石破茂です。
明27日より30日まで、超党派の安全保障関係議員7名で台湾を訪問致します。政府要人との会談の他、議会や軍関係者との意見交換を行う予定にしております。
北東アジア地域の平和と安定を実現するためには、この地域における外交を主とした相互対話のできる環境の醸成と、軍事バランスの均衡によるバランス・オブ・パワーの実現を図らなくてはなりません。大いに己の不明を恥じなくてはなりませんが、私も含めて多くがロシアのウクライナに対する軍事侵攻を予測できませんでしたし、今後の展望も明確に描けてはおりません。今日のウクライナは明日の台湾だ、と主張される向きもありますが、台湾をめぐる構図は格段に複雑であり、考えられるあらゆるシナリオを想定して、適用されるべき法律や条約・協定を精査し、運用と装備について徹底的に検証しておくべきは当然のことです。
防衛庁長官離任後に単身台湾を訪問し、漢光演習を見学後、台湾海軍のラファイエット級フリゲートに乗ったのはもう15年以上前のことになります。当時とは状況も一変しており、とにかくもう一度よく見ておかねば日本の今後の安全保障政策を語ることは出来ません。
安倍元総理の国葬は9月27日と決定しました。賛否については多くの議論がありますが、ここは静かにお見送りする環境を整えるべく、誠実かつ丁寧に国民の理解を求めなくてはなりません。「決まったことだから」「反対する人はおかしい」というような姿勢は極力排すべきものと思います。かつての吉田茂元総理の国葬の時にも様々な議論があり、国葬というスタイルをとったために、宗教色を一切出さず、感情を抑制した極めて形式的なものになってしまったと当時の報道は伝えています。現時点において国葬の賛否は拮抗しているようですが、国論を二分するような状況は決して好ましいものではありません。あと二か月もあるのですから、政府・与党として可能な限りの努力をせねばなりません。
昭和54年、新入行員として三井銀行本町支店に在勤中、本当にお世話になったかつての上司・斎藤輝人さんが逝去されました。ノンキャリアの叩き上げで、実務に極めて精通された方でしたが、それだけに大卒で実務の全く出来ない私は幾度となく厳しく叱責されたものでした。あまりに悔しくて自分なりに懸命に働き、やがて少しは認めていただけるようになって、入行して一年近く経った頃に横浜のご自宅にお招き頂いて奥様の手料理をご馳走になった時のことは、銀行員時代の最高の思い出です。
そういえば、防衛庁長官在任中に日経新聞の「交友抄」から求められて、銀行でお世話になった上司や同僚のことを書いて原稿を出したのですが、もっと有名な人との交友を書いてもらいたいとの理由で掲載されなかったことがありました。先方のニーズに応じられなかった私がいけなかったのですが、今でも思い出すと残念な気持ちになります。この世の地位や名誉などはうたかたの幻のようなもので、一生を終えて最後に残るのは人に与えた優しい気持ちや真の思い遣りなのだ、との古のフランス詩人(聖職者との説あり)の言葉を最近しみじみと思います(出典は「続・氷点」)。
女優の島田陽子さんが69歳で逝去されました。昭和46年、三浦綾子の前掲小説「続・氷点」がNET(現テレビ朝日)でテレビドラマ化された際、主人公の辻口陽子役に抜擢された当時18歳の彼女が、朝日新聞の「ひと」欄に載っているのを見た時に受けた「こんなに清楚で綺麗な人が世の中にいるのだ」という衝撃は今も忘れられません。その後、彼女は公私ともに波乱万丈の人生を送られたようですし、ご本人にお会いする機会もありませんでしたが、最も印象に残る女優さんの一人でした。出演作では「犬神家の一族」(昭和51年・東宝)や「砂の器」(昭和49年・松竹)が有名ですが、私は「球形の荒野」(昭和50年・松竹)の野上久美子役がとても好きでした。御霊の安らかならんことをお祈り申し上げます。
今日の都心は朝から雨模様が続いていますが、明日からはまた真夏の日々が戻ってくるようです。
皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。
編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2022年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。