安倍首相と統一教会の関係は岸田首相が説明すべき

昨日の「夕刊フジ」に「岸田首相は安倍氏への批判『強く否定』せよ」という記事を書いた。その内容をもう少し敷衍してアゴラの読者のために説明したい。

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私がこの記事で最も強調したのは、岸田首相自身が、安倍元首相と旧統一教会の関係は抑制されたもので、ほかの与野党の政治家に比べて批判されるようなものでないことを明言すべきだということだ。

岸田文雄首相は8日の閉会中審査で、安倍晋三元首相と旧統一教会との関係について、「本人が亡くなられたこの時点で、実態を十分に把握することには限界がある」と語っていたが、これでは、問題があったかもしれないが、死んだので分からないといわんばかりで、国葬への批判もエスカレートするし、逃げたような説明は、保守派の離反もまねく。

そもそも、旧統一教会が、合同結婚式や霊感商法などで強い批判を浴びたのは1990年代前半であり、その時なら世論の強い支持を背景に規制に乗り出せたのに、金丸・小沢一郎、中曽根・前川一家、鳩山由紀夫をはじめとする新党さきがけ、首相を出していた旧社会党などこそ問題だというのは、一昨日に、「アベガー人気ブロガーの安倍批判が大ブーメラン」でも書いたところだ。

当時、安倍氏の父、晋太郎元外相は死去(91年5月)しており、安倍氏は立候補準備中だからまったく無関係である。

それでも腑に落ちない人はいるだろうが、事情はややこしい。旧統一教会は、反北朝鮮から出発しながら、1991年の文鮮明氏訪朝ののち北に接近したが、日本の信者は引き続き保守系が主体というねじれ状態なのである。

これに目を付けて、上記のような親北朝鮮勢力が統一教会との接近を図ったようだ。2004年のイベントに中曽根元首相や鳩山由紀夫(民主党代表降板直後)が多数の議員を連れて参加しスピーチをしたのはそういうことだ。

しかし、信者らはもともと保守系だから、支持する政党や政治家を変えたくないし、強行すれば離反者が出る(自公連立以来、立正佼成会など野党支持に転じた宗教団体も多いが、それが悩みのタネになっている)。

そこで、教団は安倍氏が教団と距離を取り、南北朝鮮のいずれにも誰よりも強硬だったにもかかわらず安倍政権を支持する、つまりしがみついたのである。

よく知られているとおり、安倍政権は悪徳商法への規制強化もしているし、政権復帰後も旧統一教会の意に沿うような南北朝鮮への融和策はだしてない。

その信者から支持されても、教団のもっとも望まない政策を展開していたのだから、ほかの与野党の政治家より批判されるようないわれはないのである。

といっても、この教団が国際的にも強い力をもっているなかで、わざわざ野党支持に追いやるのは嫌ったかもしれないが、その程度だ。

安倍氏にとって、南北朝鮮への厳しい姿勢など統一教会にとって本当は困る政策変更を求めないというなら、支持してくれるというものを断るべきだったというのは、そこまで言うかという気がする。立正佼成会のように立憲民主党、しかも、韓国からの帰化人である白眞勲の支持に回るなどと言う道をたどられても困ると考えてもおかしくない。

それは、閣僚や政調会長として近くで見ていた岸田首相は知っているはずだし、いくらでも、関係者からヒアリングもできるのだから、矢面に立っても保証すべきだし、それを怠れば、世論の国葬への批判はおさまらない一方、保守層が岸田政権から離れていくことも不可避だ。岸田首相はここで逃げるべきでない。

自民党調査について

自民党の茂木敏充幹事長は9月8日、党本部で記者会見を開き、所属国会議員に行った世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係についての調査結果を公表したが、何らかの関わりがあったのは、379名中179人だった。

自己申告だったので、漏れが多少はあるだろうが、茂木幹事長は最初の提出が曖昧な議員には、厳しく個別に詰問したようで、それほど大きく実態と違う数字ではないとみられる。

麻生内閣時の2009年6月に刑事事件(新世事件)として摘発されたのち、10月に成立していた鳩山内閣のもとでは、同様の動きはなく、文化庁によるヒアリングもやらなくなったし、マスコミも大きな社会問題としては扱ってきたわけでなく、関連団体の協力を仰ぐまでしていた。

また、党内規定に違反した行為をしたわけでないのであれば処分しようもないが、今後の方針としていっさいの関係をもたないということを党の方針にしてけじめをつけた。

どの範囲の議員の名前を公表するか議論があったようだが、関連の報道機関の取材を受けただけといった明らかに問題がないケースなどを除いて、多少なりとも迂闊な面もあったという議員の名前を公表した。

名前を公表された議員はそれぞれが説明と今後の決意表明をすればいいが、選挙にあたって主要な支援団体のひとつとして扱ってきたり、関連団体でなく教団施設で、教団主催で支援集会をしてもらった前川喜一氏の甥である中曽根康隆議員などは選挙民に対し反省を語るのは当然だ。

本来は、どういう団体とどういう接触をしないかという一般原則から出発すべきなのに、難しいこといわずに旧統一教会狙い撃ちで対処したのだが、同種の団体との付き合いも断るそうだから、今度こそ、一般原則をきちんと議論すべきだ。

私は旧統一教会と政治の最大の問題は、外国系の団体が秘書を送り込むなど日本の政治に不明朗なかたちで関与するとか、日本で不適切に集めた資金を日本の国益に反する目的で世界にばらまいていたことだといってきた。

これを機に工作員排除のための体制を構築すべきで、とくに、中国、北朝鮮、韓国の工作にこそ、厳しい監視が必要だ。秘書が事実上、自由に機密文書を見ることが出来たり、ほかの議員の部屋に自由に出入りできるなど論外だ。多重国籍者も含めて外国人の秘書がいけないとはいわないが、十分に監視されるべきだ。

スパイ防止法は旧統一教会も支持していたからだめだとかわけのわからないことをいう人もいる。それは、統一教会が北朝鮮と接近するまでの主張としては当然だが、いまとなっては、彼らが本音として喜ぶかどうかは分からない。

反共、改憲、日韓トンネルなどは、統一教会の主張だからそれに賛成する人はシンパだというなら、平和、南北統一、SDGs、ウクライナ支援、アフリカ援助、環境などどにも統一教会は熱心だから、同じようなこと主張してる宗教団体なんぞ類似宗教団体ということになる。在来仏教や日本のキリスト教はみんなそういうことか。