英国はポンドがあったからEUを離脱も、離脱によりポンドは暴落した

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イギリスが、破綻の危機を迎えている。

これに比べれば、円安などかわいいもので、国債の価格は日銀により守られ、株価は米国株価に連動しており、単独で暴落することはなさそうに思われている。

日本の国葬と英国の国葬ぐらいの差がある。

しかし、客観的な状況、前提条件となる政府、中央銀行の状況、経済政策の状況を見ると、日本のほうがはるかに悪く見える。

政府債務残高のGDP比は、英国の約3倍、毎年の財政赤字もこれまでは、日本のほうがはるかに大きい。中央銀行は、国債残高の半分を買い入れ、今後、金融引き締めをするつもりもないと宣言。英国中央銀行は、引き締めを急激に進め、保有している国債も売却も進めることがすでに決定されている。

英国中央銀行の政策は明瞭、合理的であり、予測可能だ。一方で日本銀行の政策は、なぜ金融緩和に異常に固執しているのか、誰にもわからない。今後の政策の変更がいつどのように起こるのか、まったく予測不可能で、リスクはとてつもなく高い。

この日本と英国の差は、英国が、EUを離脱したことに尽きる。EU離脱、ブレクジットがすべての元凶なのだ。

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英国のインフレは、景気が過熱している米国よりも悪い。なぜなら、EU離脱で、これまでEU内から流れてきていた安価な労働者がEUに帰ってしまい、物流などの基本的な社会の機能、経済機能を担う人々が存在しなくなってしまった。これが、英国特有のインフレの原因である。もちろん、EUからの輸入もコストが高くなり、何もかも、EU経済という規模のメリット、大きな経済圏のメリットを失ってしまった。

一方、日本は、従前と何も変わらない。だからショックはこない。正確に言えば、まだ来ていない。逆に言えば、これから来る、ということで、英国の破綻の例が参考になるだろう。

英国がEUを離脱した理由は何か。もちろん、政治的なものではあるが、その根本になるのは、EUに属しながら、自国通貨、世界一伝統のある通貨、ポンドを持っていたからだ。

しかし、ここにきてはっきりしたのは、ポンドの価値の裏づけはEUに属していたことだったのだ。

そして、通貨こそが、国家、政治的な統一を根源から支える唯一最大のものだ。国家は通貨を発行するためにある。

したがって、通貨は独自のポンドを持ち、一方でEUという政治体に有機的に含まれることは、根本的な矛盾であり、もともと持続不可能だったのだ。

そして、今、ポンドが崩壊しつつある。

今後、イギリスはとことん破滅する道を選ぶか、今度こそ、EUのしがない1メンバーとして、ウクライナと一緒に加盟を懇願する道をとるか(そして、ウクライナと同様にEUに加盟希望を嫌がられることになる)、そのときが来るだろう。