「年下から嫌われている人」から距離を取りなさい

黒坂岳央です。

お笑い芸人の飯尾和樹氏がテレビ番組で「年下から嫌われている人は距離を取れ」という持論を展開し、大きな反響を得ている。これは人間関係における核心を突く言葉であると感じる。これまで無意識に筆者自身もこの姿勢を意識してきたので、この言葉を聞いた時にポンと膝を打ちたくなる心持ちになった。

今回は会社員の立場における、人間関係を前提に論じたい。

airdone/iStock

「年上に好かれ、年下に嫌われる」はなぜダメか?

どこの会社にも「上司から好かれているが、部下からは嫌われている人物」がいる。大抵の場合、ゴマすりとヨイショで上司からは好かれるが、面倒な仕事を押し付けたり手柄を奪い取ったり、態度が横柄であるために部下からは嫌われているというものである。

実際、このような人物は古い日本企業的な体質の会社に多いという肌感覚がある。人事評価が360度ではなく、上司のさじ加減で上に引っ張り上げる類なら、このような人物は昇進しやすいかもしれない(一部の外資系も例外ではないが)。

だが彼らの姿勢も理解できなくはない。なぜなら、会社員の立場で昇進を考える上での自己保身からも、上司に嫌われることはなんとしても回避したいと思うものだからだ。だが、上司に好かれたいと思う行動は理解できても、すなわちそれが部下をないがしろにしていい理由にはなり得ない。

つまり、部下や年下から嫌われる人はそれだけの理由があるのだ(次のパラグラフで取り上げる)。

無抵抗な相手に対する姿勢がその人の真の性格

筆者が常々思うことの一つに、「無抵抗な相手に対する姿勢がその人の真の性格」というものである。多くの人は言語化してなくても、肌感覚でなんとなくこれを理解しているのではないだろうか。男女交際において外食時に男性が店員に横柄な態度を取るのを見て、女性が幻滅するのも潜在的なリスクを嗅ぎ取っているケースからもそれが分かる。

会社員の上下関係においては、基本的に部下は上司に逆らうことは許されない。それ故に、上司は部下に対して裸の王様になりがちだ。部下も表立って上司に嫌な顔や反対意見は出せないから、上司は自分が部下から嫌われていることに気づくことが難しい。これが行動改善を難しくしており、上司はますます自分が気持ちよくなるために部下への問題行動を増長させてしまう。

つまるところ、第3者からその人物の性格をはかる上で、部下や年下から信用されている人は、少なくともコミュニケーションを取る上でリスクから解放されている可能性が高いと言えるだろう。

年下から好かれる人の特徴

では逆に年下から好かれる人はどのような人だろうか?下記はあくまで持論だが、次のような特徴があると思っている。

1つ目に年上や立場が上であるが故に、人生経験や知識を価値提供してくれることだろう。会社ならキャリアや仕事での、課題に対して傾聴・共感し、アドバイスをするという具合である。嫌われる上司の場合は、アドバイスの皮をかぶった「お説教」「自慢」で承認欲求を爆発させてしまいがちだが、好かれる上司はあくまで相手への価値提供に留められるメンタルコントロールができるだろう。

2つ目に尊敬できるポイントを持ち合わせていることである。人は自分にないものを持っている相手に尊敬の念を抱く。人生経験が豊富であるが故に、誰もがパニックになるような鉄火場でも落ち着いて対処する様子を見せたり、年上相手にも謙虚で相手へのリスペクトを忘れない姿勢は、年下からの尊敬を獲得するチャンスになり得る。

3つ目に面倒見の良さである。仕事などで不安に感じている相手の心理を理解し、先回りして相手の不安を取り除いてくれるような面倒見の良さも、好かれるポイントになるのではないだろうか。この現象の別の言い方をするなら「包容力」と言えるかもしれない。

以上のことから、相手の人的魅力は年上との関係性というより、年下からの信用を勝ち取っているかで判断できると思っている。その逆に相手が無抵抗で立場の弱い年下だからと強権を振りかざすようなら、できるだけ距離を取るべき相手と言えるのではないだろうか。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。