本音は付き合いたくない会計士と弁護士:一行メールで数百ドルの請求

一般の方にとって縁がない方が良いと思うのが警察と病院でしょうか?経営者にとって縁がない方がいいのが会計士と弁護士でしょう。なぜか、といえば問題が起きた時に出てくるのが会計士と弁護士でその請求書を見ると「請求書出すなら俺にもメロンもってこい」と言いたくなるほど高額なのです。

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ずいぶん前ですが、ある方が「よい会計士と弁護士の見つけ方を知っていますか?」と。「さぁ」と答えると「一等地に建っていて受付が広くて美人の受付嬢がいる事務所ですよ」と言われたのが強烈な印象に残っています。もちろん、盛った話ですが、まんざら外しているわけでもありません。

会計士はビジネスをする以上、年に一度は必ずお世話になるものです。いわゆる税務申告です。私はカナダの会社も日本の会社も税理士/会計士に任せています。日本の会計は簡単だし、会計ソフトを使っているので数字に間違いもありません。あとは税務申告の所定のフォームに落とし込むだけで最近はそれも自動でできるソフトがあるのですが、私は税理士にお願いせざるを得ません。

理由は不動産業と輸出事業という会計処理が面倒な業種を抱えているため、消費税の処理が違うし、税務署からの調査、問い合わせが多いのです。そのやりとりを自分でやるのは日本にいないこともあり、面倒なので税理士に任せているのです。幸い個人の税理士さんなので年間丸めていくらという請求でニコニコ一発処理させて頂いています。

カナダは苦戦してきました。会計士は今が4社目です。初めは誰でも知っている巨大会計事務所を使っていたのですが、それは日本の親会社との絡みや移転価格、更には監査を要求されていたことがあるからです。税務申告の請求額も高いのですが、監査費用は目の玉が飛び出たし、それ以外に様々な名目をつけて「ご相談料」ががっぽりかかっていたのです。

今の会社を買収して独立した暁に「世界に知られる大手さん、さようなら、ローカルの味方の中堅さん、いらっしゃい」で中規模の会社に変更します。が、問題は担当会計士がよく退職し、2-3年に一度変わるのです。そのたびに会社の特性を説明し、数字のヒストリーも教えなくてはいけません。相手方も「覚えるのに時間がかかり」「その分、割り増し請求させていただきたく」となればおいおい、君たちのスタッフが勝手に辞めてこちらが教えているのにその費用まで請求するのかね?ということになるのです。

最後に変えたのが3年ぐらい前で今度はカナダ人の一匹狼のプロフェッショナルのような方です。彼の場合、日本の税理士さんと同じでほぼ2-3人で事務所を廻しているのでやり取りは担当とではなく、オーナー会計士と直で行います。どうなったか、といえば「安い、早い、うまい」が三拍子そろっているのです。「うまい」とは過去の払い過ぎの税金を取り戻してくれたり、コロナ中の給付金や支援金を取れるだけ取ってきてくれるのです。「こういうのがあるけれど節税になるよ」とオファーがあり、「ぜひとも」になるわけです。大手や中堅はメルマガのような形で顧客向けに一斉情報が頻繁に来るのですが、決して個別の顧客に向けたオファーではないのです。つまり、今の会計士は「カスタマーにカスタマイズしたサービス」を提供してくれるのです。

弁護士の話もしましょう。カナダの弁護士はこの30年来、変えていません。担当も30年変わっていません。ならいいだろう、と思うでしょうが、彼ももうシニア中のシニアです。ちょっとしたことでも最高額の相談料が来るのです。先日は一行メール一本で数百ドルの請求が来てさすがの私ものけぞりました。

大手の弁護士事務所のメリットは100人単位の弁護士を抱えているのでどんな問題にも対応できる点でしょう。例えばカナダは訴訟弁護士はbarrister、ビジネス弁護士はsolisitorと呼称も違うし、両方のことは原則やりません。専門分野も私の担当の不動産から税務、人事、移民をはじめ、非常に多くあります。しかし、専門外の問題を依頼したら担当と専門のダブル請求が来るのです。何故かといえば担当と専門弁護士が社内やり取りする時間が加算請求されるからです。

ではお前はそれに耐えたのか、といえば私は30年の間、この顧問弁護士に忠誠をつくしたわけではありません。つまり浮気です。案件が非常に特定の専門分野の場合、専門弁護士を自分で見つけてきてその人に対応してもらうのです。例えば私はマリーナ事業がありますが、そこでトラブった際、マリン専門の弁護士が世の中にはいるので探すわけです。その人を紹介してもらい、業務をお願いするわけです。報酬は私の顧問弁護士の概ね半分で収まったと思います。(時給も安いし作業が早いのです。)

経営者には「そんなことは会計士(弁護士)に任せておけ!」と豪語する人もいますが、私はとてもじゃないですが、そんなことはできません。プロフェッショナルとしての仕事はありがたいのですが、私は一流の事務所の家賃も広々とした受付=無駄なスペースの費用までお支払いできるほど裕福な会社ではありません。私のような気持ちの経営者は案外多いのだろうと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年8月30日の記事より転載させていただきました。