殺害予告を書き込める無法地帯ヤフコメに存在意義はあるのか?

NY州司法試験合格した小室圭氏
NHKより

秋篠宮の長女、眞子さんと結婚した小室圭さんが、ニューヨーク州の司法試験に合格したとの報道があった。各社とも合格を祝福する報道が目立った。渡米前は多くのメディアで批判を展開していたはずである。このような手のひら返しの報道には強い違和感を覚える。

2017年12月、小室さんの母親に借金トラブルがあると報じられ、宮内庁からは結婚延期が発表された。それ以降、小室圭さんは一般人にであるにも関わらず、過熱した報道が目立った。誹謗中傷や破談を目的としたような心無い報道も見られた。

結婚を容認すべき理由

私はこれまで、「眞子さま、小室さんの結婚を容認すべき」との主張を2019年2月から繰り返してきた。その根拠として次の3つをあげた。

(1)天皇陛下の裁可(許可)を撤回できるのか
(2)宮内庁のミスについてなぜ問わないのか
(3)破談した際の慰謝料・違約金やリスクを考えているのか

(1)について
裁可とは戦前の旧皇室典範で定められていたもので、現皇室典範には規定はないものの慣例として残っている。裁可とは勅命の裁決を意味した。今回、「裁可」を公表した後に上皇陛下は退位された。そのため今上陛下は上皇陛下の裁可を取り消すことができない。上皇陛下はすでに退位されているため、過去に裁可した詔に触れることはない。裁可している以上、撤回は困難であると考えた。

(2)について
「週刊女性」2016年11月1日号で「眞子さま、ガッチリ体形のイケメンと横浜デート後に東横線でラブラブなご様子」とお二人のデート姿と宮内庁の皇宮護衛官が確認されている。皇宮護衛官は皇族の外出の際には同行して警護を行うため「身体検査」は可能であり、情報を共有していた可能性も高い。しかし、結果的に事態を収拾できなかった。大火を招いた宮内庁の責任についてはあまり報じられていない。

(3)について
リスクとは多額の慰謝料のことではない。秋篠宮家や皇室の内情を含めた情報が公にされるリスクである。事実、英王室ではメーガン妃の暴露本が大きな問題になっている。

当時、各メディアは、出自や家族のこと、キャリアを否定し、ニューヨーク州弁護士資格を取ったところで米国で弁護士として活躍することは困難だという報道をおこなった。眞子さまの一時金をあてにして使うとか、夫であることを利用して、金集めをして食いつないでいく……などの誹謗中傷も目立った。

本来、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する。民間人の小室さんの基本的人権は最大限保障されるべきものだったことを勘案すれば、結婚は当然の流れだったのである。

殺害予告事件について

2021年10月2日、Yahoo!ニュースに「眞子さま、小室圭さん結婚へ 「妬み」を吐き出すあさましい人たち(オトナンサー)」(現在非公開)が掲載された。その後、記事が炎上しYahoo!ニュースが緊急声明(※1)を発表した。スクリーンショットで保存していたものを紹介したい。

(※1)ユーザーのみなさまへのお願い―コメントの投稿にあたって―

ユーザーのみなさまへのお願い ―コメントの投稿にあたって― 
いつもYahoo!ニュースをご利用いただきありがとうございます。 10月1日、Yahoo!ニュース コメント投稿数が急増しました。その中には、不適切な内容も散見されたため、記事ページやコメント欄などに...

スクリーンショットでは、コメント数13368件とあるが最終的には2万件を超した。さらに、コメントランキング(1時間)、アクセスランキングも1位となった。1時間に1848件のコメントが書き込まれるということは、1秒弱でコメントが増えることを意味する。記事掲載後、ヤフコメには殺害予告はじめ、言葉にすることが憚られるような文言が並んだ。

すぐに保全してもよかったが、1秒弱でコメントが書き込まれるため膨大な量になったこと。さらにアクセスが集中しページ自体がバグって正しく表示されない(短時間で数百万PVに達したと報告があった)。そのため、コメントの書き込みが収まった段階で保全することを考えていた。しかし、サイト側は、なんら相談なく一方的に記事を非公開にした。

「眞子さま、小室圭さん結婚へ 「妬み」を吐き出すあさましい人たち(オトナンサー)」(10月2日公開)、「眞子さま、小室圭さんにヤフコメ炎上 根底に“妬み”が引き起こす情動のパニック」(9月25日公開)の2本が一方的に非公開措置となった。そのため、事件性の高いヤフコメの保全が困難になってしまった。

殺害予告のみならず、私が研究員として所属する明治大学にも脅迫状が届いた。匿名掲示板に誹謗中傷を目的としたスレッドが乱立したことから、記事の再公開とヤフコメの保全を求めた。

その後、Yahoo!ニュースでは、好ましくないヤフコメを非公開にしたり、炎上した場合はヤフコメそのものを非公開する措置が導入されることになった。おそらく私の事件が契機になったものと考えている。

どのような結果になったのか

元サイトであるメディアヴァーグ(オトナンサー担当の役員)がYahoo!ニュース側と折衝をおこなうものの好ましい結果は得られなかった。次に、中野警察署に被害を報告し事件としての捜査を依頼した。しかし、中野警察署からYahoo!ニュース側に連絡をするも事態が進展することはなかった。

その後、私は、親交のあるYahooの担当者(上位役職者クラス)に調査を依頼した。Yahooの担当者は直接的な窓口でないにも関わらず、社内調査をおこない骨を折ってくれた。無視することも可能だったはずだが真摯な対応に心より感謝している。事件から1年が経過していたこともあり調査が難しいことは想定済みだった。2週間後、次の通り報告がある。

現時点で当該殺害予告をしたコメント自体の画面キャプチャなど特定するための手がかりがない状況では、弊社側も投稿を特定できず、民事・刑事いずれの法令に基づく情報開示請求をしても、投稿者を開示することは難しいと思われます。

もしも、弁護士相談や裁判所へ開示請求を行う場合には、費用だけがかかってしまう可能性がありますことご留意いただければと存じます。

つまり時間切れということだ。Yahoo!ニュース側が、「費用だけがかかってしまう可能性がある」といっていることに対して、次の手段を講じることは難しい。

無法地帯のヤフコメにメスがはいる

2022年10月18日に次のような報道が流れた。「コメント欄における言論空間の健全化を目指すため、コメント投稿時において携帯電話番号の設定を必須化することといたしました(プレスリリース)。ここでは、その取り組みの詳細をご案内いたします」と書かれている。

【重要なお知らせ】コメント投稿における携帯電話番号の設定の必須化について

【重要なお知らせ】コメント投稿における携帯電話番号の設定の必須化について(2022年11月15日更新)
2022年10月にお知らせしましたコメント投稿における携帯電話番号の設定の必須化について、2022年11月15日より運用を開始しました。プレスリリース:Yahoo!ニュース、コメント投稿において携帯電...

無法地帯だったヤフコメにメスを入れようとしている点は高く評価できる。不適切な一部のヤフコメ民は、罵詈雑言を吐き出すことでストレスを発散している。そして、多くのギャラリーに読んでもらうことで承認欲求を満たしている。自分が書いたコメントにイイネが押されるとたまらなく快感なのだろう。なんとも下種で悍ましい光景だ。

極論や行き過ぎた主張、見当違いなコメントが書き込まれることも多いが、下手に反論をすればさらに盛り上がり火に油を注ぐ結果となる。誰もが容易に書き込めることや、追及されないためヤフコメは誹謗中傷の無法地帯と化していた。今後は携帯電話番号の設定が必須になることで健全化がはかられようとしている。

ヤフコメの規制はネットリテラシーの向上と連動していくだろう。Yahoo!ニュースは月間230億PVを叩き出す国内最大のニュースポータルである。しかし、一部のヤフコメ民によって本来の目的が毀損されるとは本末転倒である。個人的には、ニュース社の配信する情報レベルの向上ならびに、Yahoo!ニュースの今後の取組に期待をしている。

【追伸】
これまで、講演やセミナー、著書などにおいて当該事件に関する経過を報告してきた。事件発生後、1年以上が経過してからの報告に納得しているわけではない。私は情報発信をしているため批判や誹謗中傷の対処も心がけているが、それでも殺害予告や多方面への影響はショックがあった。しかし、事態の進展が難しい以上、収束させる以外にはない。今後、Yahoo!ニュースがより健全性の高いサイトとして運営されていくことを強く望んでいる。