リ・ウファン・アルル(アルル)

オランジュ滞在。コレジーは21時半スタートなので、日中は時間がある。

ジゴンダスの大好きワイン農家を訪問することになってたのだけれど、オーナーはじめスタッフほぼ全員コヴィッドになってしまった、と、、。かわいそうに。早く回復しますように。

ということで、代わりにアルルへ。アヴィニヨンでもなくニームでもなくアルルにしたのは、春にオープンしたばかりの李禹煥のミュージアム、”リ・ウファン・アルル”が気になってたから。

李禹煥を知ったのは、2015年5月27日。なんでこんなにはっきりしているかというと、この日、アーティストに会ったから。

アラン・デュカスがヴェルサイユ宮殿内に作った菜園の訪問&ピクニック会があって、李禹煥もいらしてた。それまで、この大家の名前も知らなかった無知な私は、ムッシュ・デュカスが、「リ・ウファンだよ!」と紹介してくれるも何も反応できず、「日本はどちらにお住まいなのですか?わぁ、同じ街です!」なんてひどい会話しかできなかった、、。後で調べて、ひゃ~~~~こんなにすごい方だったんだ~と、自分の無知ぶりにうろたえるばかり。

日本の美に造詣深いムッシュ・デュカスのおかげで、私は、李禹煥や緒方慎一郎という存在や、能作の錫細工などを知った。日本を教えてくださってありがとうございます、ムッシュ・デュカス。

(2015年の、ヴェルサイユピクニックbyアラン・デュカスの様子はこちらから。李禹煥がちょっぴり写真に写っています。)

さて、10年以上振りのアルル。街はかわいらしい小径が多くてお散歩に最適。ローヌ川にこんにちはして、古代闘技場の塔に登って、街ブラしてお土産屋さん覗いて、ゴッホが描いたカフェある広場をぐるりして、”リ・ウファン・アルル”へ。

すーばーらーしー!!

16~18世紀に建てられた個人邸宅を安藤忠雄が改装した美術館。邸宅らしい小さめの間取りの魅力がよく生かされていて、部屋を移動するたびにどんどん新たな作品が目の前に飛び込んできて、ワクワクする。

絵画、彫刻、インスタレーション、どれもこれも本当に素敵。李禹煥の魅力は、マチエールの存在感、”時”の解釈、石をはじめとする無機質なオブジェの有機化、だなぁ。

杉本博司の世界観に通じるものがあるね。2人とも、石と会話し、悠久の時を慈しんでいるように感じる。

素晴らしい作品群の中で、だんとつで一番気に入ったのは、部屋いっぱいに広がる巨大な水盤。

天井のパイプから20秒おきくらいに水滴が垂れ、それを受ける水盤の水面が揺れ、揺れの輝きが天井に美しく投影される作品。水と光が放つ、わずか数秒だけ息づく、果てしなく美しいムーヴメント。あまりに神秘的で美しく魅惑的で、水滴を待ってずーっとこの部屋に佇む。(インスタグラムに動画あります。ぜひご覧ください)

企画展行く時の恒例、”ひとつもらえるなら”は、水盤の部屋ごと欲しいけどそれは無理なので、ニュアンスある”青”が美しい2つの絵画作品のどちらか。んー、迷うね~。向かって右の作品かな。

アントニウス・ピウス(とされる)の大理石像が展示されている。このミュージアムの工事をしているときに発見されたものだそうで、ミュージアムのポルトボヌール(お守り)になっているそう。

一代前のハドリアヌス像が見つかってたらよかったのに。芸術を愛した(個人的に一番好きな)ローマ皇帝は、きっと李禹煥を愛でたでしょうね。

ジゴンダスワインは残念だったけど、アルル、というか”リ・ウファン・アルル”に来られて大満足。


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2022年7月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。