幸せの尺度は絶対値ではなく「ベクトル」

カンボジアのような新興国に出かけると実感するのは、街の人々の明るく屈託のない笑顔です(写真はプノンペンの空港行きの列車)。

日本の通勤電車の中にいるときに感じるような、重苦しい希望のないどんよりとした表情とは対照的に、未来に向けた明るさに満ちているのです。

確かにカンボジアのような新興国は、経済的には日本よりまだずっと貧しく、幸せと言えるレベルではありません。医療も遅れており乳幼児の死亡率も高く、平均寿命も長いとは言えません。

しかし、日本人よりなんだか楽しく幸せそうに見えるのは、幸せの尺度はその絶対値ではなく「ベクトル」で決まるからだと思います。

今が幸せかどうかよりも、これからもっと良くなると思えるかが大切なのです。

kohei_hara/iStock

人は未来に希望を持って生きる存在です。今日より明日が良くなると思うことができれば、もし今が辛くても、希望を糧にして現実を生きていくことができます。その現実は、いずれ解決されると期待できるからです。

今がそれなりに幸せであっても、未来に希望が持てなければ幸せは感じられません。今日より明日が不幸だと思えば、今日が幸せだったとしても憂鬱な気分になってしまいます。

日本人が幸せを感じにくいのは、人種的な遺伝的レベルでの要因もあると言われています。しかしそれ以上に思う事は、今日より明日が幸せになると確信を持っている人が減ったことではないでしょうか。

シニア世代は未来のことをあまり考える必要はありません。現状維持を何とかして「逃げ切りたい」というのが本音だと思います。しかし、若者は違います。30年後50年後の自分がどうなっているのか?そこにポジティブな感情を持てなければ、幸福感は得られません。

世代によって、同じ経済状態であっても捉え方が大きく異なってきます。諦めムードで現状維持で良いと思うシニアと、現状を何とか変えたいと変化を求める若者。共通するのは、日本の将来に対する悲観です。

経済的に豊かになったのにも関わらず、人々が幸せを感じられない日本。多くの人が幸福を感じるようになるためには、何が必要なのでしょうか?


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年7月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。