国家運営は異様に難しい時代:それにしても酷すぎるトラス英首相

明石の泉市長が辞任を決意したようです。地元の方はいろいろ意見があるのでしょう。泉市長の功績は素晴らしかったと思います。一方でメディアに出ていた泉市長は格好良くなかった、それが外部の人間の正直な意見です。彼は少子化対策がうまくいってメディアにちやほやされて手のひらの上でコロコロされ、器の小ささを見てしまったのです。議会で問責されて「切れる!」のは自身の傲慢さと肝の小ささとも言えなくもありません。マラソンに例えるなら20キロまで独走しながら完走できなくなった落とし穴ともいえそうです。

では今週のつぶやきをお送りします。

イベント通過後も耐えざるを得ない投資家たち

11月1-2日のアメリカFRBの定例金融政策会議に向けて重要な指標となる消費者物価指数が発表になり、総合が8.2%、コアが6.6%と事前予想を若干上回ったことで専門家は同会議で0.75%の利上げは既定路線、更に今年最後12月も0.75%のダメ押しもありうるという予想に転換してきました。ではなぜ、木曜日のアメリカ株式市場は爆上げしたのか、と言えばイベント通過でもう2週間は安泰だという安堵感でした。それは金曜日の朝まで夢見心地でしたがその後は再び現実に引き戻されてナスダックは終値ベースで安値更新となりました。

お前のインフレ予想は外れたな、と言われれば素直に認めますし、利上げもピークアウトと言ったのもそんな甘いものではないとお叱りを受けそうです。が、経済は利上げしてもまだ頑強、失業率もインフレもびくともしないというのが本当かどうかはタイムラグを考えると果たして本当に今の政策が良いのか、今だ疑問視しています。コロナが収束し、ようやく外に出られると思いきや、今度は物価高で再び「おうち生活」にひきもどされ、外食も旅行もできず、じっと家で我慢、しかもコロナの時は政府からお金が落ちてきたけれど今度はエネルギー高で吸い取られると思えばあの時はまだよかったと思いかねない状況です。

そういえば株というのは儲かると自慢したがるものでそんなコメントも1年前にはチラチラ見られたものです。それが今では「株の話は見たくない、聞きたくない、触りたくない」の三拍子そろい踏みで「今回の漬物は浅漬けで終わって欲しい」と思う個人投資家からの怨嗟の声も聞こえてきそうです。私は早い時期から現金化を進めていて3割は売却済みで今年あと1-2割は売却する予定です。とりあえずは11月に底打ちをするのか、さらに下落を重ねるのか、なんとも判断しにくくなってきたというのが正直なポジショントークです。

英国首相の迷走

リズ・トラス氏が英国の首相に任命されたのが9月6日。首相としてデビュー後、エリザベス女王の国葬という大舞台となったけれど弔問外交の話題はほとんど出ません。トラス氏の手腕も不明な状態で9月23日に大規模経済対策を発表し、大炎上します。英国ポンドが対ドルでパリティ(均衡)に近くなるまで売られ、イングランド銀行が必死の防衛策でブレーキとアクセルを両方踏み込むドタバタとなったのは記憶に新しいところです。そして昨日はこの騒動は財務大臣のせい、と言わんばかりで「これでクビを挿げ替えたからもういいでしょ!」とさっさと記者会見場を後にしました。

一応他国の首相なので敬意を表し、あまり過激なことは書きませんが、それにしても酷すぎる、というのが私の正直なところです。このクビにした財務大臣はトラス氏の盟友。「私はクビになった、だけど一議員として今後も首相を支援する」なんて普通は言えない言葉です。当然ながら首相早期退任論は既に出ており、就任1か月ちょっとでこれほどくちゃくちゃにした首相も珍しいと思います。問題は英国はそれでも世界に影響力を持つ国だけにこの失態は世界に様々な形で影響を及ぼすということ。そして英国国民がポピュリズムに訴えてもそんなに良いことはないことを証明してみせたわけです。

社会が複雑化し、国家運営は異様に難しい時代となりました。世界の指導者をみても誰一人盤石な感じは見受けられません。日本ではあまり知られていませんが、イランの女性のスカーフ着用死亡事件は本国だけではなく、世界に広がるイラン人コミュニティをたきつけ、大問題になっています。習近平氏を堂々と批判する北京の声が話題になっているし、ブラジルでは大統領選が決戦投票待ちで国を二分しているし、イタリアでは極右政権誕生で私の顧客のイタリア人は「ファシストなんて絶対に許さない」と息巻いています。ロシア、インフレ問題と共に国家運営と世論の圧力が今後、世界をより混とんとさせるのでしょうか?

トラス首相 同首相SNSより BruceStanfield/iStock

なぜ、今?「日本アムウェイ」の半年取引停止命令

「アムウェイ」は割と多くの方が何らかの形で記憶があるのではないでしょうか?私はあります。確か、大学生の頃に知人の紹介で小遣い稼ぎをしないか、と誘われ、甘言にのって説明会に行ってしまったのです。そこで初めて洗剤を介して販売する仲間を増やすねずみ講型ビジネスというものをみます。90年代には、バンクーバーにアムウェイ軍団数千人が飛行機3機をチャーターしピストン輸送してやってくると地元新聞に大きく取り上げられたこともあります。

今回、何が起きたのか、毎日新聞には「消費者庁によると、社名や目的を言わずに勧誘した▽目的を告げずに誘った相手を密室に連れ込んで勧誘した▽相手の意向を無視して一方的に勧誘した▽契約締結前に書面を交付しなかった――という4種類の違反を確認した」ために半年間取引を停止させる命令を下したというものです。私はこの報道をみてピッときました。同じ思いの人も多いでしょう。それは旧統一教会問題です。

宗教名や目的を告げず、信者が多くいる場所に連れ込み、相手の意向を無視するかわりに洗脳し、当然、契約書もなくお布施という名の高額のツボを売るという4種類の怪しいビジネスをしているということです。宗教団体とは信仰の自由という隠れ蓑を巧みに使った一種のビジネスであることは言うまでもありません。先日申し上げた「パーパス経営」そのものです。パーパスは存在意義という意味ですから儲けなくても世の中に影響力を与えることもそれは目的になります。アムウェイも結局、特殊なコミュニティを形成しているのでしょう。これを断ち切るのは現代社会では難しいのかもしれません。

後記
私は今日、日本を発ちますが、あまりの忙しさに結局、靴下一足すら買いに行く時間がありませんでした。早朝から昼過ぎまでは机から一歩も動けず、夜は外食続き。次回こそはもう少しゆとりあるスケジュールになればよいといつも同じことを思いながら旅立ちます。でも61歳になってまだ活躍できるところが多いだけでも幸せなのかもしれません。未だに興味は尽きず、体力は衰えずというのは大事なことですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月15日の記事より転載させていただきました。