投資のリスクは、一方では、リスク、即ち損失の可能性だが、他方では、チャンス、即ち利益を得る機会である。つまり、投資は、利益を得る機会に意図的に賭けることとして、チャンステイクなのであり、そこに、意図せざるものとして、リスクが付随するわけである。そして、意図的にとるチャンスとしてのリスクと、意図せざるリスクとは、常に、自覚的に、峻別されていなければならない。
例えば、社債に投資するときは、金利リスクと発行体の信用リスクを同時にとるわけだが、発行体の信用リスク分析に投資のチャンスを見出し、そこから投資の付加価値を創出しようとするのならば、金利リスクは、付加価値の源泉ではなく、リスク計量指標に関して、最小化、既定値への制御、市場平均との一致などの様々な異なる手法があるにしても、厳格な規則の適用のもとで、管理もしくは制御されるべきものとなる。
逆に、金利リスクを付加価値創造の機会とみなすことは、そこに専門的知見があると自負するものにとって、自由な賭けであって、その場合は、信用リスクは管理計測指標に厳格に準拠して制御されるべきものとなるだけのことである。要は、決定的に重要なこととして、何が投資の意図としてのチャンスであり、何がチャンスの実現にとって邪魔なリスクかについて、明確な自覚をもってさえいればいいのである。
一般に、投資運用業においては、付加価値源泉を一つのチャンスに特定して、厳格なリスク管理を行うのが主流である。それは、顧客である投資家がチャンスを選択するという前提になっているからである。逆にいえば、投資家においては、複数のチャンスに賭けているのである。
投資においては、分散投資が重要だといわれていて、分散投資はリスク分散とも呼ばれるが、複数のチャンスに賭けることが分散なのだから、チャンス分散というほうがいい。社債の例に戻れば、信用リスクをチャンスとする投資の思想と、金利リスクをチャンスとする投資の思想を合併させると、チャンス分散された社債投資を構成することができるわけである。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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