イタリア初の女性首相の誕生か?しかし、それも短命であろう

イタリアのジョルジャ・メロニ次期首相 ITALIA, MELONÍ VA A SER PRIMERA MINISTRA. 29-09-2022.

極右政党から初の女性首相の誕生か?

9月25日、イタリアで大幅に両院の議員が削減される初の総選挙が実施された。これまで下院630議席が400議席に、上院は315議席から200議席となった。即ち、345議席が消滅したのである。

今回の選挙で極右政党「イタリア同胞」から初の女性首相が誕生することが濃厚になっている。1946年からこれまで誕生した政府の数は67。今回誕生するであろう首相の政権も短命に終わりそうだ。その理由は以下に説明することにしたい。

2012年に創設した同党の党首はジョルジャ・メローニ氏(45)だ。獲得した得票率は26%。前回の2018年の総選挙では同党は僅か4.3%の得票率しかなかった。

イタリア同胞が急激に支持率を高めたのは以下のような理由からだ。

  • ドラギ前首相の超党派政権に唯一加わらなかった政党だということ。だからドラギ政権を野党として容易に批判できた。
  • ドラギ首相政権をなぜ倒壊させたのか多くの国民は今も理解できないでいる。それが理由で、多くの有権者が投票所に向かわなかった。有権者の36%が投票しなかったのである。南部のナポリでは25歳未満の投票率は50%を満たさなかったほどで、その中でもサルヴィーニ氏がリーダーの右派政党の同盟は大幅に得票率を落とし、それがすべてイタリアの同胞に票が流れた。
  • 同盟は前回の選挙では33%の得票率であった。しかし、今ではかつての支持者の4人の内の3人が同党から離れた。サルヴィーニ氏の独断的な政治が理由である。しかも、サルヴィーニ氏はEUの政策に反対し、ロシアに接近したりして国際的に信頼を失っている。

余談ながら、イタリアは1979年まで90%以上の投票率を維持していた。ところが、1990年代から政治の腐敗が目立つようになり、ベルルスコーニ氏が首相になってから政治は私物化し、責任感に欠ける政治が行われるようになった。それを観た良識ある有権者は投票所から離れるようになった。

  • 野党の民主党、五つ星運動そしてレンツィ元首相も第三極が連携して選挙に臨んでいれば右派政党に十分に対抗できた。ところが、そのリーダーとなれる民主党のレッタ元首相が連携して選挙に臨むことを拒否。その結果、この3政党はそれぞれ単独で選挙に臨まなくてはならなくなった。

前途多難な女性首相

メローニ氏が首相になっても前途は非常に多難である。先ず最初にベルルスコーニ氏のフォルツァ・イタリアとサルヴィーニ氏の同盟と連立して政権を樹立する必要がある。この2政党は大臣ポストの要求などで組閣は容易には進まないであろう。

彼女の政党の政策を実施するにしても、ドラギー前首相の政策から大きく外れることは不可能である。それを実施しようとすれば、EUからの支援に問題が発生するからである。更に米国から圧力がかかるのも必至である。

また彼女はこれまで政治的に大役を担った経験がない。ベルルスコーニ氏の政権で大臣に一度なっただけである。

それが意味するものは 極右政党だと言っても実際の政治はドラギ前首相の政策を踏襲するようになるはずである。それが野党から強い批判を受けるようになるであろう。しかも、組閣で連携する同盟とフォルツァ・イタリアと均衡した政治を実施するのは容易ではない。しかも、同盟は党内でサルビニ氏を解任して新しいリーダーを誕生させようとする動きもある。それが政府内でも影響するはずである。

同盟の創設者は落選

現在の同盟が北部同盟と呼ばれていた時の代表であったウンベルト・ボッシ氏が初めて落選するという珍事があった。それだけ嘗ての同盟の支持者がそこから離れていることを示すものである。

同様に五つ星運動が誕生して初めて議席を獲得したルイジ・ディマイオ氏は同党では脚光を浴びリーダーとして副首相になり、またドラギ政権では外相も務めたが、今回離党して新しい政党を創設して立候補したが落選した。

政府の誕生は11月

10月23日にマッタレッラ大統領からメローニ氏は首班として組閣の任を授かるはずである新政府の誕生は11月。それまで事態が容易に進むか観察して行く必要がある。