無期限は短期でも長期でもない

誰でも銀行等に普通預金口座をもっているが、そこには、給与等が振込まれて、クレジットカード代金や公共料金等の引落しが繰返されるなかで、引落しが確実になされるように、余裕資金を滞留させているはずである。この余裕資金は、無期限で半永久的だけれども、決して長期資金とは呼ばれないから、無期限と長期とが全く異なるものであることは、簡単にわかる。

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ところが、金融の専門家ですら、無期限と長期を混同する。いい例はタンコロ、即ち単名のころがしである。銀行等は、短期融資の一つの形態として、債務者を振出人、自分を受取人とする約束手形を徴求するが、この手形には、普通の商業手形と異なって、債務者の名前しかないので、単名と呼ばれる。ころがしは、期日が到来するたびに、書替継続を繰り返すことである。そこで、単名のころがしを実質的な長期融資とする見解があるのだが、それは誤謬で、正確には、短期融資の無期限の連続である。

仕入れ販売にしても、加工製造にしても、何かを買って、何かを売ることで、経常的な収入と支出の差としての事業キャッシュフローを作り出しているわけで、企業の事業性とは、そのキャッシュフロー創出の動態のことにほかならない。これは、個人の家計が収入と支出の差の動態であることと同じである。

さて、家計においても、経常的な収支差として、ある程度の資金が普通預金口座に滞留するように、企業においても、入るものと出るものとの時間差により、ある程度の在庫等が発生することは不可避であって、そのために経常的に運転資金が必要となる。継続企業として当然のことだが、この運転資金は半永久的に回転し続けるもので、なくなることはない。

単名のころがしは、この経常運転資金のための融資として実行されることが本旨なのだから、それが半永久的に存在し続けるなら、融資のほうも、半永久的に対応することが理に適う。そもそも、経常運転資金の返済を求めたら、企業経営は成立しないし、それを自己資本で賄えば、資本効率が極めて悪くなる。

実は、単名のころがしには、短期融資ならば弁済を求めてから再融資をすべきである、長期融資に変更すべきである、弁済がないなら資本とみなすべきである等の否定的見解があるが、いずれも、金融の本質を弁えない形式論ではあるまいか。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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