安倍元首相の暗殺は、国家にとって大きな痛手であるだけではなく、個人の生活を破壊し、ご本人だけではなくご家族にも計り知れない苦しみと悲しみを与えたという点からも、絶対に許されない暴力行為です(写真はTIME誌の表紙から)。
事件の全貌に関し、ネット上で様々な情報が飛び交っています。私は犯罪心理学や政治の専門家ではありませんから、断定的な主張をするべき立場ではありません。
そんな一個人として、多くのコメントの中で最も納得感があったのは、日本の格差社会の広がりの中で鬱積した絶望感と怒りが生まれた。そして、誤解と妄想によって無関係な政治家に矛先が向けられ、最悪の事態に至ったのではないかという分析です。
格差社会は、社会の不安定性を高める要因です。将来への希望がなくなれば、誰かをスケープゴートにして自暴自棄になりがちです。
そして、SNSを始めとする大量の情報によって、何が正しい情報かが見えにくくなりました。
新聞やテレビを見る人が減り、ネットからの情報収集に頼る人も増えています。そもそも、マスコミの報道に対する信頼感も今や失墜しています。ネットの玉石混交の情報の中で冷静な判断が難しくなり、誤解と妄想はこれから益々広がりやすくなっていきます。
都合の良い情報を勝手に組み合わせ、本人に悪気がなくても陰謀論を撒き散らしてしまうナイーブなインフルエンサーも増えています。
このような誤解と妄想は、暗殺事件までいかなくても、本人が気が付かないうちにマイナスの影響を与えることがあります。
私も、SNSにアップした画像や動画から、プライベートに関して、勝手に根も歯もない誤解と妄想をされたことがあります。勘違いした人からの的外れなとばっちりで、自分の周りの無関係な人たちに迷惑をかけてしまったことがあります。
こんな風に思い込みで衝動的な行動をする人は、珍しくないのです。
だからといって、他人からどう思われるかをいつも神経質に気にしながら、自制する毎日は息苦しいものです。
他責にして恨むというネガティブな感情を持つ人が、少しでも減っていくような世の中になってほしいと心から願います。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年7月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。