中間選挙後に待ち受けるバイデン弾劾?

度重なるスキャンダル、辞任劇に絶えなかった前任者とは違い、中間選挙後を間近に見据えたバイデン大統領はここまで政策面以外での大きな追求を受けずに来ている。

トランプ前大統領は2018年の中間選挙前後において、既に主要閣僚である国防長官、国務長官が既に一人ずつ辞めており、事務方にあたる安全保障補佐官, 首席補佐官は二人ずつ代わっていた。また、2018年の中間選挙中、トランプ氏は自身が当選した大統領選におけるトランプ陣営とロシア政府との共謀の有無を明らかにするための連邦調査のまっただ中にいた。

一方で、バイデン氏の場合、現時点で主要閣僚含めた政府高官は報道官のジェン・サキ氏を除いては辞めていない。また、バイデン政権はトランプ政権と比べてホワイトハウスからの情報漏洩が極めて少ないという特徴がある。アフガニスタン撤退、インフレ対策など政策面における失態に批判を集まるものの、バイデン氏個人の不祥事と比べると批判の度合は小さい。

しかし、共和党が下院を奪還することがほぼ確実視されている今、これまで見落とされがちだったバイデン氏の次男ハンター・バイデン氏に関連するスキャンダルが今後のアメリカにおける政局を左右する様相を帯びてきている。

崩落したFern Hollow 橋で演説するバイデン大統領 同大統領Fbより

ハンター・バイデンがトランプ弾劾を誘発

10月7日、ワシントンポスト紙は現在進行中の連邦調査によりハンター氏を刑事訴訟するだけの十分な証拠が出てきていることを報じた。同紙はによると、元々ハンター氏に対する調査は彼が顧問を務めていたウクライナ系企業ブリズマとの取引の合法性を検証する目的で始まった。しかし、調査を進めていくうちに、ハンター氏の脱税、銃の違法購入などの問題が特に違法性の高いものだと見なされ、その二つを軸に刑事訴訟をされる可能性が高まっているとも報道されている。

現職大統領の息子が仮に刑事訴訟され、有罪が確定すれば、それだけで政権の基盤を大きく揺るがす事態である。加え、ハンター氏への注目が集まるにつれて再燃することが予測されるのがバイデン大統領がハンター氏の国外でのビジネスに与えた影響、それから得た利益の有無についての疑惑の検証である。

ハンター氏の国外ビジネスをめぐる疑惑といえば、前述したブリズマとの関連性がこれまで最も追求されてきた。トランプ大統領の一回目の弾劾に直結した元々の理由はトランプ氏がハンター氏にかけていた嫌疑が要因のひとつとしてあった。ハンター氏が前述したブリズマから報酬を受けていたと同時期にオバマ政権のウクライナ政策だったバイデン氏はブリズマの汚職を追求していたとされる検察官を解任するために圧力をかけた。

バイデン氏の圧力の背景にはハンター氏を守る思惑があったと認識したトランプ氏は自身の政敵だったバイデン氏を失脚させることを名目に、ゼレンスキー大統領にバイデン氏とハンター氏の調査を武器支援の見かえりとして要求した。このトランプ氏の要求は職権乱用と認識され民主党からの弾劾訴追を誘発した。

つい最近まで、バイデン父子とウクライナ企業の問題に関してはほぼ解決された問題として筆者は見ていた。そもそもバイデン氏が介入を要求した検察官は欧州諸国からも解任を求められており、解任された当初は共和党もこの出来事について大きな関心は払っていなかった。また、一回目の弾劾を通してこの問題は検証されたが、結果的にはバイデン氏がブリズマから便宜を図ったという明白な証拠は出てきていない。

しかし、ニューヨーク・ポスト紙の報道に端を発する新たな発見は、バイデン父子のウクライナ疑惑について未検証な部分があることを示した。

2020年の大統領選の直前、ニューヨーク・ポスト紙は入手したハンター氏のパソコンの中身を検証する記事を発表した。その中からハンター氏自身の羞恥さらす画像や動画に加え、ハンター氏がバイデン氏をブリズマの幹部と面会していたことを示唆するメールの文書を発見した。バイデン氏のブリズマ社幹部との面会は、同社を調査していたとされる検察官が解任される一年前の出来事であった。

ニューヨーク・タイムズ紙やワシントンポスト紙などといったリベラル系のメデイアは、NYPの記事の内容が「未検証」だとしていたが、現在では信ぴょう性を認めている。

バイデン弾劾で最も損をするのは下院共和党?

共和党のトランプ派議員は上記で示してきたハンター氏をめぐるバイデン氏の不祥事を理由にバイデン氏を弾劾すると息まいている。

米国下院では既に14本の弾劾決議案が共和党側から提出されている。この14本のうち、マジョリー・テイラー・グリーン議員はハンター氏の疑惑をもとにバイデン大統領の弾劾を求める動議も含まれている。また、バイデン氏だけではなく、トランプ氏のフロリダ州の邸宅を家宅捜査を指示したガーランド司法長官に対するものも含まれている。

現時点では民主党下院の多数派を占めているため、上記の決議案のいずれも採択されることはない。だが、もし共和党が下院を奪還すれば、新たに下院議長に就くことが目されているケビン・マッカーシー議員は実際にその決議案を採決に動くか否かの難しい決断に迫られる。

これまでの弾劾裁判を通じて、弾劾される側より、弾劾をする側の評価が下がるという傾向が見られる。1998年のクリントン氏への弾劾訴追の動きは、有権者に過度な追求だと認識され、逆にクリントン氏の支持を上げ、同年の中間選挙での民主党の議席増加に貢献した。また、トランプ氏の支持率が最も高かったときは一回目の弾劾裁判の佳境に入っていた時だった。

マッカーシー氏自身も弾劾裁判は有権者からの支持を得られないと認識を示しており、バイデン弾劾に踏み切る可能性は低いと言明している。

しかし、党内の急進的な勢力の要求を呑まなければ自身の立場も無いこともマッカーシー氏は理解しているはずだ。彼の先輩にあたる、ジョン・ベイナー元下院議長とエリック・カンター元共和党下院のナンバー2は緊縮的な財政政策、強固な国境管理政策を求める党内の強硬派の抵抗にあい、失脚の憂き目を見ている。それを間近に見ていたマッカーシー氏にとっては引くも地獄、引かざるも地獄といった心境であろう。

もし共和党が下院を奪還すれば、バイデン父子の疑惑を含め、徹底的な調査に着手することが予測される。だが、その追求が弾劾訴訟にまで発展することについては共和党幹部は有権者からの反動を恐れ回避したいはずではある。だが、急進派からの要求を断れば、党内内戦が勃発する恐れがあり、議会の多数派を占める共和党が機能不全に陥っているという認識を有権者に与えかねない。

そうなれば、2年後の大統領選、議会選挙で有権者が共和党からそっぽを向く懸念も生じてくる。

これから追求が強まっていくだろうバイデン父子の疑惑は以外にも民主党ではなく、共和党を不利にする政局の材料になるのかもしれない。