米国は頼りになるか:親中派を排除した内閣改造を(屋山 太郎)

第2次岸田改造内閣初閣議の様子
首相官邸HPより

会長・政治評論家 屋山 太郎

アメリカ人の「日米安保条約」に対する認知度はかなり低いという。日本なら大抵の日本人は「安保条約」を知っている筈だ。安保条約というのは日本が攻撃を受けたら米国が即、助けに来る「筈」の軍事支援条約である。

ウクライナはNATOに入っておらず、どの国との軍事同盟もないので、プーチン氏が「お前の領土が欲しい」と思っただけでガツンとやられた。米国を始めNATO諸国が援助、支援をしているが、軍事条約上の約束がないから「助けてくれ」というお願いレベルの話だ。ウクライナが滅びるのは我慢ならないが、プーチン氏の暴力を止める決め手が見つからない。

安保条約は、中国が台湾有事・日本有事を引き起こしたら、日本は当事者として勿論争うことになるが米国の助力、加勢も当てにして立法している。ところが肝心の時に、当てにしていた米国が「オレはやめた」と言い出す場合があるかもしれない。

同盟条約を履行しないのだから米国にとっては世界的な恥だが、「オレはより大きな戦争を防いだ」と手柄にする政治家がいるかもしれない。米国でそういう大統領が出るとしたら、バイデン大統領ではないかと恐れる。

プーチン氏がウクライナを侵略する前にバイデン氏は「米国は戦争に加わらないよ」とプーチン氏にとっては百点の返答をした。加えてプーチン氏の「核爆弾を使うぞ」との脅迫で西側は一瞬で怯んだ。北欧2国が慌ててNATO加盟の手続きをしたのは、同盟にさえ入っていれば、皆が助けてくれると信じたからだ。今の欧州の態勢では介入を拡大する可能性はない。だからこそプーチン氏はウクライナの戦争を拡大し続けるだろう。

アジアでウクライナのような状態が起こる可能性は十分ある。ウクライナ侵攻の4、5日後、日米軍事筋は中国の台湾攻撃を予期して、一瞬身構えたほどだ。しかしウクライナの戦争の規模を見て「ない」と判断した。

故安倍元首相を中心とする反中派は、中国にアジア太平洋での覇権を握らせないことを中心課題としている。そのため日米安保を強固にするだけでなく、自由主義・民主主義国を糾合(きゅうごう)している。NATOの中でドイツが核ボタンに関わっているように、日本も米国の核ボタンを押す権利を持つべきだ。本来なら、日本も核爆弾を製造すべきだが、製造に至るまでの諸々の国際的な手続きを考えると「核共有」の構想の方が容易だ。「非核三原則」はもちろん廃止すべきだ。

自民党の親中派や野党は、中国をどう捉えているのか。自民党の親中派は「永遠に中国と仲良くする」というものである。古来、中国の4千年の歴史を振り返ると、異民族と仲良くしたことはなかった。彼らは他民族を圧してのみ安心する。歴史を顧みない親近感は大間違いだ。岸田外交の方針や林芳正外相の中国観では、中国の子分になってしまう。現内閣を改造して親中派を排除せよ。

(令和4年8月24日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2022年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。