外食産業の危機感:ガストの閉店といきなりステーキの経営不振

夏休みのピークとなりました。国内旅行は7千万人が見込まれるので元気に動ける方のざっくり8割ぐらいがどこかに行く計算でしょうか?一方海外へは50万人程度と19年比で1/5以下。理由はそもそも航空機の総座席数が足りない、日本乗り継ぎの外国人客で座席は占拠、帰国時に現地でPCR検査、その上、陽性なら帰国できないというリスクを抱えてまで物価の高い海外は敬遠されるのでしょう。一方、コロナは2類相当にようやく見直し方向、ワクチンは若い人は打っても打たなくても重症化に変わりはないと数字が証明する中、日本人もマスクを取って通常に戻れる日が一歩ずつ近づいているように感じます。

では今週のつぶやきをお送りします。

市場は真空地帯のサマーラリー

市場参加者が少ないので株価や指数が乱高下しやすい、これがこの1-2週間の特徴です。木曜日の北米市場も大幅高の後、見る見るうちに下げたのですが、これと言って悪い材料があったわけではないのです。一方、金曜日の日経平均も目が覚めるような上昇をしたのですが、中身はぜんぜん面白くない上昇ぶりで個人投資家好みのマザーズ指標は年初に比べてまだ半値ちょっとのところでもがいている状態です。

ただ、日経平均についていえば予告通り28300円に位置した節目を明白に抜いて28547円となりましたのでテクニカルには上がるはずです。内閣改造も終わり、企業決算発表もほぼ終わり、国内もニュースネタが切れています。ニュースを見ても何一つ着目する話題はありません。週明けも無気力無重力無抵抗相場となるとみています。「閑散に売りなし」とは今のことを言うのでしょう。

個人的には9月相場が始まる前の現在が市場の匂いをかぎ取るには大事だとみています。流れとしては物価高ピークアウト感→金利上場圧力低下→リスクマネーへの回帰→株高のシナリオでナスダック銘柄が元気を見せそうです。一部からはダウの高値奪回説もあります。ミーム株が再び物色されるなど一部個人投資家の元気が戻っており、ビットコイン相場も堅調に推移している点からすればとりあえずいやなことは見ないふりをして夏をエンジョイすればよいのではないでしょうか?日本も個人株主の回帰がキーになると思います。ただし、世界経済の動向には本当に要注意です。

日本人にもっともなじみのあった香港は今?

大学生の時、初めてツアーで香港に行った際、そのパワーに圧倒され、北米とは違う親近感を持ちました。その後は出張などでずいぶん通ったのですが、20年の初めにトランジットで通過した香港はなにか違う感じがしました。民主化運動を経て中国本土と実質一体となり二つの中国という特別な待遇はなくなりました。ただ香港がかつての輝きを失い始めていたのは民主化問題以前からだった気もします。

出生率が異様に低いのは東アジアの特徴で香港も2019年調査で1.05程度と地域単体でみれば50年後は維持できません。11日に発表された22年6月末人口は729万人で1年で12万人(1.6%)減少しています。1.6%の減少とは日本なら200万人に匹敵する数で地域経済を維持できるとは思えない数です。香港の不動産価格がそれでも世界一の水準を保つのは有効活用できる土地が限られるという理由以外には思いつきません。その香港の2022年の経済成長率見込みはゼロに下げられました。

この香港の凋落が意味するところは資産家、有能な子供たちはとっとと海外に移住している点でしょうか?英国、オーストラリア、カナダはその人気国ですが、当地の香港系中国人はもはや中国人というより完全にカナダ人化しています。彼らは大陸人ですから移動、移住に対する抵抗感が圧倒的に少ないのです。一方、台湾は島国なので同じ中国人でも香港人と同じ括りには出来ません。個人的には香港の金融機能はシンガポールに確実に移っていくとみています。日本からは4時間程度で行けたあのなじみ深い街もどんどんその形を変えていくのでしょう。

外食産業の危機感

覚えている方がいらっしゃるかどうか、コロナ真っ盛りの頃、私はコロナ明けに外食産業は大きな変化がやってくると申し上げました。飲食店の数が多すぎるなかで必ず淘汰されるとみていました。当時はコロナ支援金があり、個人経営の飲食店では店を経営するより多く貰えたケースも多々起きた中で2年半で進んだ経営者の高齢化、支援金切れ、物価高でコストは上昇、売り上げは減少という経営の圧迫で廃業者は後を絶ちません。

このような中で最近は大手チェーン店の閉店も目立ち始めました。すかいらーくがガストなど100店舗を閉店するとし、いきなりステーキの創業者の一瀬邦夫社長が経営不振の責任をとって引責辞任を発表しました。チェーン店は多店舗化でシェア争いを長年してきたのですが、コロナで居酒屋を閉め、焼き肉や寿司に業態を切り替えた大手も多数生まれました。私からすれば小手先経営にしか見えないのです。なぜ、安い店に行くのか、食べる内容だけならスーパーの総菜の方がはるかに安いわけで場所とか雰囲気、非日常感を求めるのでしょう。しかしそれでは顧客はよくても経営する側は本質的ではありません。

外食に強い需要があるのは若い人たち。しかし、社会人になればそれも減退するし、かつての「5時から仕事」のごとく社内飲み会が頻繁にあるわけでもありません。接待というコンセプトが下火になる中、銀座や赤坂の夜のネオンも少しずつ減ってくるのでしょう。そもそも外食は繁華街を別にすれば顧客の母集団が非常に狭いエリアに限定される特徴があります。高齢化の影響を一番受けやすい一つは外食産業に於いて私が思うのは、宅配より昔の出前の復活の方が案外うまくいく気がします。高齢者はスマホ、苦手なんです。電話一本の出前がありがたいと思います。

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後記
大谷サンの快挙に報道がなんとなく淡泊な気がするのは私だけでしょうか?野球大国で日本人が様々な旋風を起こし、今回も歴史に残る偉業を遂げたことは本当に賞賛です。トップを走る人たちを見倣うことは自分への刺激です。イチローサンもそうでしたが記録には長い時間をかけて、プレッシャーに負けず階段を一歩ずつ登るのですが、これが私にはピッタリくるのです。一回限りの大ヒットではなく、野球人生の階段は人生の階段とも重なります。粘り強さ、そして食らいつく根性ですよね。北米でのサクセスストーリーだけど根性とか根気が大事だというのは今も昔も変わらないですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年8月13日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。