円安の理由:日米の金利差ではなく国力の反映とみるべき

お茶の間ニュースは「香川照之」が占拠状態。これほどどっちでもよい話題もないのですが、芸能人や有名人は躓いた時の損失が一般人のそれをはるかに凌駕する規模になり、人生を潰すという「理論」を改めて裏付けました。数学的に知名度の高さと失態によるダメージの加速度的カーブの研究があれば私は喜んで拝見します。結局、芸能人はイメージ先行。才能を持った芸能人の卵は無数にいる中で潰しが効かない商売であり、派手な行動で自身に酔っている人が多いのを改めて見せつけました。ハイリスク・ハイリターンの芸能人にならなくてよかった!

では今日のつぶやきをお送りします。

雇用統計、円相場

昨日のブログで本日発表の雇用統計に関して「市場独特の都合の良い解釈が成り立つかどうか」と申し上げました。笑ってしまいますが、この解釈は半日だけ成立しました。事前予想30万人増に対して31.5万人で雇用は良いが7月の52.6万人からはだいぶ落ちているじゃないか、という都合解釈が①。次いで失業率が0.2BPほど悪化した、これは十分な引き締め効果があったじゃないかというもっともらしい解釈が②。平均賃金は前月比から0.3%増に落ち着き、狂乱の人材引き抜き合戦も落ち着いたなというノー天気な解釈が③。①~③を足すと株価にはプラスである、よって当面の嵐は過ぎ去ったのだ、まるでバカボンのパパのようですが、これで午前中の市場の天気は快晴でした。が午後になってバカボンのママが「何をっているんですか、三連休だし、恐怖の9月ですよ…」と戒めてしまいました。

9月のFOMCで75bpか50bpの引上げかについては9月20日のCPI発表にゆだねられます。今の時点では何も申し上げれないほど中立です。CPIは6月が9.1%、7月が8.5%でしたが、8月が7%台半ばぐらいまで落ちれば50bpでほぼ確実。更に経済に悪材料が出れば先行き利上げ鎮静化の傾向がみられると思います。基本的にはFRBのブルのスタンスはピークを越え、落としどころを探る展開に入ってくるとみています。今週、アメリカの一部企業から従業員の大量解雇が聞こえてきており、雇用環境がこれ以上良化することはないとみてよいでしょう。高賃金好条件での雇用は今がラストチャンスです。

では最後に円相場ですが、指摘どおり140円には到達しました。専門家の予想は145円の節目を意識する声が出ています。7月22日付ブログで「為替チャートを見ると仮に145円を超える円安になると260円まで大きな節目がありません。考え方一つなのですが、バブル期から今日までの30数年間もがいた出口が円安だった、それは日本がいよいよ抵抗力をなくし、当時の主力労働層が完全リタイアし、日本が真の意味での再構築をすることにようやく舵を切れる時が来た」と書いた意味は日米金利差が円安の理由という一般論ではなく、国力反映であり政権の通信簿だとみるべきだと考えています。

F3al2/iStock

人間 稲盛和夫

「マネー三狂」の孫、柳井、永守氏に対して稲盛氏は飾らない方でした。氏の本は何冊か拝読していますが、私が凄いな、と思ったのは国内外1万5千人規模を誇った盛和塾の活況ぶり、そして氏の健康状態が悪くなった19年7月に最後の世界大会を行い、稲盛氏は塾を解散し、以降、盛和塾の名を使うことを許しませんでした。それは自分自身のフィロソフィーが勝手独り歩きされるのが嫌だというのと同時に塾生は自分たちで歩む時が来たのだという伝承であったと理解しています。

稲盛氏が利用する接待の店は吉野家の牛丼だったという逸話は飾らないという点で素晴らしいと思います。ウォーレンバフェット氏がいつもハンバーガーとコカ・コーラであるのと同様、自分がどんな地位になろうとも驕り高ぶらないことが何よりでその庶民性も人気の一つであったのでしょう。仮に稲盛氏が「ひろ君、どうだい、昼飯でも」と言われ橙色のあの看板のドアをガラガラっと開けて「つゆだく並!君はどうする?」と言われたら私はそのあたりのホテルで食事するより興奮します。高級店で仮面を被り、腹の探り合いをする「お食事会」より牛丼屋で隣に座ってどんぶりをかけ込むのは同胞意識を強烈に育むでしょう。

稲盛氏は人間だった、これが私の稲盛像です。お前何言ってんの、と言われるかもしれませんが、「マネー三狂」は人間の顔をした札束であり、経営者という役者なのです。本当の顔はもう何十年も前に隠してしまい、経営目標という化粧を塗りたくり、もっと良い数字を、もっと利益を、次の5年で利益は倍増だという自己満足を充足させます。それには何千、何万の従業員も走り続けさせるのです。高い目標を持つことは重要です。ただ、それを続けることで自分自身を見失ってはダメ。その点で稲盛氏は常に地に足がついていてあるべき姿を教えてくれたような気がします。「お前、最近少し、化粧厚くないか」って。

(稲盛和夫氏、盛和塾HPから:編集部)

ホンダ覚醒より必要なのは日本自動車業界の覚醒

ジャガージャパンの元社長の英国人氏と数日前、駐車場で長談義。氏曰く「今乗っているジャガーのSUVのリースがもうすぐ切れるので販売店に行ったら車が何もなかった!」と嘆きます。何もないというのは大げさにせよ、気に入ったものがないということだと思いますが、発注して待てば来年春の納車が期待できるものもあると。更に「こういう時代だから次はEVという選択肢も十分あるのだけどメーカーを問わずクルマがないよ。試乗車があったKIAのEVを試したら悪くはなかったよ、買わないけどね」と。

KIAは現代自動車グループで21年1月にコーポレートアイデンティを変え、幾何学模様のような独特のエンブレム、クルマのデザインは非常に力強く強烈な印象を与えます。テール処理も綺麗で正直日本車が凡庸に見えます。そのKIAと現代自動車を合わせたカナダのマーケットシェアは今年1-6月は12.4%でトヨタの12.2%を抜き、カナダではフォード、GMに次ぎ3番目になります。そんな中で今週の日経ビジネスの特集が「ホンダ覚醒」で眠っていた十数年からようやく目が覚めるのかという内容です。ホンダ神話も昔話でこのところ四輪は話題にならず、二輪や飛行機に主役を奪われていました。その記事の文中にある技術系社員の一言にすべてが表れています。「EVとかソニーとか宇宙とか。楽しそうだけど、自分の仕事には何も関係ない」。

これはホンダに限った話ではないのです。社員は会社の全容や経営陣の方針など全く知らないし、知らされないし、自分の目の前の日々やる仕事をこなすだけです。これではEVやら水素やらというレベルの話どころではありません。なぜ、そんな胡坐をかくようになったのか、一流企業に勤め、一等地事務所の住所が書かれた名刺を持つことを自らの「表札」としたことが変化対応を鈍くしているともいえないでしょうか?世界では各社がしのぎを削って争いをしています。ですが、日本勢はノホホーンとしているように感じるのは私だけでしょうか?

後記
居酒屋でちょっと飲んで一人7-8千円は北米物価ではやむを得ないのですが、その中身がから揚げに卵焼きでは居酒屋の価値とは何だろうと思ってしまいます。ある知り合いの居酒屋のオーナーから電話があり8月末で店を閉めますと。時代の流れでしょう。では焼き鳥屋に行くかと言えばそれも違うし、私はラーメンは店では食べない主義なのでいよいよ行くところがありません。カナダのファミレスで2000円のハンバーガーとビール数杯でおひとりさまチップ入れて5000円なら外食やめて家飲みしようと思い、酒屋に行けば一部従業員のストライキ中で酒屋に酒がなーい!例えお金があっても満足なんて得られないよな、と呟くひろでした。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月3日の記事より転載させていただきました。