他の人の意見を聞きすぎてはいけない

黒坂岳央です。

「相手の意見にしっかりと耳を傾けなさい」とよく言われる。これは確かに正しい。自分一人ではたどり着けなかった真実は、時に他人の意見で気付かされることはよくある。筆者自身、できるだけ意見には耳を傾けるようにしているし、時には耳の痛い指摘を受けることもある。その際はできるだけプライドは捨てて必要な改善を試み、指摘してくれた相手になるべく感謝の気持ちを伝えるように意識している。だが、「聞き過ぎる」のは「まったく聞かない」のと同じくらい良くない結果をもたらしかねない。

何を聞くべきで、何を聞くべきでないのか?個人的な見解を論考したい。

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耳を傾けるべきでない2つの意見

一口に意見と言っても、その「質」は実に千差万別である。新たな気付きや着想を得られる素晴らしい意見がある一方で、単にリテラシー不足で誤解しているだけだったり、批判の皮をかぶった自慢や憂さ晴らしなど無益なものまで様々ある。大事なのは耳を傾けるべき意見と、聞くべきでない意見を分別する眼力である。

まずは「耳を傾けるべきでない意見」を取り上げたい。個人的には「ベクトルが自分自身にしか向いていない且つ非建設的なもの」それから「ターゲット外からの意見」の2つがあると思っている。細かい例外をあげるとキリがないが、ざっくりこの大別ができるだろう。

まずはベクトルについて。意見を出してくる人の中には、第3者に自分の不満をぶつけるためだけに言っていたり、「あなたのためにいうが」と、一見すると建設的意見であるかのように前置きをしつつ、実際には「自分はこの分野に詳しい」と周囲に自己顕示欲を爆発させているだけのものもある。会社の上司が若手の部下に対して行われる「説教風憂さ晴らし」もこの一つだ。オンラインでもしばしば発信者をやり込めて、悦に浸る目的を持って意見を出す光景はよく見られる。こうした非建設的な意見には反応しなくていい。対応する論理的メリットが何一つ無いからだ。

そしてもう1つ。ビジネスの場合は、「自分が満足させたい顧客・潜在顧客からの意見か?」ということに留意する必要がある。

たとえば、英語学習「初心者向け」に動画を出しているチャンネルに対して、「内容が易しすぎる!」と上級者からクレームがついた場合はどうだろうか? 仮にこの意見に真摯に耳を傾け、上級者向けの内容まで発信し始めたりすると、既存の大多数を占める初心者の人にとって逆に不利益になる。さらに意見を出した上級者の人たちが、制作したコンテンツを熱心に見てくれる保証などどこにもない。つまり、対象外の意見まで考慮する必要はない。傾聴すべきは、自分が満足させたい相手だけで十分だろう。

意見を聞くべき真の相手とは?

筆者は過去、好んで見ていたブロガーたちの中に、すべての読者の意見に耳を傾けようとしすぎた結果、疲弊しそして消えていった事例を数多く見てきた。熱心に記事を読み、応援していたこちらとしてはとても残念な気持ちになったことを覚えている。

これはどんな媒体でもそうなのだが、肯定的、否定的問わず意見を書く人は全体の数%…ものによっては1%程度だ。99%は「サイレントマジョリティ」と呼ばれ、黙って視聴しているのだ。ポジティブな気持ちがあるなら継続して視聴するだろうし、嫌になったら何も言わずに静かに去っていく。そうした層が99%を占める。故に真に耳を傾けるべきは、全体の圧倒的多数を占める声なきサイレントマジョリティたちの本音だ。

さてそんなサイレントマジョリティの意見に真摯に耳を傾けるにはどうすればよいだろうか? 記事でも動画でも大抵の場合は「アナリティクス」と呼ばれる分析ツールが実装されていることがほとんどである。

その分析ツールを使って、「熱心に視聴したか?」「どんな人が見ているのか?」「繰り返し見たか?」などはわかるようになっている。視聴者の99%の本音はデータが教えてくれる。そしてデータは冷酷非情と言えるほどに正直である。満足のいく内容でなければ、ほとんどの人が途中で見るのをやめてしまう。真に耳を傾けるべきは「データという意見」なのである。

今回はビジネスを中心に話をしたが、人生の生き方一つとっても、他人の意見は聞きすぎなくていいと思っている。他人はあまり深く考えず、気軽に意見を出してくるものだ。本人にとっては死ぬほど悩み、苦悩するような問題を抱えていても、「そんな小さな悩みなんて気にするな!」「ウジウジ悩むのはかっこ悪いぞ!」などと励ましのつもりで発せられた言葉は、時に刃のように心に深く刺さることもある。

人生もビジネスもすべては自分自身で舵取りをするものだ。他人は意見を言うが、人生選択の責任までは取ってはくれないのだから。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。