安倍さんの旧統一教会についての関係と本音はこうだった

朝日新聞が、元赤軍派のつくった山上徹也の映画を好意的に紹介して大炎上しているなど、テロ容認に近い姿勢であるのは、まことに残念である。

赤報隊による阪神支局襲撃事件で記者を殺された朝日新聞だからこそ、生前の安倍元首相と対立していたにしても、テロに対する戦いの先頭に立つと信じていたが、社内の過激派へのコントロールが効かないのだろうか。

しかも、支局襲撃事件は朝日新聞そのものへの怒りが原因だが、安倍元首相暗殺は、朝鮮半島の平和統一を願う関連団体イベントをお祝いしただけが理由だ。

いってみれば、朝日新聞がかかわる夏の甲子園大会に祝辞を寄せた人、協賛した企業、参加した球児とかに対してテロが行われたのと同じだ。良い趣旨のイベントでも旧統一教会の勢力拡大に資するからだめという人もいるが、夏の甲子園も朝日新聞は部数拡大のために開催しているであるから同じだ。

安倍さんと旧統一教会の関係については、「安倍さんはどうしてリベラルに憎まれたのか」でも論じたが、このところ、安倍さんが死んだことをよいことに、安倍氏と旧統一教会との関係について、でたらめをいっている人が多いので、国葬を明日に控え、「もし安倍さんが生きてたら、こういうように考えていた」だろうということを古い経緯を知る関係者からヒアリングしてまとめてみた。

「安倍さんならこういうだろう」ということとも少し違うし、私が考えていることと同じでもないことを断っておく。

安倍氏は本音ではこう考えていただろう

そもそも、岸信介や安倍晋太郎は、冷戦時に南北朝鮮が対立する中で、韓国を守ることに役立つ勢力として勝共連合を評価し、協力関係もあったが、旧統一教会はその支援団体ではあるが、深い付き合いをしていたのではないと理解している。

自分が父親である安倍晋太郎の秘書をしていたのは外相になった1982年の終わりから死去する1991年でだいたいレーガン大統領時代である。

1986年まで外相だが、外交の主導権は中曽根首相がとって、レーガン政権と持ちつ持たれつだった旧統一教会も中曽根氏の方を向いていたし、清和会会長は1986年まで福田赳夫だったので、支援団体との関係を握っていたのは福田氏である。

しかも、安倍事務所内でも支援団体などとのややこしい話はベテラン秘書の仕事で自分はあまり関与していない。

さらに、1988年にはリクルート事件発覚で晋太郎は幹事長を辞職せざるを得なくなり、さらに、癌の宣告をされたので、人にもほとんど相談できないまま、父親の死んだ場合に備えなくてはならなかった。

そんなわけで、1991年に文鮮明が金丸信氏の手引きで来日し、中曽根元首相と会談するとか、1992年に合同結婚式や霊感商法が問題になっ社会問題になった時期は、父を看取り葬儀を済ませ次期選挙に向けて山口県に帰ってどぶ板していた時期で、その時期に旧統一教会を解散させるべきだったとか自分に言われても困るのである。

代議士になって永田町に登場したときは、自民党は野党だし、与党になっても清和会の一年生にすぎなかった。当時は、オウム真理教の事件があったし、野党を支持していた創価学会を叩くのに忙しいころで、旧統一教会のことは話題になっていなかった。

しかも、母親の洋子(岸信介の娘の安倍洋子氏)は、父親の信介や夫の晋太郎の周囲のややダーティーな関係とかそれに関わっている人を非常に嫌っていて、自分がそういう人たちと付き合うことを嫌ってしつこく注意するように言い聞かせられた。

そのために、本当に問題のある団体や人だけでなく、かつてお世話になった人から「晋三は冷たい」といわれたものだ。さらに、母は別の宗教には惹かれていて関係もあるのだが、それは旧統一教会と厳しく反目しているところだというのも旧統一教会を嫌っていた理由だと思う。

また、自分としては、北朝鮮と旧統一教会が近すぎるのも好ましくないと思ってテレビ番組で一緒になった有田芳生さんにお聞きしたくらいだ。

一方、1999年に自公連立が成立してからは、民主党が立正佼成会や生長の家などを引き剥がしたし、旧統一教会にも鳩山由紀夫さんが猛チャージをかけて取り込もうとしており、政権をとってから、警察にも文化庁にも何もさせなかった。あいかわらず、鳩山さんが韓国に卑屈な態度をとり続けているのをみるとまだ諦めてないのかもしれない。

それにもかかわらず、旧統一教会が民主党になびかず、自民党を支持し続けたのは、会員がそれを望んだからだ。こうした新興宗教の信者はだいたい保守系の人だ。ところが、自公連立を嫌うあまり野党支持に転じた宗教団体では、会員数を激減させているから、そういうことになるのを嫌ったのだろう。

そもそも、清和会は岸信介からの伝統で、支持を増やすために政策提案を打ち出すというタイプの田中角栄型の利益誘導集団でない。自分たちが信じる政策を提案して、それに共感する人が支持するというのがモットーだ。憲法改正でもなんでも、どっかの団体にそれが喜ばれるから提案しているはずもない。

逆に安倍内閣で旧統一教会におもねるためにした政策があるなら云って欲しいが、そんなものはないのである。むしろ、霊感商法の取り締まり強化もしたし、南北朝鮮への厳しい対処は旧統一教会がいちばん嫌うところだが、自分ほどそれを徹底した政治家がいただろうか。

旧統一教会が私を支持し、また、安倍派の候補者の選挙の応援をしたとすれば、それは、会員がそれを望んだからだ。安倍支持を打ち出さないと彼らが会員から見放されるからそうしたのだと思う。自分の支持率が低かったら、見返りなしに支持をしてくれなかったかと思う。

もちろん、政策においては妥協しなかったが、支持してくれるという人たちを断るとか、冷たくばかりするのは政治家としてはやりにくい。反対党に行かれても困る。さらに、旧統一教会については、国連やアメリカの保守政界・言論界に非常に強い影響力をもっているわけだし、拉致問題でかれらが役にたったことはないが、わざわざ敵にまわしたくはない。

だから、昨年の国連NGOである関連団体のイベントにトランプ大統領と横並びだというので、お世話になってるお礼のつもりでビデオメッセージくらいは送ったが、それがそんな批判されることだとは思わない。世界中に気に入らない国も政治家も人も団体もいろいろあるが、ほとんどの場合、敵にまわさないようにそのくらいのことはしてきたし、ほかの政治家もそうだろう。

旧統一教会に誰を支持してもらうようにといった話の相談にのったことくらいはもちろんある。しかし、自分が清和会の会長になったのは昨年の総選挙後である。それまでは、たとえば、総裁選挙で高市早苗を支持して欲しいと清和会に頼んでも派閥として一本化してくれなかった。

あるいは、群馬一区で、安倍派の大事な一員である尾身朝子さんが現職としているのに、旧統一教会はあの前川喜平さんの甥の中曽根康隆さんのために組織を挙げて猛運動を展開し、私も泣く泣く尾身さんに比例にまわるのを承諾せざるをえなくなった。これなど、私が頼んだらいうことを聞いてくれるというような単純な関係でないことの証拠だと思う。