【重要】以下の各リンク記事、政策立案者は必読です。
木材燃焼バイオマスによる森林破壊、地産地消原則の無視、大気汚染とCO2排出過多が判明しEUが問題視し削減に動く政策を、日本や韓国などアジア諸国が推進への欧米視点の懐疑。
カーボンニュートラル理由での大気汚染を許容は理不尽
日本政府はカーボンニュートラル、再生可能エネルギー拡充の一環と理由をつけ、一般家庭に薪ストーブの普及を目指すという、欧米に対して周回遅れ若しくは時代に逆行退化の方針を未だに進めている。
筆者は欧・米・豪などの活動者たちと情報交換をしているが、この日本の政策を伝えると「日本のような進歩的な国が、なぜそんなことをしているのか、ナンセンスだ、なぜ退化政策なのか」と言われる。
一部自治体は個人宅設置の薪ストーブに対して補助金制度まで用意している。温暖地にあっては限りなく趣味性の高い、しかも大気汚染源となるものを、税金を原資として補助金を給付するというのは、大きな疑問でもある。
カーボンニュートラルは、発電用動力源の代替燃料としての理論であり、本来は家庭用木材燃焼暖房促進のための理由や理論ではない。日本政府もこの点で大きな間違い若しくは、(薪ストーブ関連業界の意向を取り入れて)拡大解釈をしていると言わざるを得ない。
日本の薪ストーブ関連業界、建築業界、林業界、造園業界がこの理論に後から無賃乗車をしたというのが実情であろう。厳密な意味では薪ストーブや暖炉は「再生可能エネルギー」の範疇に入るべき燃焼ではない。
発電用動力源の代替燃料用として「だけ」便宜上、国連はニュートラル扱いにしてあげます、というだけであり、現実には大量のCO2と有害物質を排出していることには変わりがない。
地球温暖化、気候変動を無用に煽る言説だけを根拠に、先進諸国の住宅地、都市圏だけでなく地方でも木材燃焼暖房や木材ボイラー等が増加している。年々大気汚染が悪化しているというその主原因は明らかに木材燃焼と指摘された調査研究や報道は数多い。
共通している背景は、どれほどに苦情を受けようとも、カーボンニュートラルやSDGsを大義名分にする点。そして多くの使用者の本質は「雰囲気を楽しむ娯楽目的」「廃材や残渣の焼却処理も兼ねて」であること、他の大気汚染を起こさない代替の暖房システムを家屋に装備しているにもかかわらず木材燃焼暖房を敢えて使用する、ということであった。
さらに、地域の一部少数、数パーセントの家屋の我儘によって他の9割以上の家屋が迷惑を被る構図も世界共通の傾向であった。(これは後日記事にて)
筆者はカーボンニュートラルやSDGsについて論ずる積りは当初は無く、煤煙悪臭の制限の必要性のみを論ずることに専念したかった。
しかし、薪ストーブがカーボンニュートラルやSDGsとは相容れぬ結果を惹起し、非使用者である多くの周辺住民を苦しめ、環境と人に優しくないのが近隣住民の立場からの事実であり、苦情に対して薪ストーブ販社や使用者が反駁として必ず「錦の御旗」として持ち出すことから、已む無く本稿を書くためにキーボードを打っている。
薪ストーブ等の木材燃焼に対する議論に必須のキーワード、「SDGs」「カーボンニュートラル」について見ていこう。
薪ストーブはSDGsか?
薪ストーブや木材燃焼暖房をSDGsの点から見てみよう。
言い古されたSDGsだが、詳細をご存じない方は一応、目を通しておかれるとよい。何かの役に立つかもしれない。
■この言説を俎上に載せてみよう。
7. エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
→木材燃焼はクリーンエネルギーではない。定義上「グリーン」かもしれないが(それもEUの動向などから揺らぎ始めているが)、「クリーン」ではない。クリーンというなら世界中で問題視され始めているその煤煙悪臭はどのように弁明するのか。本項で木を切って燃やすことをクリーンとは明示していないのはそのためである。CO2の増減に関しても、回収期間が20~100年との研究もあり、ニュートラルにはならない。
植物の成長は緩慢であり、燃焼は一瞬。この時間軸概念を無視したカーボンニュートラルは詭弁である。
13. 気候変動に具体的な対策を
→不確実であることが明らかな温暖化科学をいつまでも援用し続けるのはどうか。薪ストーブでのco2排出量など大した量ではない。更に、電気暖房用に費やされた電力の発電で発生する(一世帯当たり相当で)僅かなCO2の削減のために住環境の大気汚染を進めるのは本末転倒。CO2削減理由ならどんなに木材を燃焼させて大気汚染をしてもよいのか。
厳密を期するなら、薪の取得のため運搬加工に費やされた膨大な化石燃料や電力についてもぜひ論ぜよ。本項も木を切って燃やすという具体策を求めているものではない。
15. 陸の豊かさも守ろう
→実際には間伐材の「きれいな薪」ではなく、銭湯と同様に(これも大きな問題ではあるが)廃材やそのへんの雑多な樹木を伐採したものが多用されている現実。ごみの削減なら、確かに燃えるごみを薪ストーブに投入する、という使用者の声も聞こえてきているが、廃掃法違反でSDGsに沿わない実態もありそうだ。事実、酷い多煙黒煙の事例もある。
森林保全という理由のために薪ストーブで燃やして大気汚染をしてよい、とは正当性も無いうえに理論が繋がらない。森林保全を言う目的は生物多様性と保護、森林回復が主目的であって、切って燃やすことが主眼ではない。大気汚染はすべての生物にとって重大な脅威である。森林火災や野焼きには対策を叫ぶのに、木材燃焼暖房だけは無害と言いながら住環境を汚染してよいはずがない。
薪ストーブはSDGsではない
薪ストーブ、木材燃焼暖房や木材ボイラ等は大気汚染を起こし、薪ストーブ等の使用者ではなく不特定多数の周辺住民に苦痛と不便を強い、健康被害の大きな原因にもなっている。以下のSDGs項目に確実に反するものである。
煤煙悪臭騒音等で他人を苦しめてそれがSDGs、という言説は絶対に容認されるべきではない。SDGsを正当化に利用し悪用してはならない。
● SDGs3.9
2030 年までに、有害化学物質、大気、水質及び土壌の汚染及び汚染による死亡及び疾病の数を大幅に削減する。
→大気汚染も原因であると明示している。木材燃焼暖房は、住環境の大気中に濃厚な有毒物質や煤塵を大量に未処理のままで排出する。既に欧米では大きな社会問題となっており、呼吸器系疾患を中心に、各種疾患の発症増悪に寄与しリスクレベルを有意に上昇させるとの多数の研究によって証明されている(デンマークのコペンハーゲンでは木材燃焼暖房は既に禁止されている)。
● SDGs3.D
すべての国、特に開発途上国の、国家的及び世界的な健康リスクの早期警戒、リスク軽減及び管理のための能力を強化する。
→木材燃焼による大気汚染は健康リスクの主原因。健康リスク低減のために本来は削減目標であり、先進国も対象とされ、当然に住環境中での木材燃焼暖房も削減対象と読むべき項目である。
● SDGs7.1
2030 年までに、安価で信頼性が高く、かつ現代的なエネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
→古典的バイオマスである木材燃焼、薪の使用を削減すべきとの趣旨がこの項目の本旨である。家屋等の個別での木材燃焼は削減対象であって、薪ストーブや暖炉を推進する理由に、この項目を援用するのは完全に間違っており、木材燃焼での大気汚染を正当化する根拠にはならない。
● SDGs7.2
2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に増加させる。
→ここでいう、当初想定されていた再エネとは、太陽光、風力、地熱、水力の各発電方法であったはず。木材燃焼による発電は、あくまで再エネと「見なす」だけ。見なされなくなりつつある欧州の動向を注視するなら、木材燃焼は削減方向が順当である。
● SDGs7.3
2030 年までに、世界のエネルギー効率の改善率を2倍にする。
→木材燃焼暖房は、薪の燃焼は決してクリーンではない上に、効率面では最悪の燃料。殆どの熱を煙突から大気中に放散してしまう無駄の多い暖房方法である。
付け加えるなら発電の主力燃料にすると、同量の電力を得るために石炭よりも多量のCO2と大気汚染物質を排出し、必要な木材が不足するのは見えている。
● SDGs7.A
2030 年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び高度でクリーンな化石燃料技術を含むクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギーインフラ及びクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
→木材燃焼は特に汚染物質が多く、クリーンではない。発電用の代替燃料としての本旨で木質バイオマスがやむなく容認された、それをカーボンニュートラルと「見なす」扱いだけで、CO2や大気汚染物質を出さない、という正確な意味でのクリーンとは言わない。
→SDGsでは化石燃料の効率的使用を認めている。IGCC、IGFC、USC、更にはA-USCまで技術は進み、この方式の石炭火力発電所のほうが多数の民家の薪ストーブの未処理の排煙を合計した有害物質排出量より少ないだろう。確実に。
薪ストーブはカーボンニュートラルか?
薪ストーブや木材燃焼暖房をカーボンニュートラルの点から見てみよう。
● EU環境委員会
再エネの発祥地、EU域内では木材燃焼は再エネではないと否定し除外し、木材の燃焼利用の終息を求める見通し。
【EU 環境委員会は、森林バイオマス燃焼の停止を求めることで、大胆な立場を取りました。バイオマス燃焼は、再生可能エネルギー目標にはカウントされません。】
● 木質バイオマス政策を覆しかねない欧州委員会のレポート
● WWF
「森林バイオマスはカーボンニュートラルではない」と認めたEUの報告書
ほとんどの森林バイオマス(主に木質ペレットなどの木質バイオマス燃料)は、石炭、石油、ガスよりも多くの温室効果ガスを排出すると結論付けました。
20年間を超えると化石燃料よりも温室効果ガス排出量が多くなるとされている。
化石燃料よりも温室効果ガス排出量が多いとされる森林バイオマスを燃料としたバイオマス発電の促進は、本当に日本の削減目標の達成に貢献するのか。政府としても、その見直しを行なっていく必要があります。
→WWFの声明「欧州委員会のバイオエネルギー提案6つの致命的な欠陥」
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210714_forest01.pdf
● 500人以上の科学者が各国首脳に書簡を送付
IPCCの元議長等の科学者達は
木材の燃焼は何十年も何世紀も温暖化を増大させる。木材が石炭、石油、天然ガスに取って代わる場合でも
森林が持続的に管理かでなく、貴方が燃やすからです。気候の理由で木の燃焼を停止すべき。
● バイオマスエネルギー:グリーンか汚いか?
研究者らは、木質ペレットを燃やすことが炭素負債を生み出し、回収期間が44年から104年であることを発見しました(Environ. Res. Lett.13 015007)。
木材の燃焼効率と処理効率は石炭よりも低いため、木材を石炭に置き換えることの直接的な影響は大気中のCO2の増加です。
→カーボンニュートラル理論発祥地の欧州で、それがニュートラルではなくCO2濃度を却って上昇させ、大気汚染と環境破壊の悪化も早めている、木材燃焼によるエネルギー取得は縮小すべき、木質バイオマスを再生可能エネルギーから除外する、との方向での動きが強まっている。
→本来の意味での木材燃焼でのカーボンニュートラル理論が脆弱になったことで、木材燃焼はその正当性を大きく失う。
その理論の援用上で行う木材燃焼暖房、薪ストーブや暖炉は、周辺住民に著しい心身の負担と迷惑を掛けてまで使用が許容されるべき暖房とは言えなくなる。
日本で薪ストーブや暖炉が広く普及しないのは当然
薪ストーブは煤煙と燃焼臭気を必ず出す。無煙無臭などあり得ない。現状で都心や住宅地で煙突が林立するほどに普及しない理由は子供でも分かるほどに簡単。煙とにおいが近隣に迷惑になることを、多くの人が理解しているからである。
逆に言えば、煤煙悪臭さえ出なければ、全く問題無い。
それでもどうしても薪ストーブを使用したいのであれば、排気浄化装置を付加すれば、都会のピザ窯同様に気兼ねなく火炎を楽しめるようになるはずだ。
何度も繰り返すようだが、薪ストーブで苦情が来たなら、いや、苦情が来る前に、まずこの機器を装着してほしい。一軒からの苦情は数十軒以上多数の潜在被害者が存在することを認識したほうが良い。
薪ストーブ用すす取り装置「ススとり君home」 株式会社クリエ (c-clie.co.jp)
このような装置が存在するのは、木材燃焼煙は臭くて汚いという事実からである。
現状の薪ストーブ用排気浄化装置ではこの機器が最も高性能であり、強く推奨する。それこそ、環境意識と周辺への配慮の印であり、隣人たちから感謝されること請け合いだろう。僅か、たったの100万円で大気汚染を防止しながら薪ストーブを使用でき、隣人にやさしい人になれる装置の装着は、とても素晴らしいことだと思って頂きたい。
火への畏敬の念を持て、と仰られる方がいるが、その前に、隣人たち、人間への畏敬の念を持って頂きたいと願うものである。
編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2022年8月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。