日本の石炭火力発電が「黒煙モクモク」と思っている人のために

世界に誇る日本の技術・石炭火力発電所の大気汚染物質除去装置

日本の石炭火力発電は「黒煙モクモク」で環境破壊じゃないの?という皆さんがなんとなく感じている印象を正しい知識を身につけて、エネルギー政策を民主的に判断するときのバイアスを克服するというお話です。

CO2は温室効果で地球の温度が上がる「地球温暖化」に影響があるということで目の敵にされています。世界の3%ぐらいCO2を排出している日本が、多くの費用をかけて2050年までにCO2排出ゼロを達成できたとしたら、地球の温度は0.01℃下がるそうです。

2050年CO2ゼロでも、0.01℃も下がらないし豪雨は1mmも減らない

2050年CO2ゼロでも、0.01℃も下がらないし豪雨は1mmも減らない
2050年にCO2をゼロにすると宣言する自治体が増えている。これが不真面目かつ罪作りであることを前に述べた。 本稿では仮に、日本全体で2050年にCO2をゼロにすると、気温は何度下がり、豪雨は何ミリ減るか計算しよう。 すると...

その日本のCO2排出をゼロに達成させるためには、CO2を出さない核反応による熱で発電する原子力発電がベストで、再稼働を急いで、既存の原子力発電所の再稼働と運転延長、そして新しい原子力発電所の建設が急務です。

ところで、世界に対する日本の地球温暖化防止に関する貢献は、本当に0.01℃下げるだけで良いのでしょうか?折角の技術立国日本には、世界からもっともっと貢献してもらいたいという期待があるように感じています。

そこで登場するのが、日本発のイノベーション、超々臨界圧石炭火力発電です。
超々臨界って何?という易しい解説は、以下の過去の動画記事をご覧ください。

高効率の日本の超々臨界圧石炭火力発電(USC)の「超々臨界」って何?

この高効率の超々臨界圧石炭火力は「エネルギー不足あるいはエネルギーバランスを安定化させることで人々の生活が困窮している途上国の人々を助け」て、そして「地球全体のCO2排出量も現在実現可能な範囲で低減する」という一石二鳥の技術です。日本が世界に対して貢献できる希望の技術なのです。

ところが、日本や世界には、石炭火力はけしからん!という人が多数存在しているようです。そしてメディアで石炭火力が紹介されるときは、煙突からモクモクと煙が出ている写真が多用されているように思います。よく観ると、それらは黒い煙ではなく、白い煙ですが、人々の石炭火力のイメージは「黒煙モクモク」だと感じています。

当然、義務教育の理科の授業で習った通り、CO2は「大気汚染物質」ではなく、人体や動物には無害です。無害と言うよりは、植物にとっては光合成に必要ななくてはならない気体です。作物の成長を促すためにビニールハウスでCO2を供給している農家もあるようです。

二酸化炭素発生装置でハウス栽培の収量不足を解消! CO2発生装置の方式や効果、導入方法を解説

石炭火力で問題となるのは、ずばり、大気汚染物質(煤塵)の放出です。その物質とは、

SOx:硫黄酸化物(ソックス)。一酸化硫黄 (SO)、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)(SO2)、三酸化硫黄 (SO3) など。

1960年代から1970年代には、石油や石炭を燃やすときに排ガス処理装置をつけていなかったため、産業活動の活性化に伴い硫黄酸化物が大量に排出され、大気汚染の原因となった。特に三重県四日市市のコンビナートでは、四日市ぜんそくとしても知られる公害病が発生し、社会問題となった。

NOx: 窒素酸化物(ノックス)。一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、三酸化窒素(NO3)、亜酸化窒素(一酸化二窒素)(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素(N2O4)、五酸化二窒素(N2O5)など。

二酸化窒素(NO2)自体は中性で肺から吸収されやすい赤褐色の気体または液体。細胞内では二酸化窒素は強い酸化作用を示して細胞を傷害するので、粘膜の刺激、気管支炎、肺水腫などの原因となる。

PM2.5:ススや燃えかすに含まれる微小粒子状物質。成分は炭素成分、硝酸塩や硫酸塩、ケイ素やナトリウム、アルミニウムなどさまざま。

PM2.5は粒子が非常に細かいので、気管支や肺の奥までみ、ぜんそくや気管支炎など呼吸器系の病気のリスクを高める。不整脈など循環器への影響も心配されている。

そして、色々なところで、この石炭火力による健康被害が報道されています。
例えば、ヨーロッパでは、

「石炭火力の粉じんによる死者、EUで年間2万3000人」

石炭火力の粉じんによる死者、EUで年間2万3000人
【7月5日 AFP】欧州連合(EU)域内で、石炭火力発電所から排出される微粒子を肺などに吸い込んだことに関連した死者が年間約2万3000人に達することが5日、NGOの報告書で明らかになった。

J-PowerのHP「日本の石炭火力発電所はクリーン」によると、

日本の石炭火力発電所はクリーン | もっと知ってほしい石炭火力発電 | J-POWER(電源開発株式会社)
日本の環境技術は世界トップクラス、大気汚...

「日本は高度成長時代には大気汚染が深刻な問題でしたが、過去40年以上にわたり環境対策技術や効率的な燃焼方法を開発するなど環境負荷を低減する努力を行ってきた結果、世界の石炭火力を牽引する存在となりました。

今日、石炭火力の煙はきちんとした浄化処理を行ったうえで大気中に放出されています。つまり“黒い煙”どころか、ほとんど何が出ているか見えない状態なのです。」

ということで、日本の超々臨界圧石炭火力から出る大気汚染物質はほとんどゼロといって良いレベルになっています。日本の小中学生の多くは、社会科見学で日本の超々臨界圧石炭火力発電所を見学してすでに知っていることですが、大人は過去のイメージに引っ張られて、まだ知らないかもしれません。

それぞれの大気汚染物質をどうやって除去しているのかは、以下の三菱重工のHPに詳しく載っているので、ぜひ大人の皆さんはそれらの仕組みを勉強されると、人生がより豊かになると思います。「排煙脱硫装置」「排煙脱硝装置」「集じん装置」は日本の世界をリードする技術であることは、もっともっと世界中の人々が知っておく必要があると思います。

SOx: 排煙脱硫装置

三菱重工業株式会社 パワー事業 | 排煙脱硫装置
/**/大容量処理に対応105万kW最大入口SO2濃度80,000 mg/Nm3世界最高レベルの性能99%の脱硫率安定運転に貢献高信頼性排煙脱硫装置は、ボイラー排ガスから二酸化硫黄(SO2)を取り除き、浄化するための装置です。三菱重工は脱硫方式の中でも低コストで大容量の処理が可能な石灰石・石膏法と海

「排煙脱硫装置は、ボイラー排ガスから二酸化硫黄(SO2)を取り除き、浄化するための装置です。三菱重工は脱硫方式の中でも低コストで大容量の処理が可能な石灰石・石膏法と海水法をラインアップし、大気汚染防止に貢献しています。」

NOx:排煙脱硝装置

三菱重工業株式会社 パワー事業 | 排煙脱硝装置
/**/大容量処理に対応105万kW世界最高レベルの性能脱硝率95%以上環境負荷低減低残留アンモニア脱硝触媒高信頼性高耐久性排ガス中の窒素酸化物(NOx)をアンモニア(NH3)を用いて触媒の働きにより無害な窒素(N2)と水蒸気(H2O)に分解します。このプロセスにおいて、有害な副生物は発生しません。

「排ガス中の窒素酸化物(NOx)をアンモニア(NH3)を用いて触媒の働きにより無害な窒素(N2)と水蒸気(H2O)に分解します。このプロセスにおいて、有害な副生物は発生しません。脱硝触媒を用いた脱硝装置はメンテナンスが容易であり、安定した運転が可能です。」

PM2.5: 集じん装置

三菱重工業株式会社 パワー事業 | 集じん装置
/**/大容量処理に対応105万kWESP出口最低煤じん濃度乾式:≦10mg/m3N湿式:≦ 1mg/m3N高抵抗煤じん対策移動電極方式パルス荷電ESP高信頼性電気集じん装置(EP:Electrostatic Precipitator)は、火力発電プラントや製鉄プラント、各種産業用プラントなど、幅広

「電気集じん装置(EP:Electrostatic Precipitator)は、火力発電プラントや製鉄プラント、各種産業用プラントなど、幅広い分野での大気環境の保全に貢献しています。」

そして、磯子の超々臨界圧石炭火力発電所の見学動画は、全ての日本人必見だと思います。

ニッポンの火力発電がスゴイ!石炭・LNG発電の最新技術【2/2】

豪州政府支援のニューコロンボ計画の解説は以下の動画をご覧ください。

【オンライン授業-17】新コロンボ計画(ニューコロンボプラン)体験記(その1)2017年編

【オンライン授業-18】J-POWER若松総合事業所で石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の凄さに豪州工学部学生達も度肝を抜かれる。新コロンボ計画体験記(その2)

動画のノギタ教授は、豪州クイーンズランド大学・機械鉱山工学部内の日本スペリア電子材料製造研究センター(NS CMEM)で教授・センター長を務めています。