ヨーヨー・マ&バッハ無伴奏セロ組曲全曲@フィルハーモニー・ド・パリ

フィルハーモニー・ド・パリ、ようやく今シーズンスタート!

9月に興味あった演奏会はまだ日本にいていけず、10月初旬に行く予定だった演奏会はソリストが体調不良でプログラム変わっちゃったのでキャンセル。ということで、秋も深まった今宵が、個人的演奏会シーズンスタート。

ヨーヨー・マによる、バッハ「無伴奏セロ組曲」全曲。ヨーヨー・マ聴くの25年ぶり~、セロ組曲全曲初体験~♪

本当は、2年前に予定されていた演奏会。2018年にリリースした3度目のこの全曲集録音に合わせて、2年間かけて世界36ヶ所で演奏会を行う”ザ・バッハ・プロジェクト”をスタート。コヴィッドがあったため、パリはようやく今夜開催。

もちろん満員御礼、ステージ席も設置されてる。ここ、一度座ってみたいんだけどなぁ。どのタイミングで販売されるのかわからない。。

熱気と大歓声に迎えられ、笑顔の巨匠が手を振りながら登場。おぉ、オーラが眩しい✨

おなじみの1番プレリュードから始まり、温める感じで1番終了。拍手を経て2番。最後のジーグがものすごい。終わった瞬間、大拍手&大歓声。

ここで巨匠は、横に置いたマイクを取り上げ、”素敵なホールだねー。生まれた街で、君たちパリジャンの前で演奏できて嬉しいな。3番をこの光の街に捧げます”みたいなミニ挨拶。マイク戻す時、ポッケから携帯落とす(笑)。

3番、最初から最後まで素晴らしい。全体的に、自由闊達でテンポよく、朗らか。陽の組曲だ。手元にあってよく聴いていたCDはロストロポーヴィッチで、今は亡き巨匠のセロ組曲はどちらかというと瞑想的。

圧巻の3番に続いて4番も弾き終え、ここでまたミニミニスピーチ。よく聞き取れなかったけど、”失われた人々、何かを失った人々、病気の人々、尊厳を失った人々へ捧げます”みたいな感じだったと思う。そして、言葉通り、悲しみの慟哭と挽歌が広いホールに響き渡る。

たった一本のセロが生み出しているとは信じ難い音の広がりが、ここからラストまでずっと続く。

5番から6番へは、拍手させずに続ける。6番サラバンドのあたりの巨匠はもう、カザルスが憑依した?と思わせるような深さ。希望と人間愛が、ヨーヨー・マのセロには満ち溢れてる。

最後の弦の振動が消える間もなく、怒涛の拍手と大歓声。

2時間ゆうに超えるアントラクトなしの大作を、たった一人で緊張感を途切れさすことなく弾き切る体力と表現力、凄すぎる。もちろん、後半は音がきしんだり音程が少しずれるところもあるけど、そんなの全然問題ない。圧倒的な人間力で大きな感動を生み出してくれ、まるでフィルハーモニーが小宇宙になったみたいだ。

アンコールの「鳥の歌」が、今ほど心に響く時は、ない。

大歓声の中、”もう寝る時間だよ~”みたいなジェスチャーして、陽気な巨匠が舞台袖に消える。

演奏会後、フィルハーモニーのテラスで、ヨーヨー・マと天文研究家が企画してくれた星空鑑賞会。シリウスをはじめ幾つもの星が輝く中、天体望遠鏡で、木星や土星を見せてくれる。

おぉぉ、土星の輪がびっくりするほどうつくしい~。流星群や宇宙ステーションも見えてるのかな?たまーにゆっくり動く光があるけど、飛行機? 天体望遠鏡を覗くの、子供の頃に買ってもらって以来。今夜の超高性能と比べるとおもちゃみたいなものだったけど、買ってもらった時、嬉しかったなぁ。

宇宙も音楽も、果てしなく美しい。人が皆、天空を眺め素晴らしい音楽を聴いていれば(あと、おいしいショコラを食べてシャンパーニュ飲んでれば)、戦争なんてする気なくなると思うのだけれどなぁ。


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2022年10月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。