東京にとっても他人事ではない「鉄道インフラの縮小」

日本経済新聞電子版に、JR東日本が初めて開示したローカル線の路線別の収支状況の一部が掲載されています(図表も同紙から)。

2019年度は、利用者が少ない地方の35路線の66区間すべてが営業赤字だったそうです。

鉄道事業は生活インフラですから、収益性だけではなく、公共性の観点からの考慮も必要です。

一方で、JR東日本は上場企業でもあります。コロナ禍で収益環境が厳しくなっていることもあり、経営的観点からは、不採算路線は廃止したいというのが本音だと思います。

今回の情報開示はそのための第一歩で、これから赤字路線の廃線やバス路線への転換を議論して、進めることになるでしょう。

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鉄道路線の営業縮小は、地方だけの問題と思われがちですが、これからは都市部でも同じ流れが出てくると予想します。

既に、東京でもコロナ禍で通勤・通学客が減少し、列車の運行間隔が少しずつ間引きされるようになりました。

運転本数だけではなく、始発や終電の時間も繰り上がり、利便性が下がってくれば、やはり郊外よりもアクセスしやすい都心部に住もうという人が増えてきます。

この傾向がスパイラル的に続けば、郊外に住む人の数が更に減り、都心部への人口集中につながります。

日本の人口は、厚生労働省などの専門家が予想するより遥かに早いスピードで減少しています。歯止めがかかる兆しはありません。

これから地方だけではなく都市部においても、人口減少の影響は思ったよりもずっと早く出てくることでしょう。

鉄道路線のインフラの縮小という問題は、東京のような都市部も他人事ではないということです。

このことは、これからの不動産の価値の変化について、とても重要な示唆を与えてくれます。

近いうちに、東京23区でも不動産価値が上がるエリアと下がるエリアの2極化が進むことになるでしょう。9月27日のセミナーでも、このテーマについて最新の情報を提供していきたいと思っています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。