自衛隊の制服はユニクロでいいじゃないか

なんだか美談めいたお話が皆さんお好きですよね。

自衛隊のジープに冷房とカーラジオがついた理由

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企業側は「ラジオとエアコンを外すとなると、生産ラインを新しく1本つくらないないといけませんね。そうすると、逆に価格が上がりますけれど、よろしいですか」と回答した。防衛省・自衛隊は「いやいや、そういうことでしたら、ラジオ・エアコン付きでお願いします」とお願いし直すことになったという。

著者は知らないのかもしれませんが、これはウィリスジープをベースにした73式ジープの後継ですが、書類上はこれの「改良型」となっています。排ガス規制適応のための後継です。

本邦ではジープを改良すると「パジェロ」になるらしいです。防衛庁の技本やら三菱重工は魔法でも使えるのでしょう。であればカローラを「改良」して「ベンツ」や「ロールス・ロイス」して輸出すれば大儲けです。

この件に関しては当時の大蔵省の担当主計官に取材したのですが、「書類に不備がないから問題ない」とのことでた。これは換言すれば書類さえあれば嘘をついていいということになります。

そのような大蔵省の態度が防衛庁と自衛隊を増長させてきたのではないでしょうか。

そして当時申し上げましたが、73式ジープ後継と高機動車はランドローバーのように同じ車体を利用すればいい。例えばランクルをベースにして、後者はエンジンを変えるなり、6輪にするなりすれば、兵站も教育も整備も著しく楽になる。そして軽装甲機動車もその派生型にすれば尚更その効果は高くなったでしょう。調達コストも劇的に下がったでしょう。事実、サウジのシビルなどランクルベースの装甲車は多数存在しています。

ところが技本や陸幕はそのようなファミリー化の知恵がなかったか、各メーカーに配慮したのか現在のようにバラバラに開発調達を行い、税金を無駄に浪費してきました。特に軽装甲機動車は騒音が多く、不整地の機動性も低い失敗作です。

そもそもまともな軍隊ならば小型4人乗りの装甲タクシーを主力APCになんぞ採用していません。陸幕、技本ともに軍隊の常識が欠如していた、ということです。

よく知られているように、日本では防衛産業は儲からない。長い間、武器輸出3原則のため、海外マーケットが存在せず、「顧客は自衛隊だけ」という状態が続いたからだ。民間企業には、防衛装備品を大量に生産するラインがない。

そうであれば、自衛隊市場から撤退すればいいだけではないですか。あるいは自衛隊向けの専用の子会社を共同で設立すればよかった。

個々に対した数もでない、「儲からない」商売を継続してきたのはメーカーの責任でもあります。別に法律で撤退できないわけでもなかった、メーカーの経営者にもまともな見識が無かっただけです。儲からないのは自業自得です。

ある時期、財務省との予算折衝の席で、自衛隊の制服にかかる費用が話題になった。財務省の担当者は、制服が国産品でコストが高すぎると不満を漏らした。「国内を見てみなさい。ユニクロなんか、中国などで生産して価格を下げる努力をしているじゃないですか」と言い放ったという。最初は恐縮していた自衛隊関係者も、この発言にはキレたという。「我々の制服をなんだと思っているんですか。これは死に装束ですよ。それを中国に生産してもらえって言うんですか」。さすがに、財務省の関係者も我に返ったようで、以後、「制服を海外生産にしろ」とは言わなくなったという。

こういう話を美談の如く紹介するのは見識と知識が不足しているからでしょう。

自衛隊の制服はユニクロで十分です。

TonyBaggett/iStock

他国の何倍も高いコストでクズのような装備を調達しているから、被服含めた需品の予算が確保できない。これは陸幕や装備庁が無能だからです。

まともな軍隊が機関拳銃とか06式小銃擲弾とか胡乱で役に立たなく、高価な兵器は開発も調達もしません。どうしても国産の制服で死にたいならば、そういう馬鹿な調達システムを見直すべきでしょう。

せいぜいカローラしか買えない安サラリーマンが無理してイタ車買って、カネがないのにアルマーニのスーツを着ないと仕事ができない、みたいな話で納税者からみれば「味噌汁で顔洗ってこい」レベルの主張です。

それに国内利権温存のための世界でどこも使っていないビニロンの戦闘服使っていることはだんまりなんですよね。色落ちが激しくて迷彩効果が減じるわけです、「戦死」の可能性が上がるのにそれはOKなのでしょうか。

上記のようなクズ兵器使っていれば「戦死」の可能性は更に高まります。死んでからの心配よりも死なないで済むような心配が先でしょう。

更に申せば、個人携行衛生キットもぼくが指摘するまでお寒い限りでした。「国産制服の維持よりも衛生キットにカネを使え」となんで言わなかったでしょうか。

それに諸外国では戦闘服や制服も国外で生産することももはや少なくないわけです。軍事見本市に行けば、それがよくわかります。例えば欧州などでは多くの国がベルギーやベトナム、トルコなどで生産した装備を使用してますが、その装備を使用して戦死したら成仏できないでしょか?

こういう現実も知らずに、散々防衛費を無駄使いしておいて、死ぬときは高い国産制服でないと死にきれないというのは、税金でオ○ニーしたいと言っているに過ぎません。

それほど嫌ならば、自腹きって制服作ればいいでしょう。どこの駐屯地でも受け付けていますよ。まさか自腹を切るのが嫌なだけでしょうか。自分の戦死にはその費用を払う価値がないのでしょうか。

どうしても国産制服にこだわりたいのであれば、役立たずで高額な装備や、ビニロン製の戦闘服とかやめるべでしょう。また利権調整で既存のメーカーに発注せずに、まともな競争入札を導入して価格の低減も図るべきです。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年9月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。