わずらわしさを消し去る「人生のリセットボタン」

黒坂岳央です。

「わずらわしさを何もかも捨てて、人生をリセットしたい」

誰もが一度は考えたであろう人生のリセットボタン。筆者も例外ではないし、誰もが知る有名人で成功の只中にいる人達でさえ、そのように考える人もいる。

世の中は「努力を重ねろ。実績を積み上げよう」と言われる。確かに小さな積み上げは、大きな力を発揮するだろう。だがその一方で、「積み上げてきたしがらみをすべて捨てて、リセットしたい」という考えの持ち主も確実に存在するのだ。

これまで、人生のリセットは簡単ではないとされてきた。実際、昭和時代は難しかった。だが令和の今、このリセットボタンは身近にあって簡単に押せるし、昭和時代と違ってリスクもない。

一体、どこにあるのか? それはインターネット空間である。

pixelfit/iStock

人生のリセットを考える瞬間

「人生はお金があれば幸せだ」と思われがちである。事実、お金がかなりの問題を解決するのは正しい。しかし、お金があっても依然として幸せになれない人はたくさんいる。芸能人が薬物に手を出したり、自死を選ぶのはお金がないからというより、人間関係や仕事へのプレッシャーに負けたことが原因のパターンも少なくない。

人が幸せになるには、複数の条件を満たすことが必要だ。経済的豊かさだけでなく、健康や家族との愛情、社会からの承認、人によってはさらに「自分の子供」も追加されるかもしれない。そして忘れられがちなのが「自由」である。

そしてこの自由は、往々にして他の条件と相反する事が少なくない。社会的に成功したり、知名度が高まると自由ではなくなるのだ。これは以前の記事「 「有名人」になってはいけない4つの理由」で紹介済だ。現在の仕事に100%満足しているならそうではないかもしれないが、「他の事もやってみたい」となれば過去の実績や知名度はかえって邪魔をしてしまうし、外野のヤジや評判を考えると行動や発言の自由はかなり制限されてしまう。

有名になり、影響力を持ち、資産を増やせば自由になれると思う人は多い。だがそれは幻想である。仕事の成功と自由さはある種、トレードオフなのだ。有名人になってしまえば、おいそれと軽薄な冗談も言えない。顔も声も割れている人物が、海外で活動するのは日本国内での自由を失ったからかもしれない。

訳ありブロガー、YouTuberたち

筆者は人づてに面白いことを知った。世間的にかなり知名度のある人物が、まったく別のペンネームでブログやYouTubeをやっていたのだ。

プロフィールには、「本当は別にメインの活動をしているのだが、顔も実績もよく知られているので匿名で活動している」とあった。そのブログやYouTubeではのびのびと活動されており、とても楽しそうで、見ているファンもいい感じで盛り上がっている。

こういう「訳あり」な人は他にもいるのではないだろうか。

名前ですぐ検索されてしまう時代

先日、ネット上でこのような問題が起きた。高級レストランに来店したお客さんに好意を抱いた店員が、そのお客さんの予約名で検索しSNSのアカウントを突き止めて個別に連絡をしたようなのだ。また、合コンにいっていい感じの相手だった場合、トイレに立ってすぐ名前を検索し、相手の素性の真偽を確かめる人がいるという話を聞いたことがある。

現代は「大検索時代」である。これは有名人だけでなく、SNSで本名を出して活動をするすべての人にも当てはまる話だ。何かあれば名前で検索され、すぐに情報を突き止められてしまう。だからこそ、顔を出さず、ペンネームを使えば、新たな人生を歩めるのである。

リアルは自由がない。ネットも本名だから気軽に発言もできない。そんな自由を失った人たちが押せる、人生のリセットボタンはネット上にある。ペンネームを使ってブログやYouTube、SNSでアカウントを作れば良いだけだ。現在の自分を知るものが誰もいなければ、のびのびと自由になれるだろう。それは令和版・人生のリセットボタンといっても差し支えないのではないだろうか。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。