「暴力」「マネー」「エネルギー」が連動する戦時経済:『シン地政学』

表向きは猫評論家・ネコノミストでありながら、実は山口組系の元組長であり評論家の猫組長氏の新刊、「正義なき世界を動かす シン地政学」。猫組長氏によると、経済は「平時経済」から「戦時経済」に移行し、これが当面続くといいます。しかし、その本質を多くの日本人は理解していないのです。

前著「黒い経済白書」では、「健全な暴力に健全な経済が宿る」という視点が提供されていましたが、今回は”安倍後”を読み解くために、さらに踏み込んだ視点が提供されています。具体的な実例や思考法が豊富な図版とともに紹介されています。

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日本人は、かつて「暴力」を放棄させられたために「暴力」を全く考えてきませんでした。安倍晋三元首相の評価が国内で不当に低かったこともこれに由来します。

コロナ禍のような状況が持続的になるということは、経済に占める政治の役割が大きくなるということになります。「防衛安全保障の強化」という「暴力」がなければ、安全な経済運営は成り立ちえません。しかし、その認識が欠如しているために日本の社会・経済は迷走を続けています。

アメリカの責任放棄は世界を揺るがしていますが、その環境に右往左往してばかりであって、なぜ振り回されているのかということに無自覚なままでは、国富を搾り取られるいっぽうです。

現在発生している「インフレ」「円安」などの「金融」のメカニズムを知り、その状況下では「基本の投資」をすることで「豊かさ」を手に入れられると猫組長氏は言います。

投資は岸田首相が薦めるほど甘くはありません。だからこそ、われわれは「戦時」の意味を知り、「投資」のリテラシーを高めなくてはならないのです。そして、アフター・ウクライナではその傾向がさらに強まるでしょう。

最終章に印象に残るエピソードがあります。

電力逼迫の火種となった元首相の「歪んだ怨念」は、自信の辞任と引き換えに「FIT制度」を作りあげました。2019年度の消費者が負担した再エネ付加金は2.4兆円にもなります。その制度の恩恵を受けて「太陽光成金」となった猫組長氏の知人は、こう述べています。「元首相さまさまですわ!」