いえ、それは脱炭素なので問題なし」の何れかすらの、手旗信号程度の回答すら頂けない。
ここまで、下は地方自治体、議員から上は官庁や政党、政策レベル関係者までもが完全無視、それも、他の多くの被害者もそのような「非対応」をされている現実があった。これは絶対に異常なことである。ここまで完全に一貫して無視非対応を貫徹する頑なさには、必ず大きな大人の事情が存在するはずだ。
そこに至るまでの事情を読み解くために、以下に(各機関や団体等のサイトで自ら公表されている)事実を列挙してみる。それぞれがどのような意味を持つか、深く考察されたい。(*印で注釈をつけておくことにする)
なお、本稿公開以降に各サイト開設者による都合よい改変修正もあり得るので、必要に応じて公開されているサイトの本日現在(2022/07/06)のスクリーンショットを別稿で掲示するかもしれない。
● 農林水産省
農林水産省の本庁舎の1階「消費者の部屋」には、薪ストーブが据え付けられている。庁舎の外側には、屋上まで届く異様に長い、狼煙にでも流用可能と思える程の煙突が伸びているのは、恐らくあまり知られていない事だとは思われる。
農水省の立場としては、林業振興が主な理由で薪ストーブを推奨している。脱炭素と間伐材の有効利用と言う(但し現実の家屋設置の薪ストーブでは廃材や雑多な伐採樹木、果てはゴミまで投入し多煙黒煙事例報告有り、乾燥間伐材使用は必ずしも守られていない)。
まずはこれをご覧頂きたい。
*ここまでして都心で薪ストーブ使用を広報する必要性に疑問。
この写真の右下に置かれている薪ストーブの前面下部の、銀色のプレートに何が書かれているか、ご注意頂きたい。「日本暖炉薪ストーブ協会」が設置者。
*農林水産関係の議員は多い。
*薪ストーブ使用議員も多い。今回は調査で判明の氏名や人数は明示を控える。
*農林水産関係議員は、この薪ストーブ業界との関係性は否定できない。
● 日本暖炉薪ストーブ協会
*排煙の有害性については一切言及せず、欧米並みの薪ストーブの普及を目指すという。
*人には当然に有害な煙。欧州では環境にも優しくないとされているが。
*周辺環境への配慮の文言は一切なし。
事業概要
関係諸法規に関する諸活動
対外関係 : 国土交通省、経済産業省、環境省、林野庁、消防庁、地方公共団体等との情報交換
関連・業界 : 燃料関係業界との交流、試験機関との連携
*関係諸法規を厳しくしないようなロビー活動とも読めなくもない。
*ここに列挙の官庁と密接な関係を明示。これが規制要望が無視される最大の理由。
*試験機関との接近の程度は問題。(US.EPAでは業界有利となる試験実施)
行政との連携
平成26年1月 農林水産省 「消費者の部屋」へ薪ストーブの設置
平成24年8月発行 環境省「木質バイオマスストーブ 環境ガイドブック」の一部を監修
「薪・ペレットストーブの環境にやさしい使い方」
「木質バイオマスストーブ環境ガイドライン 」監修。
*煤煙発生者側の立場から都合よく監修されている諸冊子の科学的疑問。
*何の権限があるのか、行政と連携するという。
お問い合わせ
以下内容には非対応との但し書き。
近所の暖炉・薪ストーブ使用に関するクレーム
暖炉・薪ストーブの使用方法に関する質問
暖炉・薪ストーブの性能に関する質問
暖炉・薪ストーブの施工に関する質問
ストーブ販売店や施工店に対するクレーム
薪ストーブメーカー・輸入販売業者に対するクレーム
*この但し書きから、クレームが相当数に多いのは当然に想定できる。
● 薪ストーブ工業会
*排煙の有害性については一切言及せず、欧米並みの薪ストーブの普及を目指すという。
(4) 薪ストーブおよび木質ペレット産業に関する行政施策についての提言及び参画
*何の権限があるのか、行政に提言をするという。
設置施工基準は考慮するものの、排煙については全く考慮されず。
*排煙の基準考慮は記載なし。周辺環境への配慮の文言は一切なし。
● 薪ストーブ製造販売店やその他NPO団体等
個別の例示は控えるが、人と環境にやさしく、自然素材の煙は完全に無害であると断言する例が多数。煙の有害性には一切言及せず、(表向きは)脱炭素と林業振興のためであるとする。近隣への配慮を充分に説明している例もほぼ皆無。「実害といえるほどの迷惑になることは滅多に無い」と断言。乾燥した薪、EPA準拠高級機、何次燃焼や触媒で煤煙悪臭は出ない(はず)と断言。廃材や何でも燃やせて、無煙無臭との宣伝。
設置施工に関する基準規格の検討のみ。日本の密集住環境に適合する厳しい排煙基準規制を言う者は皆無。周辺の煙への困惑に対して、「火を敬え」と教説する者までいる。
*もはや論外の領域である。周辺家屋への影響は全く考慮されていない。
*売って設置したもの勝ちという状況。使用者に全責任を負わせる姿勢。
海外の薪ストーブ関連の出来事
海外の方から有用な情報を多数ご教示頂いているので、参考までにいくつか付記しておこうと思う。
これらは薪ストーブ業界の闇や実態を如実に表わしている。詳細はリンク先を和訳してお読みいただきたい。
● 木材燃焼煤煙は温暖化加速と大気汚染促進と指摘
Health impacts of PM2.5 originating from residential wood combustion in four nordic cities
過去数年間で住宅暖房のバイオマス燃焼は増加、世界的に今後5〜15年間に一次粒子排出の主要な発生源になると予測。木材の燃焼は、温暖化効果を有する短寿命気候力子(SLCF)のブラックカーボンを放出する。緊急の行動が必要としている。
薪ストーブの利用拡大の大きな理由である脱炭素が、ここで否定された。木材燃焼は却って温暖化を逆に促進し、大気汚染を増加させることが判明した。
● 豪州、人口の4分の3(77%)が都市部や市街地では薪ストーブ禁止希望
人口の4分の3(77%)が都市部や市街地では薪ストーブ禁止希望。半数以上が段階的に廃止(55%)または完全に禁止(54%)すべきと。喘息患者は更に都市部の薪ストーブの規制に84%の支持、完全に廃止支持71%‥これが普通のまともな感覚。日本でも調査すれば同様だろう。
● 薪ストーブ、暖炉等の大気汚染に関するレポート
Journal of the Air & Waste Management Association, Volume 72, Issue 7 (2022)
住宅用木材燃焼暖房(薪ストーブ、暖炉等)の大気汚染に関するレポート各種。大気質、大気汚染防止、廃棄物管理科学技術に焦点を当てた環境保護改善のための研究を出版。
● JOTULによるAmerican Lung Associationへの資金提供
US, American Lung Associationは、ノルウェイの薪ストーブ製造販売業者ヨツール(JOTUL)から多額の資金を受け取っている。これでは呼吸器関連学会は薪ストーブによる大気汚染や健康被害について、強く指摘できない。
ヨツールは高級薪ストーブとして北欧好きな日本にも多数輸入されている。
● UK,SIAによる煙は無害論文
UK,StoveIndustryは言い逃れの正しくない論文を発表
薪ストーブからの煙が有害である証拠は無い、という論文を提示。
● US,EPAの試験結果の偏り
Doctors and Scientists Against Wood Smoke Pollution c 2020
欧米基準を満たした新しい薪ストーブはクリーンだというのは嘘。2015年基準EPA等の試験は最良状態で安定燃焼時の煙しか調査しておらず、実際に家庭で使用される状態では大量の有害物質を排出し続ける事実が判明している。木材燃焼が無害で環境に優しい、という根拠はもはや失われた。
日本での薪ストーブ規制と欧米の動向
● 日本国内では
日本国内の現状は絶望的な状況と言わざるを得ない。調査を進めるほど、惨憺たる無策と、行政と癒着した薪ストーブ業界の、法規制が無いのを逆手に取るような、やりたい放題が露見してくる。
これは欧米でも同様である。報告では、英国、ドイツ、オランダ、ベルギー、カナダ、アメリカでの、薪ストーブ業界が政府、行政機関や議員と密接で不適切な関係を維持(もちろん金銭提供も有るという)して、規制を強化しないようにロビー活動を繰り広げているという。
日本国内では、排煙や臭気を規制する法律や条例が無い状態で、「個人の権利」「商売の自由」という権利だけが濫用され、近隣住民の「きれいな空気を自由に吸える権利」が一方的に侵害されている状態を、行政も、薪ストーブ関連業界も、意に関せず販売設置を進めている不誠実な現実がある。
通常使用しても煤煙臭気を発生させる器具を製造販売する者の製造者責任、また使用者が煙に対する責任は全く問われることがないという、異常な状況が長期間放置されている。
設置に関しては火災予防目的で消防法があるものの、排煙自体については全く規制されていない。過去の慣習から来る容認姿勢と、一般民間人はあまり他人に迷惑になる悪いことはしないであろう、という古い性善説とが、排煙規制が未だに検討されていないもう一つの原因であろう。
工業地帯では煤煙悪臭や有害物質を出すが、一般住宅からは有害な煤煙悪臭は出ないであろう、という前提で悪臭防止法では民家は対象外であるが、これも今後は適用範囲とすべきであろう。生活環境を脅かす懸念がある発煙行為は発生源を問わずに制限されるべきである。
● 欧米では
日本の薪ストーブ関連業界はいう。日本国内でも欧米並みの普及を目指したいと。行政も、税金を原資とする補助金を出してまで普及を目指すという。
しかし、何でもかんでも欧米と同じにする合理的根拠は無い。各個人の単なる憧れや趣味、心情面の問題でしかない。欧米や豪州では、住宅地や都市で少数の者が趣味的に使用する薪ストーブの煤煙悪臭により、その他の多くの住民を苦しめる深刻な大気汚染を激化させているという。
2015年規制クリアの「新しい」薪ストーブに置き換えが進み、それでも問題は相当に悪化しているという。基準クリアというのは問題解決策にはならないと、現状の欧州で証明されている。この流れを受け、デンマークのコペンハーゲンでは遂に木材燃焼暖房が禁止になった。日本で、なぜその悪しき大気汚染まで真似する必要があるのか。
欧州では、ヒートポンプ式暖房が高所得層に広まりつつあるという。空気を汚すことの罪悪感と、木材燃焼煙の健康への悪影響が浸透しつつあること、煤煙をまき散らすのはスマートではない、という価値観の大きな変容もあるという。薪ストーブを使用しているのは低所得層と、趣味で使用している者が主だという。
筆者は温暖化に賛同でも懐疑でもなく、どちらかといえば少し温暖化しているかという程度で、そこまでひっ迫しているとは思えない。
脱炭素を第一に進めるあまり、特に木質バイオマス燃焼が欧州で問題化している。大気汚染と森林破壊が過剰になり、本末転倒状態であるとの指摘がされている。EUの環境委員会は、木質バイオマス燃焼を再生可能エネルギーから除外し新規の補助金を停止するという。
その主な理由は、森林伐採、環境破壊、大気汚染、健康被害が挙げられている。自然素材の樹木を燃焼させても有害としている。
欧州人は或る意味で変わり身が早い。10年前の脱炭素の常識などあっさり捨て去ろうとしている。高所得層ほど早期にスマートで環境負荷の低い「燃やさない電気暖房」に確実にシフトする。
その流れを日本でも真似してはどうか。欧米並みを言うなら、すぐに追随する動きを見せてはいかがであろうか。大気汚染をしながら、近隣の多くの住民に、まさに「煙たがられながら」暖をとるのは、もうクールではない。
二酸化炭素やメタンは通常濃度であれば無害であり大気汚染物質ではないが、燃焼により生じるPM2.5やNox,Sox等は有害な大気汚染物質であるのは科学的、医学的常識である。
最近の研究例から。木材燃焼煙の有害性の指摘、本場のスウェーデン北部のウメオ大学の研究者による。薪燃焼由来の大量の煙がある住宅地の人々は、認知症のリスクが30%高いと発見。暖炉のある家庭ではリスクは70%増加。隣人による他人への薪ストーブ暖炉による健康被害、有害性が科学的に証明されている。
● 日本で広く普及しないのは当然
薪ストーブは煤煙と燃焼臭気を必ず出す。無煙無臭などあり得ない。現状で都心や住宅地で煙突が林立するほどに普及しない理由は子供でも分かるほどに簡単。煙とにおいが近隣に迷惑になることを、多くの人が理解しているからである。
逆に言えば、煤煙悪臭さえ出なければ、全く問題無い。
それでもどうしても薪ストーブを使用したいのであれば、排気浄化装置を付加すれば、都会のピザ窯同様に気兼ねなく火炎を楽しめるようになるはずだ。
何度も繰り返すようだが、薪ストーブで苦情が来たなら、いや、苦情が来る前に、まずこの機器を装着してほしい。一軒からの苦情は数十軒以上多数の潜在被害者が存在することを認識したほうが良い。
薪ストーブ用すす取り装置「ススとり君home」 株式会社クリエ (c-clie.co.jp)
このような装置が存在するのは、木材燃焼煙は臭くて汚いという事実からである。
現状の薪ストーブ用排気浄化装置ではこの機器が最も高性能であり、強く推奨する。それこそ、環境意識と周辺への配慮の印であり、隣人たちから感謝されること請け合いだろう。僅か、たったの100万円で大気汚染を防止しながら薪ストーブを使用できるなど、とても素晴らしいことだと思って頂きたい。
火への畏敬の念を持て、と仰られる方がいるが、その前に、隣人たち、人間への畏敬の念を持って頂きたいと願うものである。
再三ながら最後に付け加えたい。日本の医師や研究者で、薪ストーブ、木質燃焼の有害性と健康被害についての研究は一例も無いはず(世界には多数の研究論文が存在するのに)だが、この研究をされると、名誉ある第一号の称号が得られる。志ある研究者の登場を待ち望むものである。
編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2022年7月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。