民主党が自民党から統一教会の支援を奪おうとした歴史

自民党が旧統一教会と絶縁しようとしていることは、宗教団体や関連団体はともかく、個人はどうするつもりだろうという疑念はあるが、結構なことである。

それでは今なぜそれが可能かといえば、いかに小沢一郎氏のような清濁併せのむ政治家がいたとしても、立憲民主党が旧統一教会を取り込むのが許される状況でないからだ。自民党としてはリスクなしに切れるわけだ。

1999年に自公連立が成立したのち、民主党は自民党支持だった宗教団体を引き剥がそうと攻勢を掛けてかなり成功した。

旧統一教会の日本での組織形成に協力した立正佼成会も新日本宗教団体連合会も、1998年の参院選では民主党候補者での推薦候補はいなかったが、自民党候補50人に推薦を出していた。しかし、公明党との連立ののち、2007年参議院選挙では自民3人、民主31人と逆転した。 2022年の参議院議員選挙でも、白眞勲、杉尾秀哉らを支援している。

2016年6月9日、生長の家は2016年の参議院選挙において、「与党及びその候補者を支持しない」ことを決定し、その方針は先般の参議院選挙においても統一されている。

その工作は旧統一教会にも及び、2004年3月に国際勝共連合と世界平和連合が共催して「救国救世全国総決起大会」を開催し、中曽根康弘元首相が講演し、鳩山由紀夫民主党前代表(当時)はじめ17名の国会議員が来賓として壇上に呼び上げられたが、自民8人、民主党9人だった。

鳩山も挨拶に立ち、その中で両連合の会長でもあった統一教会の小山田秀生会長(当時)にエールを送ったのである。まさに支持取り付けに猛チャージをかけたのである(アエラ2004年5月3日)。

そのあたりの経緯は、「安倍さんはなぜリベラルに嫌われたか」でも紹介したことだ。

さらに民主党政権下では、自民党政権では行なっていた警察の介入も、文化庁のヒアリングも中止してしまった。

そういう状況で自民党が民主党の引き剥がし戦略を阻止する程度に配慮したことがあったとしても、それについて、少なくとも、立憲民主党など批判することは許されまい。

そもそも、現在の世界規模での旧統一教会の目標は南北統一で、憲法改正とかいうのは、日本での信者が保守層が多いので媚びているだけである。

そのなかで安倍元首相も、旧統一教会を反自民に回らさない程度に配慮するとか、アメリカの保守層に対する影響力を日本に牙をむかないようにする、韓国や北朝鮮の反日を煽らないというようなことのないようにするために、最低限のお付き合いとして祝辞を出すとかしたということでないのか。あるいは、対北朝鮮で使えることがないとは限らないと考えたかもしれない。

しかし、それでも、安倍内閣が、韓国にも北朝鮮にも厳しい立場をとり続けたのだから、それは、旧統一教会が喜ぶものでなかったはずで、見返りはまったく与えなかったと言うことだ。

団体名の変更については、それまで許可しなかったものを下村博文文科相のもとで認可したといわれているが間違いである。それまで、出されると許可してもしなくても困るので、出さないでくれとお願いしていたが、旧統一教会側が提出を強行したので、裁判での敗訴リスクが高いのでしぶしぶ認可しただけだ。

それをもって、あたかも、安倍内閣を支えさせて、政策的な見返りを与えたと錯覚させるようなことをいうのは詐欺的であろう。

しかし、いずれにせよ、これを契機に、あまり細かい理屈いわずに、海外の政府や問題のある団体の日本への政治介入をストップできるなら怪我の功名だ。ぜひ、議員会館から工作員を根絶して欲しい。