あらゆる宗教はオカルトである

潮 匡人

9月9日付「産経新聞」朝刊の「政治と宗教 距離に課題」と題した2面記事に下記のとおり、私のコメントが掲載された。

宗教法人法は宗教法人の解散命令について規定しているが、適用されたのは深刻な刑事事件に関与したオウム真理教などに限られる。キリスト教徒で評論家の潮匡人氏は「宗教法人は税制上の優遇措置の対象だ。霊感商法に関与するような団体が法人格を失うことには決定的な意味がある」と指摘し、悪質なケースに対してはより柔軟に適用すべきだと主張する。

(中略)冷静さを失っているのは政界だけではないとの指摘もある。高額献金や霊感商法などにとどまらず、旧統一教会側と自民の主張が似通っていることを〝断罪〟する向きもあるからだ。潮氏は「自民を支持する団体の見解が似ているのは当たり前だ。批評は大切だが、旧統一教会に操られているかのような陰謀論は控えるべきだ。『立憲主義』を重んじるならば、『内心の自由』を軽視してはならない」と警鐘を鳴らす。

加えて、5面で、それぞれ「反社会的集団との関係でみるべき」(中北浩爾・一橋大教授)、「信仰でなく具体的行為を問題にすべき」(佐藤優・作家)と題された識者コメントと並んで、私のコメントも「解散命令 粛々と適用検討を」と題し、顔写真入りで掲載された注1)

なかでも私のコメントは「解散命令検討すべき」との見出しで、Yahooやdocomoのサイトでも拡散。非難と共感の双方を招いた。以下、若干の補足と蛇足を書く。

今回のケースが解散命令の要件を満たすか否かは、最終的に裁判所が判断すべきことであり(宗教法人法81条)、予断は控えるが、「検討すべき」との拙論自体が「暴論」とは思わない。日本を代表する(リベラル護憲派の)憲法学者も「解散命令があっても、法人格を有しない宗教団体を存続させたり、新たに結成することが妨げられるわけではないから、厳格な要件のもとで行われる解散命令の制度は、違憲とは言えない」と東大の教科書に書いた(芦部信喜『憲法』岩波書店)。

大多数のネット民は、宗教団体と宗教法人の違いを理解していない。

解散命令は、「宗教団体に法律上の能力を与えることを目的」とし、「憲法で保障された信教の自由は、すべての国政において尊重されなければならない」(第1条)と明記した宗教法人法自身が、第81条で規定した制度である。

法律で明記された制度の適用の検討(の議論)すら許されないというのは、それこそ常軌を逸した「暴論」ではないだろうか。一方で、国会議員に「一切の関係を断て」と迫りながら、他方で、「解散命令は暴論」と事実上の擁護論を展開するのは、まるで公正でない。

宗教法人としての問題については、全国紙でコメントした内容がネットでも拡散したので、これ以上は論じない。

宗教団体としての問題はどうか。なんであれ、その教義内容に立ち入り、特定宗教団体を揶揄誹謗するのは妥当でない。私はそう考える。そもそも「あらゆる宗教は(その信徒以外にとり)オカルトである」。かつて渡部昇一先生から、私はそう教わった。

もちろん「主は聖霊によりてやどり、処女マリヤより生れ、(中略)十字架につけられ、(中略)三日目に死人のうちよりよみがへり、天に昇のぼり、全能の父なる神の右に坐ざしたまへり」と信仰告白する日本基督教団(キリスト教)も例外でない。たとえ、荒唐無稽に思える教義であろうと、政治やメディアが軽々に扱うべきでない。

以上を前提とし、あくまで一般論としての蛇足ながら、一つの見分け方を紹介しよう。ちなみに以下の聖句も、かつて渡部先生から直接、教わったことである。

偽預言者に注意しなさい。彼らは羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、その内側は強欲な狼である。あなたがたは、その実で彼らを見分ける。茨からぶどうが、あざみからいちじくが採れるだろうか。すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。良い木が悪い実を結ぶことはなく、また、悪い木が良い実を結ぶこともできない。良い実を結ばない木はみな、切り倒されて火に投げ込まれる。このように、あなたがたはその実で彼らを見分ける。

(「新約聖書」「マタイによる福音書」聖書協会共同訳)

もはや、これ以上の蛇足は要るまい。

注1)コメント全文:「宗教法人は税制上の優遇措置の対象だ。霊感商法に関与するような団体が法人格を失うことには決定的な意味がある。オウム真理教は宗教法人法の解散命令で解散に追い込まれた。粛々と適用を検討すべきだ。一方、国会議員や秘書が特定の宗教に入信しているかを調べるといった、内心の自由に立ち入るようなことは、それこそ立憲主義を根底から揺るがす行為であり、絶対にやってはいけないことだ。また、憲法改正などをめぐる旧統一教会側と自民党との主張が似通っていることを〝断罪〟する向きもおかしい。見解が似ている部分もあるのは当たり前だ。批評は大切だが、旧統一教会に操られているかのような陰謀論は控えるべきだ。『立憲主義』を重んじるならば、内心の自由や言論の自由を軽視してはならない」

【旧統一教会自民調査】「解散命令検討すべき」評論家の潮匡人氏
評論家・潮匡人氏「宗教法人は税制上の優遇措置の対象だ。霊感商法に関与するような団体が法人格を失うことには決定的な意味がある。オウム真理教は宗教法人法の解散命令…

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