先週の木曜日、日銀は遂に円買いドル売りの為替介入に踏み切りました。図表は日本経済新聞電子版からの引用ですが、介入前に1ドル=146円近くまで下落していた円が一気に買い戻され、一時140円台まで5円近く上昇しました。
しかし、週明けの26日になると、朝から再びジリジリと円安傾向になり、現時点では1ドル=144円前後となっています。
今後、日銀がさらに為替介入を繰り返すかもしれません。しかし、その効果は限定的だと思います。まず、先週の為替介入にアメリカや欧州の通貨当局は参加しておらず、静観の構えです。日銀の単独介入では迫力不足です。
また、今回の円安の進行の背景にあるのは、アメリカと日本の金融政策の違いです。アメリカのFRBが先週0.75%の利上げを決定したのに対し、日本では金融緩和が続いています。
この状況が続く限り、介入によって一時的に円高に押し上げられたとしても、もともとの円安の流れを変える事はできないと思います。
金利差を放置しながら為替介入で円高にしようとするのは、アクセルを踏みながらブレーキをかけるようなものです。市場は、日銀の金融政策と為替介入の矛盾に気がついているのです。
今回も為替介入による円高は投機家にとって絶好のドルの買い場になってしまいました。
「黒田さん、ごっつぁんです」という訳です。
もしまた同じことを繰り返せば、投機家にとってチャンスがもう一度やってくることになります。前回の介入に味をしめた人たちですから、介入の効果はさらに弱いものとなるでしょう。
日銀は2%を超える消費者物価指数が実現した現在も、金融政策緩和から引き締めに転換するつもりは毛頭ないようです。
という訳で、いよいよ1ドル=150円の時代がやってきそうです。 2011年の1ドル= 75円台からすれば、取りに対する円の価値は半減してしまったことになります。
日本人が海外に行くと、すべてのモノの価格が割高に感じるのとは対照的に、アメリカ人が日本に来れば物価の安さに驚くことでしょう。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年9月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。