警備費用が問題なら日教組集会や表現の不自由展もするな

安倍元首相の国葬については、岸田首相が最初に方向性を示さなかったので、保守派、とくに安倍派の一部が、功名心か岸田首相に国葬を迫った。その結果、首相が保守派の要求に屈したようにみえたのがまずかった。

8月31日官邸で記者会見をする岸田首相
首相官邸HPより

岸田首相は、すぐに、次のようにいうべきだった。

歴代最長の在任期間を誇り世界から評価されている首相がテロで暗殺された。それなら、これまでの首相のなかで最高の形で見送るべきと考えるのが普通だ。また、世界各国から弔問客も多いというのも特別だ。ただ、どういう形式にするかは、事務方にまず詰めさせたい。

暗殺されたわけでもないサッチャー元首相に対しても、批判もあったがチャーチル並みの葬儀にしたではないかという単純な話だと思う(国葬という言葉は翻訳の難しさもあって使わないが、日本に当てはめれば国葬としての扱いだったといってよい)。

岸田首相はそういう原則論をすぐに述べた上で、具体的な形式方法は事務的に検討させるといい、ついで、根回しをし、国葬という結論にするべきだった。最初にそういう反応をしないから、保守派が国葬にしろと騒いで、それに従った印象になったのは稚拙だったのではないか。

しかし、なんであれ、少なくとも元首相がテロの犠牲者になったというのに、それを政争の具にするのはなんとも品性が下劣だ。泉健太立憲民主党党首は、最初はそんなに否定的でなかったのに、残念だ。

それから、警備の費用のことを問題にするなど、まったく、野党や偽リベラル系の人々は天に唾するものだ。それをいい出したら、たとえば、全国から右翼が集まっていちばん警備が大変なのは、日教組の教研集会である。これなんか、二度と出来なくなる。

それに限らず、あいかわらずだが、偽リベラルはブーメランを厭わない。そのへんは『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか-地球儀を俯瞰した世界最高の政治家』もいろいろ実例が上げて論じておいたからぜひ読んで欲しい。

それから、八月の中旬に京都の『田の字』といわれる烏丸通、四条通、河原町通、御池通で囲まれた地域が広汎に封鎖されて困った。何かと思えば、『表現の不自由展』への反対で右翼などが騒いでいた。たいへんな警備費用のように見えたし、お店も大迷惑だった。こういうのもやめるのか。

また、フランスのマクロン大統領だってこないとかいっている人がいたが、これには理由がある。2019年の9月26日にフランスのシラク大統領が亡くなり仏政府は30日を『国喪の日』とし、午後3時から1分間の黙とうを学校や政府機関などで実施。また、国内全ての公共施設で半旗が掲げられた。

ロシアのプーチン大統領、アメリカのクリントン元大統領、英王室からはエドワード王子、イタリアのマッタレッラ大統領、ベルギーのミシェル首相など世界のVIPが集まったが、日本が出したのはなんと木寺昌人駐仏大使だけだった。

シラク氏は40回以上も来日した親日家で、とくに、大相撲が大好きで優勝力士へのフランス共和国大統領杯(シラク杯)を創設した。にもかかわらず、このひどさ。これでは、マクロン大統領だって来られない。