病院の正式な死亡確認時刻より数時間前に死亡発表:これこそマスゴミのおごりだ

悲劇は起きた。4日の産経新聞正論欄で、安倍総理のコロナ流行初期の学校休校は危機管理の観点から正しいと書いたが、まさか、このような危機管理に欠けた警備体制下で安倍元総理が射殺されるとは思わなかった。かなり批判を受けた総理だったが、日本の国際的な存在感を高めた意味では、立派な総理だったと思う。

それを示すエピソードとして、私の友人である元駐日メキシコ大使のツイッターを紹介する。

Shocked by murder @AbeShinzo, former Prime Minister and most important political leader #Japan in the 21st century. Great friend 🇲🇽. My condolences to wife Akie, family, friends and noble Japanese people. Japan 🇯🇵 and Asia lose a pilar of peace and stability. @EmbFukushima @SRE_mx @CsocialTec

とショックを受けた状況をコメントしている。

米国で過ごした6年間、安倍総理のニュースを度々目にした。米国内の報道からも日本の存在感が高まったのは事実だ。国際的な不安定さが増す中でのこの悲劇は日本に取って大きな痛手だ。

悲劇そのものは痛ましいが、医師が正式に死を宣告する前に、報道で先行して死亡が報道されたのは嘆かわしい。あるジャーナリストは事実を確認して情報を流したと言うが、本当に馬鹿かと思う。死亡を宣告できるのは医師だけなのだ。誰に確認したのかわからないが、法的には正式な医師による死の宣告時間が死亡時刻だ。こんな基本的なことがわかっていない記者など、記者と呼ぶに値しない。

毎日放送サイト、安倍元首相の死亡確認2時間前に「死亡」誤配信…「勘違い」と謝罪

たとえ、状況的には厳しくても、夫人が到着し、納得した上で死亡を告げるのが「人の道」なのだ。夫人が死に立ち会って最後の瞬間を看取るのか、死が宣告された後で死者となった安倍総理に会うのかでは、遺族の気持ちは大きく異なる。医療が単なる科学でない部分がそこにある。

夫人の心情を思いやる心が大切なのだ。「家族が到着するまで延命治療を続けて、家族に死を宣告する瞬間を共有してもらうこと」、すなわち、「家族が死を看取ること」は医療現場では少なくない。報道にもこのような医療現場での心のケアを理解する常識が必要だ。何が、早く報道するのが、メディアの使命だ!。

どのような確認をしたのかわからないが、法的な死の定義も知らず、家族の気持ちも慮れない人が報道に携わっているから日本はおかしくなるのだ。人間の情がわからない報道記者など退場すればいい。

奈良県立医科大学附属病院の記者会見 NHKより


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2022年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。