いつまで続くのか、科学なきコロナ対策

現場か回らなくなってから、登録システムを変える、全例報告義務なしにするなどと言っている。呆れたコロナ対策だ。コロナウイルス感染症を科学的に考えて、対策を練ることができないままに、場当たり対策の連発だ。

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数週間前に、感染力が強く、医療機関で欠勤者(コロナ陽性者・濃厚接触者・子供の濃厚接触者の家庭内ケアのための親の欠勤)が増え、医療供給体制が崩れ、悪循環に陥ることは予測されたはずだ。十分に配慮している医療従事者でも、医療機関の運営に支障をきたすような事態になるのだから、一般の企業でも同じような状況が起こっていてもおかしくはない。

今の分科会や政府のコメントを聞いていて、「やはり科学がないのだ」と思う。下図は前回のコロナ拡大の波を3か国で比較したものだ。

米国・韓国・ベトナム(その他の多くの国)で、ピークが急峻であるのに対して、日本だけがダラダラとした下降曲線となっている。当然ながら、このような違いを科学的に探らない限り、適切な対応ができないはずだ。

いろいろな複合要因が他国との違いを引き起こしているのだろうが、私が考える最大の要因は検査体制の不備だ。

今回の第7波でもそうだが、検査供給体制が十分でないので、感染者の実数が捕捉できない。本来であれば、鋭いピークのはずであっても、検査数が頭打ちになれば、真のピークが見えず、台形状のピークとなる。日本の状況はそのようになっているとしか思えない。私の知人でも発熱があったが、検査にアクセスできないままに症状がなくなり、自分で自粛期間を守って社会復帰した人たちが数人いる。

おそらく現状の23万人の陽性者(私は検査体制さえ十分なら実際はもっともっと多いと思う)という数字から大きく増えることはないだろう。この後も、第6波のように検査供給が追い付かないままに、ダラダラとした検査数依存の下降曲線を示すだろう。

コロナ感染症拡大が起こった2年半前にPCR検査をしない方針を定めて以来、この国の非科学的施策は変わらない。失敗した人が継続して対応しているので、自分たちの失敗を認めるわけにもいかず、これからも変わることは期待できないだろう。

そして、日中戦争から太平洋戦争と、メディアは大本営と言動を共にして、国民を誤った方向に誘導したが、今回もそれを繰り返している。何が過ちは繰り返さないだ。

メディアは大本営発表に追随し、真っ当な批判をしない。他人には厳しく、自分たちは寄らば大樹の陰。中国メディアを批判する資格があるのかと問いたい。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2022年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。