まず、厚労省が公開しているコロナ重症者のグラフを見てみます。
第7波では、第5波や第6波と比べて、重症者数がかなり少ないことが分かります。 次に、Worldometerのコロナ死亡者のグラフを見てみます。
第7波の死亡者は第6波のそれと同等であり、第5波の死亡者より格段に多いことが分かります。 つまり、第7波では重症者が少ないわりに死亡者が妙に多いのです。
この理由として、埼玉医科大学の岡氏は、次のように説明しています。
今は持病が悪くなる。例えば食事が取れなくなって、水も飲めなくなって、腎臓が働かなくなる。肺炎がなくても、軽症の状態で、そのまま亡くなってしまう。今回の第7波に関しては、重症に該当した方は全員救命できている。死亡者は軽症・中等症から出ていて、重症からは出ていない。
第6波の時と同じで、コロナの肺炎で重症感染者が死亡するのではなく、 軽症・中等症の感染者が持病を悪化させて死亡する場合が多いという説明です。 重症者が少ないわりに死亡者が多くても矛盾しないことになります。 ただし、コロナ直接死ではなく間接死が多いということです。
国立病院機構近畿中央呼吸器センターの倉原氏の説明は少し異なります。 8月7日に公開されたYahoo!ニュース個人の記事で説明されていましたが、何故か8月14日の時点で記事が削除されています。 デリケートな内容を含む記事なので、筆者が忖度したのかもしれません。
記事では、「高齢者の患者さんが人工呼吸器やエクモを希望しないため、本来は重症者病床にうつるべき人が、ほとんど中等症病床にとどまっている」と説明されていました。記事が削除されているため、引用はやめておきます。なお、この記事はInternet Archiveで閲覧可能です。
倉原氏の説明では、重症者としてカウントされるべき人の多くが、カウントされていないことになります。重症化しても重症者病床に転院されないことが多いことは、感染研のレポートでも明らかになっています。
入院時に重症が疑われた高齢者のうち55%の人は、人工呼吸器管理などの積極的治療を自らの希望で受けなかった。
つまり、本来は重症者病床にうつるべき人の多くが、中等症病床にとどまっていたわけであり、倉原氏の説明に合致します。神戸新聞によると、高齢を理由として暗に人工呼吸器管理の断念を迫られる場合さえあるようです。一部を引用してみます。
一方、兵庫県内の別の病院では、「重症コロナ患者を治療する態勢が十分でないので、DNR(蘇生措置拒否)を積極的に取りにいく場合もある」と話す医師もいた。その病院では、DNRとなったコロナ患者は、「重症」ではなく「中等症」として県などに報告しているという。
・・・中略・・・
しかし、病床状況や年齢など要因が複数あったとしても、自らは呼吸器を原則扱わない中等症対応病院などから7回にもわたって呼吸器を使うかどうか確認され、「年齢もお高い」などと暗に使用断念を迫られた患者家族の心痛はどれほどだろうか。
本当の重症者数は、公開されている数値より大幅に多い可能性があります。本来は重症者病床に転院するべき高齢者が中等症病床にとどまれば、数日~十数日でお亡くなりになると推測されます。そのため、重症者数のわりに死亡者数が多くなるのだと考えられます。すべての病院で、重症者病床にうつるべき人の一部が中等症病床にとどまっているのかは定かではありません。ただし、それを示す根拠が3つ提示されている以上、無視できない事実と考えられます。
最後に、第7波では入院者数が非常に多い理由についても考えてみます。厚労省が公開している入院者数のグラフを見てみます。
第7波での入院者数は、第5波と第6波の入院者数と比べて非常に多いことが分かります。 第7波では、軽症が多いと言われているのに、何故これほど入院者数が多いのでしょうか?
答えは、新型コロナの重症度分類にあります。
新型コロナでは、肺炎がなければ、他にどのような症状があろうとも、すべて軽症なのです。たとえば、高熱が続き、のどの痛みが強くて水分摂取がほとんどできない場合でも軽症なのです。医学的には、水分摂取ができない場合は入院の適用があります。新型コロナの軽症は肺炎がないという意味であり、通常の病気の軽症とは概念が、かけ離れていることを理解しておく必要があります。