【めいろまさんインタビュー④】日本人にはわかりづらいイギリスの階級社会って?

アゴラ編集部

めいろまさん(@May_Roma)こと谷本真由美さんが3年ぶりに日本に帰国されました。これを記念して、アゴラ編集部では独占インタビューを敢行しました。今回は第四回になります。(第三回はこちら

日英の学校の事情も知るめいろまさん urbancow/iStock

——日本の親御さんに余裕がなくなっているとおっしゃっていました。イギリスの子育て事情もお伺いしたいのですが。

めいろまさん(以下、めいろま):帰国して、以前に比べて日本の親御さんが荒れている印象をもちました。電車の中で子供に怒鳴っている親御さんを見かけて。暑いのもあるけれど、経済的に厳しいのではないでしょうか。

イギリスの子育てや学校に関しては、二つの点で難しさを感じています。経済的な格差・社会的階級があるということと、様々な国の人がいるということです。

所属する階級や出身地、経済的な背景により考え方、行動、哲学が全く違います。子供の躾、勉強への態度、お金の使い方、男女の感覚についてとにかく違います。話し合いをして合意点が見いだせるわけではないので難しいのです。

例えば「経済的に豊かな階級」といっても、日本の場合は例えばタワーマンションに住んでいる上場企業の専門職や医師の方、が多いかもしれませんが、イギリスの場合は世界中から富裕層やニューリッチが集まってきます。

汚職国や新興国の人もいますので、宗教も社会感も全く違うのです。その中で一緒に活動しなければならないので、日本では想像できないようなトラブルに直面します。

——一方で労働者階級にあたる人たちはどうなのでしょうか。

めいろま:労働者階級と一言に言っても、現在は昔に比べて幅広く複雑です。

イギリスのかつての労働者階級は、製造業や手に職系の仕事に従事する「地元」の人々で、引っ越しも稀で、地元で長年住んでいる人々だったので、文化も考え方もある程度似通っていたのです。

ところがイギリスは1970年代の経済の停滞を受けて、80年代には大々的な改革をやり、経済の仕組みを買え、知識産業や金融を強化しました。

その結果、従来の労働者階級の人々でも、別業界で働くようになり、経済的に大変豊かになる人が出始め階級の移動が起こりました。経済が製造業に依存しなくなったので、土地に拘る必要がなくなり、人々は頻繁に移転するようになります。

その結果従来のコミュニティが崩壊しました。仕事がない地域は過疎化し、より高い報酬を得られる大都市に人が集中します。海外に出ていく人もぐんと増えました。

さらに、イギリスは1950年代から、戦後復興のために旧植民地から移民を入れていましたが、1980年代以後はグローバル化、さらに2000年以後はEU統合で、EU国籍の人の就労や移動が域内の場合は自由になりましたので、イギリスには莫大な数の移民が来るようになり、従来労働者階級の人がやっていた「手に職系」の仕事の多くを外国人がやるようになりました。

従来の労働者階級の人で、代々イギリスに住んでいる人はサービス業に移動するようになります。また製造業の海外移転も驚くようなスピードで進みました。

この結果、現在では一言に「労働者階級」とはいっても、従来とはその意味合いが全く変わっています。

収入や資産も様々ですし、「労働者階級的」な考え方や文化を持つ人が4億円の住宅に住むファンドマネージャーだったり、「労働者階級」の仕事をする人がアルバニアの大学院を出た知識階級だったりと、実に多様化しているのです。

ですから文化的所属階級、自分の育ちが「労働者階級」ではあっても、労働党を支持しない人も増えています。

——イギリスの格差社会も日本以上に課題を抱えているのですね。

めいろま:イギリスの学校が抱える問題は私の著書である「みにろま君とサバイバル 世界の子どもと教育の実態を日本人は何も知らない 」(集英社)に明記しましたが、問題の根が深すぎて比較対象になりません。

その5につづく

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谷本真由美さん @May_Roma (めいろま)

ITコンサルタント。専門:ITガバナンス、プロセス改善、サービスレベル管理、欧州IT市場および政策調査。ITベンチャー、経営コンサル、国連専門機関情報通信官、外資系金融機関等を経て日英往復。趣味HR/HM。仕事依頼 Twitter @May_Roma