再エネ賦課金巡る議論:とって配る自民 vs. とるのをやめる国民

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報道によれば、再エネ賦課金徴収停止に向けて、国民民主党は再生可能エネルギー特別措置法の改正案を今国会に提出するとのことです。

再生エネ賦課金を政府に負担提案 国民、電気料金値上げで - 日本経済新聞
国民民主党は再生可能エネルギー特別措置(FIT)法の改正案を今国会に提出する。小売事業者が電気の利用者から徴収している再生エネ普及のための賦課金について、政府が一時的に補助金で代替すると盛り込む。利用者の負担を減らして電気料金値上げの影響を緩和すると訴える。FIT法は再生エネを調達する小売事業者が電気料金

報道が事実ならば、ぜひとも現行法の改正案を通していただき、再エネ賦課金の徴収停止を実現して頂きたいと考えます。報道機関は毎月世論調査を実施しています。本件「再エネ賦課金徴収停止に賛成か反対か」についても、是非とも世論の喚起と聴取に取り組んで頂けたら大変有意義ではないかと考えます。

今回は、電力料金についての実際の状況を整理し、徴収停止の是非を検証してゆきます。

あなたはどれくらい再エネ賦課金を徴収されていますか?

日曜報道 THE PRIME(10月9日、フジテレビ)に玉木代表が出演していた際画面に出た明細では、「令和3年1月、使用量339kWh、請求予定金額9,252円」となっており、うち「再エネ発電賦課金1,010円」となっておりました。

「標準世帯」というモデルではだいたいその程度なのかもしれません。しかし子育て世帯などで家族が3~4人ともなれば、このような控え目な使用量と金額では収まりません。実感とは大いにかけ離れているのではないでしょうか。そこで、この際自らの使用量と料金を一つの実例として話を進めます(4人家族世帯)。

まず添付の明細(図1)は2022年1月の実物です。月間電気使用量1,053kWhは多い方だと思います。この時は、終日エアコン3台稼働に加え、ドラム式洗濯機で洗濯から乾燥まで1日2回、食洗器も1日2回は使用していました。

それらの結果、請求予定金額は34,295円となり、そのうち「再エネ発電賦課金」は3,538円(総額の約10.3%)となりました。

図1

これらを年間累計したのが図2-1と図2-2です。

図2-1は2021年1月から12月の1年間、図2-2は、2021年10月から2022年9月の1年間となります。図中に記入した通り、2021年は再エネ発電賦課金が年間25,802円徴収されましたが、燃料費調整金で相殺されておりました。ところが、燃料費の高騰の影響でしょうか、2022年2月からは燃料費調整金も徴収側に転じました。そのため、再エネ賦課金で26,270円、燃料費調整金で10,892円が徴収されております。

2022年3月の電力危機以降、政府は恒常的に節電(省エネ)を家庭に求めました。そこで私は洗濯の乾燥機能と食洗器の使用をやめ、エアコンの使用も極力控えました。その結果、6月以降でおよそ20~25%の使用量削減ができましたが電気料金自体は前年同月と同程度で推移しております。(図3の通り)

要するに、政府の「節電要請」に真面目に応じた人であれば、2割程度は節電したはずですが、燃料費の値上がりで節電効果は帳消しとなりました。

玉木代表の説明と甘利議員の反論

ここで、先に言及した「日曜報道 THE PRIME」に戻ります。

新聞系メディアによれば、番組内の玉木代表の発言は以下の通りです。

玉木氏は、電気の月額支払い料金に含まれる再エネ賦課金の徴収停止することを主張し「再エネ事業を推進するために電気代に上乗せして取っている賦課金なんですけれども、ドイツもこの7月1日から廃止した。で、日本だと大体個人の電気代に12%、産業用事業用だと16~17%がこの再エネ賦課金なんですよ。これを取るのをやめて直接下げるということをやれば、今2000円くらい上がっていると言いましたけど、家庭用だと1000円くらい下がりますから、ぜひやってもらいたい」と言い、「今、一部で、補助金を石油元売り各社に出したように、電力会社に補助金を出してやるっていうことをいっているんですけれども、これは間接的なので、直接下げるためには再エネ賦課金を取るやめて(ママ)、ある種、減税的に下げると。これが一番いいと思う」と自身の考えを政府に提案した。

国民民主・玉木代表 政府の電気代抑制策に「再エネ賦課金を取ることをやめれば家庭用で1000円下がる」 - スポニチ Sponichi Annex 芸能
 国民民主党の玉木雄一郎代表が9日、フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」(日曜前7・30)にリモート出演。政府が総合経済対策の柱となる電気代の抑制策を巡り、電力会社に補助金を投入して料金を引き下げる方向で検討していることに言及した。

これに対して、自民党の甘利議員は、

  1. 「一層の値上がりが見込まれる中、その程度で国民が満足できるか」
  2. 「法など手続き面の困難さ」
  3. 「たくさん使う程還元が多い逆進性」

などを理由にあげ、「電力会社に補助金を出すことで電気料金高騰を緩和する」手法を肯定的に説明しておりました。

しかしここで橋下徹氏(番組コメンテーター)が、

消費者に直接効果があるやり方があるべき姿、ガソリンの補助金も財務省の調査によれば、値下げに使われず、一部経営改善に使われているという調査結果もある。そうなっては良くないので、消費者に直接向けられるようにやってほしい

と甘利議員に反論しておりました。

むすび:甘利議員の説明よりも玉木代表の説明に軍配

甘利議員の説明(自民)では納得できませんでした。玉木案の方が良いと感じます。特に「逆進性」という説明は残念に思います。

上記番組における玉木代表・甘利議員・橋下氏のやり取りに対して、いくつか事実に照らして指摘します。

  1. 四人家族の世帯では月額1,000円程度ではすまず、平均すると2,000円近くなるだろう。事実、私は(直近一年間)平均月額2,189円、年間で26,270円になっている。
  2. 「逆進性」はあまりに現実と乖離した表現ではないか。「富裕層」ほど太陽光発電パネルなどを設置でき、売電なども考慮すれば恩恵に浴している傾向があるのではないか。子育て世帯などは時間の節約や勉強支援でやむなく大量に電力を使用している事情なども認識して欲しい。
  3. 燃料会社への補助は、私たち一般消費者段階では、どれくらい効果があったのか、全くわからない。同様のやり方では「消費者支援が電力会社補助の出汁に使われていないか」検証のしようがない。
  4. 再エネ発電賦課金徴収停止に加え、仮に燃料費調整金までカバーされれば、明瞭にわかる上に金額面でも大いに助かる。下記図4の通り、燃料費調整金は新たに大きな負担となっている。
  5. 燃料費調整金を補助しないなら、その額を最小化するために、原発再稼働の一層の促進を図ってほしい。

実際の明細から筆者が集計

今回、国会やテレビ番組において、国民民主党の考え方と行動がよく伝わってまいりました。自民党との違いも明瞭に伝わり、判断しやすかったのも良かった点です。

結論として、冒頭で言及した「再エネ賦課金徴収停止に向けて、国民民主党は再生可能エネルギー特別措置法の改正案を今国会に提出する」という計画が事実ならば支持します。マスメディアも巻き込んで、大いに議論して前に進めて頂きたいと考えます。