世界が注目する安倍氏の「国葬」

安倍晋三元首相が7月8日、奈良市での選挙演説中に銃撃された事件は日本国内ばかりか世界にも大きな衝撃を投じた。9月27日には日本武道館で、吉田茂元首相以来、55年ぶりの国葬が施行される。世界から多数の要人、政治家の参列が予定されているという。戦後最長の政権を担い、世界に向かって日本の役割、貢献度を発信してきた安倍氏の国葬が滞りなく行われることを願っている。

安倍晋三元首相 同元首相Fbより

岸田文雄首相は26日、国葬を全額国家負担として今年度の予備費から約2億5000万円を支出することを閣議決定している。会場費や参列者を運ぶ輸送バスの費用などが含まれているが、警備関連費は計算には入っていないから、実質的な費用はさらに膨らむことが予想される。なお、公式の参列者は約6000人と見積もられている。

国葬の日が近づくにつれ、予想されたことだが「国葬反対」の声が出てきている。岸田首相は国内に国葬に反対する声があることを考慮し、弔旗の掲揚や黙とうによる弔意の表明を各府省に求めることを止めている。

国のために歩んできた政治家を見送る「国葬」で国内の意見が分かれていることは残念だ。厳密にいうと、国葬反対を叫んでいる国民は現職時代から安倍氏を批判してきた根っからの「反安倍」勢力の人々だ。左派系活動家、左派系知識人、それを朝日新聞などの左派系メディアが反対を煽るといったいつものパターンだ。

「国葬」に関連する情報を知りたければ朝日新聞を読めば分かる。もちろん、フィルターがかかった情報だが、朝日は連日、読者に「国葬が国民の総意に反している」といった印象を与えるために腐心している。そのために世論調査まで用意しながら、国葬が実施される日まで反対のラッパを吹きまくるだろう。

朝日ら左派系メディアは、国葬が如何に巨額の公費が投入されるかを執拗に報道する。反対派の常とう手段だ。ドイツの哲学者クリストフ・トゥルケ氏は独週刊誌シュピーゲルのインタビュー記事(2015年5月16日号)の中で、「なぜ、人々は金の話となれば冷静に話せなくなるのか。それはお金の誕生には宗教的起源があるからだ」と強調し、「お金の宗教的ルーツ」について語っている。朝日新聞がいち早く国葬の費用を報道したのは、国民を反対側に引き付ける作戦だからだ。

朝日は安倍氏の「国葬」に対する法的根拠や、同氏の政治的評価について言及するが、「宗教の話」と同様、「お金の話」が国民を分裂させるうえで最強手段となることを知っている。「生活が厳しい時、なぜ、そんな巨額の費用を国葬に投入しなければならないのか」と考え出す国民が増えるのを待っているのだ。思想に基づいた一部の「反安倍勢力」だけでは国葬反対で過半数の世論を味方に取れないから、「浮動票」獲得の手段として「お金」の話を頻繁に報道する、というわけだ(『献金』と神のオーナーシップ2022年8月12日参考)。

安倍氏の政治家としての実績、功績は明らかだ。安倍氏が銃殺されたというニュースが報じられた時、世界の多くの指導者は弔意を表明し、その歩みを称えている。国内では安倍氏が主導した選挙では常に自民党が勝利したという事実は国内でも過半数が安倍氏の政治を支持していたことになる。持病を抱えながら、憲政史上最長の8年8カ月、日本の首相という重責を担うことは容易ではないが、安倍氏は日本の安全保障を強固にし、世界に貢献できる国にしたいという願いで歩んでこられた。

当方はこのコラム欄で「安倍氏は日本の『預言者』だったのか」(7月14日)という見出しの記事を書いた。「安倍氏は預言者のようだった。日本を取り巻く政治情勢を憂慮し、国防の強化を訴えた。現職時代、防衛庁を防衛省に引き上げ、集団的自衛権の行使容認や平和安全法制(安全保障関連法)を整備した。その度に、左翼的メディアから叩かれた。終戦から続いてきた平和憲法に眠ってきた日本人からは迎えられなかった。にもかかわらず、安倍氏は最後まで日本を真の独立国家とするために日本国民の覚醒を促し続けた。立派な預言者のような生き方だった」と述べた。

21世紀初頭、日本に出現した愛国者への最後の別れを告げるという意味で、安倍氏の国葬はふさわしいセレモニーだ。願わくは、一人でも多くの国民が安倍氏に感謝の念を込めて見送ることができれば、安倍氏も喜ばれるだろう。いずれにしても、世界は安倍氏の「国葬」を注目している。「国葬」は安倍氏の最後の外交イベントともなるのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年8月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。