大都市、市街区域、近郊住宅地における薪ストーブや暖炉の排煙問題④

青山 翠

filo/iStock

寄せられた声:煙による被害者の嘆きと罵言

近隣家屋や事業所等からの薪ストーブの煙による被害者の声が、数年前から投稿している筆者のブログにも多数届けられている。アゴラの私の記事や、豪州クイーンズランド大学、野北和宏教授の作成された関連動画を視聴されたと思われる方々から、こちらに頂いた声もある。

いずれも、やり場のない嘆きの声、議員や行政の無視無策への怒り、法規制が無い、薪ストーブ使用者や販売会社による不誠実な言い訳対応、煙害を無視して林業振興を理由に薪ストーブを推進する環境省や農林水産省の政策、請願を無視拒否する議員への不満など、それらへの憤怒ばかりであった。

「薪ストーブ被害はこれほどまで酷いのか」と認識を新たにした。

個別事案の紹介はどうかとは思ったが、直接頂いた生の声は非常に大切であり、本稿を特に起こすことにした。

非公開にすべき情報や私信的な内容も多数含まれているので、ブログへのコメントの公開は最小限にしてある。しかし、薪ストーブ被害の実態、不都合な真実を広く知っていただくため、本稿ではそのうちの一部を原文のまま紹介させて頂くことにし、それぞれに筆者の見解を付すことにした。また、寄せられた声には僅かだが攻撃的な内容のものが見られたので、それも敢えて末尾で紹介する。

※再三になるが、本稿以降でも論ずる対象は(1)の冒頭に述べた事例に限るので、再度確認されたい。筆者は、中山間部や過疎地等、生活インフラの不備な地域や極寒冷地での薪ストーブの使用については否定せず、完全禁止を求めるものではない。また、関連記事についても一読をされたい。

反論、ご意見等を持たれる方も当然居られるであろうが、これについてはオープンな言論の場である、言論プラットフォーム「アゴラ」では一般投稿を募集しているので、ぜひ、罵言ではなくそちらで論を交わせたらと願うものである。

薪ストーブ被害者から寄せられたコメント

※(編集部より)情報提供者の信頼性、真実性が客観的に確認できないので<1>提供手記は削除しました。(2022年9月11日)

筆者はこのような例も聞いている。不動産業者に問い合わせたところ、

「薪ストーブ家屋の付近ですか・・・あー、ゴミ焼き場とかと同じで、いつも長期間煙が出ているようなら、そこはお値段低くなりますね、一般論として。煙って普通は迷惑じゃないですか、迷惑施設が付近にある、というのと同じです。あと、売るとして、それを告知しないのはまずいです。半年間、連日煙くさい場所にある家は、知らずに買われクレームになる可能性もありますね。」

また、このような例も聞いた。

ある新規造成地が売り出され、そこそこ売れて家も立ち、各世帯の生活が始まり落ち着いた頃、まだ空いている土地に薪ストーブ家屋が、薪ストーブを付ける旨の事前説明や挨拶も無く工事が進み完成し入居した。

まもなく薪割り騒音が始まり、その冬からこの新興住宅地は煤煙に覆われ、その後、まだ空いている土地はずっと空き地のまま。それどころか、今まで注文住宅を建てて住んでいた住人のうち何軒かは、ここには住めない、煙がひどい。と泣く泣く売却し転出してしまった。もちろん、そのような場所なので、売価が下がったであろうことは推測に難くない。

薪ストーブが近隣で使用されることにより、健康被害、生活上の支障のほか、不動産価格への侵害もある。引っ越しを余儀なくされる生活破壊という最大の実害さえも起きている。

<2>
住宅地の最後の空いていた区画に昨年新築した家が薪ストーブでした。しかも引っ越してきて薪割して、その冬にそのまま燃やしていたようです。薪ストーブにしたいなら周囲50m程度家のない場所にするべきではないでしょうか。4月の末まで臭ってきて非常に不快でした。近隣の迷惑、苦情を言う労力など全く分かっていない非常識な夫婦だとしか思えません。

苦情は言いましたが、「薪の乾燥が足りなかったので・・・」とのことで、案の定薪ストーブの常識とも言える乾燥を怠って薪割したその年に燃やしていたようでした。

こんな非常識な夫婦のせいで穏やかな生活ができなくなるなんて・・・

※筆者注
乾燥が足りようが足りまいが、煙と燃焼臭気は出る。建築廃材を薪にして黒煙を出しているケースも報告がある。

何を投入して燃やしても無煙無臭と宣伝する販社もあるようだが、そのようなことはあり得ない。この場合、後からやってきて薪ストーブで迷惑をかけているが、逆のケースもあり、論点をすり替え、「後から来て薪ストーブに文句つけるな」と恫喝された酷い事例も聞いている。

<3>
東京都H市に家を建て住み始めて4年。2019年夏に隣が家を建て薪ストーブをやりはじめました。本当に迷惑しています。

煙突は我が家より低く、距離は車一台分くらい距離しかはなれていません。さらに我が家は24時間換気で強制的に空気を吸っているため(平成15年の法律により設置、稼働が義務になっているので基本的には止めるとこちらが二酸化炭素中毒などのおそれがあり止められません)薪ストーブがはじまると100%くらいわかりますし、煙と臭いが入ってきます。

換気しようにも外が煙ですからもう住めたものではありません。まだ4年しか住んでいませんが家を売ることを視野にいれています。(しかし、煙を気になさらない方がどれだけいてくださるか。家が売れるか心配はつきません)隣家には3度ほどご注意申し上げましたが、やめる気配はなく、この夏もどんどん薪(薪というより材木ぽいものもあり)をつみあげています。薪置きに屋根もありません。

自治会にも相談しましたが、当人同士でやってくださいという冷たい返事。高齢が多い自治会のためか、他に困っている人がいないからという感じで閉口しました。

そこでそのほかにそのようにアクションをすればよいか、なにか良い案をいただきたく、こちらにコメントさせていただきました。

薪ストーブや暖炉がエコというのは全くの幻想ででたらめだと思います。なぜならあれだけ煙がでてあたり一面真っ白に煙り、臭いをまき散らすことはエコでありません。薪ストーブの真ん前にいるときだけ熱効率が良く温まるのはそうでしょう。しかし、燃やすなら排出するガス、煙にも責任をもっていただきたい。

※筆者注
本質的には後か先か、ではない。住宅地にこのような暖房器具を設置する事がそもそも不適切である。住宅密集地に薪ストーブ家屋ができると、このような問題は起きて当然である。

現に規制する法令が無い、近隣の関係を慮って苦情を言い出せない例が殆どであろう。苦情を言うと逆に煙が多くなるという「逆切れ」事案も最近聞いた。

住宅地に薪ストーブを平然と施工する販社が現に多数存在する。彼らは「今の薪ストーブは煙りも臭いも出ません。実害といえる程の迷惑にはなりません。新しい薪ストーブは二次燃焼や触媒もあり、薪は燃やしても完全無害。理解してくださいお互い様で我慢の範囲です。」このように明らかに科学的に虚偽であり、消費者庁案件になり得るような文言で宣伝している現実が多数確認されている。

通常使用でも煙が出て周辺に迷惑になる器具の製造販売、その責任を取るつもりが無い販社の社会的責任はどうか、という批判をしておきたい。

それと最近の報告だが、木材燃焼はカーボンニュートラルではない、再生可能エネルギーではない、とEUの環境委員会が決定した報道は、なぜか日本では一切されていない。この詳細についてはいずれ別稿にしたい。

<4>
初夏から夏にかけて見にきて、自宅を購入してしまったので、最近引っ越してきて煙の酷さに困惑しています。

しょっちゅう煙臭く窓が開けられないのも閉口しましたが、薪ストーブ程度は仕方ないか・・と思っていたのですが、先週から今週にかけて何日か、一晩中、異様な焦げ臭さが周辺に立ち込め、家の中まで悪臭が入り込みます。

目に見える煙という形ではなく、風に流されているうち色が無くなるのでしょうか、うちの周辺では臭いだけが漂っていて、発生源が分からないのですが、これって炭焼きなのでしょうか。

この記事ではNPOということで、葉山のことではないと思いますが、葉山に引っ越して来て初めて、炭焼きサークルというのが町内にあると知り、サークルではもしかして十分な設備でやっていないのではないかと不安です。

本当に、体に悪そうな臭いですし、実は軽度の化学物質過敏症なので肺が痛んでだるいです。周囲の人には葉山でよくなるといいですね、と言われたのに、悪化しそうです。空気がいいどころか、公害レベルです。

過敏症が軽度なので、侮っていたというか、多少はストーブの煙など大丈夫だろうなどと考えて引っ越してしまったのがいけなかったのでしょうか。

どこからの煙なのかをどうやって確かめたらいいのでしょう。どちらに相談したらいいのか分からず、コメントさせていただきました。

※筆者注
冬季の状況を観察してから不動産購入を勧める。政府の無策が継続する以上、このような悲劇は今後増加する。

この方は移住されて後悔している。筆者はこの問題発生地点も調査済みである。筆者の住む葉山町は、元々空気が清浄であったはずだが。

しかし、ここ十年前後くらいから(そのような業者が跋扈し始め)薪ストーブが増加し、それにつれ冬季の大気が汚染されてきている。きれいな空気を期待して移住し、この方は化学物質過敏症と思われる方だが、非常に後悔されている。この自治体と原住民の環境意識の低さを嘆いておられた。行政は「法がないので」との回答だという。

薪ストーブ使用者と思われる者から寄せられたコメント

●1:薪伸二
だいぶヒステリックになってますねw
すいません、必死な姿に笑ってしまいました。
お隣がエコで汲み取りバイオ便所なんかにしたらどうしますw

こんな所で負け犬の遠吠え必死に書き込むより、勇気を出して本人に言ってみては如何ですか?
それが出来ないなら貴方が引っ越すというのも手段の1つだと思います。金持ち喧嘩せずとか言いますよね。

●2:はや
ディーゼル推進のEUが指摘したのを考えてほしいですね
触媒でどの程度排気が無毒化できるとか調べたことありますか?
発がん性物質がどういうもので、どのように作用し認定されてるかご存知ですか?

道路の粉塵とか人工物を汚染や発がんとか言い出すときりがないです
当事者として気に入らないから薪ストーブはダメだと病的にアレルギー起こすのは分かりますが視野が狭いとおもいますよ

我慢しろとか薪ストーブは良いとかでははなく
単純に薪ストーブ熱狂に力説しても書かれてる論理では

※筆者注
繰り返すが原文のまま掲載した。このような文言が送られてきた。

しかし残念ながら科学的、理論的な反論は皆無であったことを特に指摘しておく。

この言葉を叩きつける者が薪ストーブを売り、使う人物であるなら、それが何を意味するか。

皆さんは、彼らの発言を、どう思われるだろうか。

ここでもやはり、薪ストーブ者の定番と言って過言でない、論点のすり替え反駁が見られた。
薪ストーブ使用者であろうが、このように感情をむき出しにし、乱暴で礼を失した文言を送るということ自体が、住宅地で薪ストーブを使用し近隣住民に迷惑負担を掛けている者の真の姿であろう、と自ら証をされたようである。

筆者は一言だけ反論して終わらせる。

「あなた方の言動が次第に自らの首を絞めている。」

薪ストーブの煙による被害の代表的な例を、筆者に寄せられた声で紹介した。これはほんの例であり、その他にも家屋や自動車が煤により汚損、火災による類焼、薪に群がる害虫、苦情に対して脅迫恫喝行為という声も報告されている。

筆者は海外、欧米での薪ストーブ被害に関しても調査しているが、残念ながら国が変わっても、この類型、被害者の嘆きの声、薪ストーブ使用者や販社の声は全く同じであった。

ただ、日本と欧米との違いも明白であることも判明した。欧米の被害者は、医師や科学者も巻き込んで通年にわたり積極的に自ら活動し、調査研究を続け発信し、グループを作ってwoodsmokeの危険性と木質燃焼の規制を訴え続けている者も多い。

しかし、日本の被害者たちは秋から春までは被害を訴えるが、その季節を過ぎると沈黙してしまう。苦情を言うことも諦め、誰かが何とかしてくれる、そのように考えている被害者が多数であろう。この消極的姿勢が事態を年々悪化させてきたことに、被害者諸氏も気が付いてほしい。

最後に付け加えたい。日本の医師や研究者で、薪ストーブ、木質燃焼の有害性と健康被害についての研究は一例も無いはず(世界には多数の研究論文が存在するのに)だが、この研究をされると、名誉ある第一号の称号が得られる。志ある研究者の登場を待ち望むものである。

次回稿は「薪ストーブの規制要望が無視される事情」を予定している。


編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2022年6月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。