異常な超過死亡の原因はコロナかワクチンか「引き金」か

池田 信夫

8月の人口動態統計(速報)が発表された。死亡数は前年比13.6万人の増加で、昨年を約1.8万人も上回る。毎週約4000人。これは今年2月のピーク時とほぼ同じである。

人口動態月報(厚労省)

超過死亡数は7月末までしか出ていないが、平年とあまり変わらない。8月は超過死亡数も大きく増えると思われる。

超過死亡数の推移(国立感染症研究所)

このトレンドはコロナ死者数とほぼ同じだが、コロナ死者(速報)は8月のピークでも毎週約1600人。死亡数の増加はコロナ死者数の2.5倍である。コロナ以外の1万人の増加は、何が原因なのか。これについての説明は、いくつか考えられる。

1.コロナによる医療の逼迫

厚労省の公式の説明は、コロナの間接的な影響で他の病気の死者も増えたというものだ。医クラも「医療提供体制の逼迫」が原因だと主張しているが、その意味がよくわからない。

2月と7月にコロナ陽性が急増したことは事実だが、人工呼吸の実施件数は次の図のように超過死亡よりはるかに少ない。コロナの流行から2年たち、病院の受け入れ態勢も整っている。

人工呼吸の実施件数(ECMOネット)

これは人工呼吸を実施するコロナ肺炎が少なかったことを示している。基礎疾患が悪化して死亡したケースが多いので、人工呼吸を受けなかった死者が多いという説明も成り立つが、東京都の病床使用率は8月のピークでも58%である。

東京都の病床使用率(NHK)

死者がPCR検査で陽性だと、速報ベースでは「コロナ死」として扱われるので、過大評価になる傾向があるが、今年の特徴は過大評価されたコロナ死者数より超過死亡数のほうがはるかに多いことだ。

2.ワクチン接種

コロナ説の弱点は、なぜ2月と7月にコロナの流行が始まったのかが説明できないことだ。2月はインフルエンザも流行する季節だが、8月にそれ以上の死者が出たのはなぜか。これはワクチン説に従うと説明できる。森田洋之氏によれば、7月にワクチンの第4回接種が始まったことが、コロナ第7波のきっかけだ。

ワクチン接種回数とコロナ死者数(仁井田浩二氏)

今年は相関が明らかだが、昨年は相関がほとんどない。第3回接種と第6波のピークが3月初めで一致しているのはおかしいが、第8波のピークは第4回接種より1ヶ月ぐらいずれたので、ワクチンが原因と考えることもできる。

3.救急医療がパンクした

最大の謎は、超過死亡数がコロナ死者数を大幅に上回っていることだ。仁井田浩二氏のように「報告されたコロナ死の4倍の隠れたコロナ関連死があった」と考えると、昨年以降のデータはきれいに説明できるが、その中身は何だろうか。

コロナ死者数と超過死亡の推移(仁井田氏)

これはコロナ肺炎の死者ではなく、普通の風邪(上気道の炎症)のウイルスであるオミクロン株の感染が、死期の近い高齢者の基礎疾患が悪化して死亡する引き金になったと考えることもできる。

今年前半にもっとも増えた死因は老衰であり、これは延命治療が打ち切られたことを示唆している。それ以外にも心不全や脳内出血など、緊急搬送の必要な病気が多い。不慮の事故(転倒や溺死)が多いのも、自宅で起こった事故に救急車が間に合わなかったと思われる。

今年1~5月に増えた死因(人口動態月報)

コロナが原則入院になっているため、病院が発熱外来に殺到する軽症患者に対応しているうちに、本当に危険な患者への救急対応が遅れたのではないか。ワクチンが引き金になったことも考えられる。

ワクチンとの相関は偶然か

ワクチン接種とコロナ流行の時系列は必ずしも合っていないが、今年の第6波と第7波は、ワクチンとまったく無関係とは考えにくい。ワクチンはコロナの重症化を防ぐもので、その感染は防げない。特にオミクロン株は症状が軽いので、感染した無症状の人が他人に(知らない間に)うつしてしまう可能性がある。

ワクチンの(重症化を防ぐ)メリットはあるが、それが(基礎疾患を悪化させる)リスクとどっちが大きいかは、先験的にはわからない。ワクチン接種と同時に起こった異常な超過死亡は、予想外のリスクを示唆している。客観的データにもとづく費用対効果の冷静な評価が必要である。

特にコロナが2類以上の扱いになっているため、無料の発熱外来に患者が殺到し、緊急搬送などの対応を大きくゆがめた。コロナの感染症法上の分類を改め、ワクチンも含めて3割負担にすべきだ。救急車も有料化し、医療資源の配分を効率化する必要がある。