本題に入る前に類似する昨年の話題を挙げておこう。
大気汚染が酷い薪ストーブをエコだと売り込む朝日新聞
再生可能エネルギーなら何をやってもいいのか?
● 攻めのアイテム続々?
昨年末、朝日新聞デジタルにこの記事が掲載され、それを紹介する同社記者のツイートをきっかけに、年末年始、薪ストーブだけにまさにSNS上で熱く炎上した。
「廃材でも何でも燃やせる」という。これは一般人に対して大きな誤解を与えるものであり、厳に控えるべき記述である。
捨てればゴミ、それを熱回収するまでは良い。これは過疎地等で近隣に家屋が殆ど存在しない場合や、生活インフラの無い山間地等に限って許容されるものであり、これを市街地や住宅地で安易に真似て廃材燃焼を行い暖を取ることは、基本的に廃掃法に違反となる。
この記事や、「何でもそのまま燃やせる薪ストーブ」との宣伝は誤解を与えるものである。また、大気汚染については例にもれず一切言及されていない。
朝日新聞デジタルの本記事内容については唖然とするばかりであり、筆者は本記事に対してこれ以上の論評を加える気も失せた。
● 本記事を紹介する記者のツイート
当然ながらツイッター民からは反論コメントが多数付けられた。
「薪ストーブは単純にうらやましい。」
と言い、事実として大気汚染が酷い木材燃焼の真実を認識せずに嬉々として推奨するような言説や、煤煙悪臭による近隣住民への攻撃性、カーボンニュートラルに関して燃料となる薪の持続的供給など、技術的諸問題には全く触れず、情緒論で語っていることがツイッター民の批判を買ったと見るべきであろう。
実際に煙害を受けて苦しむ側から、被害者の困惑を全く顧みない酷く一方的な紹介記事である等、また、実情を知らぬのにただ憧れで薪ストーブを賛美するような「ぬるい記事」に対し猛然と論理的な反論を加えられ、カーボンニュートラルや森林破壊に関する面からの反論も加えられ、批判意見が優勢という状態に陥った。
● 記者の姿勢
ここまでの顛末について、大変残念ながら筆者はこの時点ではツイッターに参加しておらず、議論に加わっていない。
それにしても深読み、誤読とは何であろうか。
住宅地にあっては薪ストーブはその煤煙悪臭で単純に隣人を攻めるアイテムである。
大気汚染が酷い薪ストーブをエコだと売り込むNHK
日本の国営放送が不適切な番組動画を公開
さて、ここまでは長い前置きであるが、本稿では、2022年11月4日午前7時より放送された、NHKの朝のニュース番組「おはよう日本」について概要を述べる。
【人気高まる薪ストーブ】と銘打ち、7時16分から20分まで、千葉県八千代市の薪ストーブ販売店から生中継された。
画像引用元:NHK「おはよう日本」2022年11月4日07:16〜07:20放送
● 概要
短時間であったが、放送内容は以下である。
- 昨年比売上が2倍になった
- 震災後、非常時に良いと流行
- カーボンニュートラルである
- 間伐材利用で森林保護になる
- 炎を眺め癒やされる
- コロナ禍影響で在宅ワーク向け
- 郊外でかなり流行している
- 補助金も給付される国策である
- 電気やガスを使用せず暖房費節約に良い
- 近隣住民に対して理解を要求する
このように、「薪ストーブの不都合な真実」にはほぼ触れないでブームを扇動するような報道姿勢は、誠に酷いと言わざるを得ない内容であった。
公共放送局の放送内容としては極めて不適切と言わざるを得ない。
● 本放送の問題点
- 欧米諸国で煤煙が大問題化している事を無視
- 日本国内での薪ストーブによる被害急増を無視
- カーボンニュートラルで環境に優しいと言う
- 売上が昨年比2倍に増加を公表しブームを煽る
- 暖房費節約の手段として推奨する
- 流行しており郊外で流行と煽る
- 近隣に理解を求めるのみで使用者側の配慮は伝えず
- 煤煙悪臭による近隣への迷惑にはほぼ触れず
- 大気汚染や健康被害に関しては一切言及せず
●「NHK おはよう日本 公式」のツイッターアカウント
放送後にNHKの朝のニュース番組「NHK おはよう日本 公式」のツイッターアカウントで以下が投稿されている。
これに対して、薪ストーブの煙害被害者たちから、疑問の声が寄せられている。
エコとの掛け声とは正反対に、現実に大気汚染、環境破壊、健康被害の大きな原因になっている薪ストーブを、公共放送の立場にありながらデメリットを一切伝えず、宣伝販売側の情報のみを根拠に賞賛推奨するのは極めて不公正である。
カーボンニュートラルを言い訳に大気汚染は欧米各地で大問題化している。NHKは安易なブーム煽りの姿勢を改めよ。
欧米諸国で被害増加の木材燃焼暖房
欧米諸国では既に多くの国で住環境における木材燃焼暖房(薪ストーブ、暖炉)による大気汚染と健康被害が増加している。
● 論文紹介
木材燃焼、薪ストーブ暖炉の煤煙の有害性を指摘する多くの研究論文が存在し、人体に有害と指摘されている。
科学的根拠により木材燃焼煙の有害性認識が進むにつれ、豪州やオランダでは喘息患者団体による木材燃焼制限への活動、英国、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー、デンマーク、カナダ、米国など各国内の州や地方自治体レベルで使用禁止、使用制限、クリーンな暖房装置(主にヒートポンプシステム)への置き換えプログラムが各地で実施され始めている。
自治体によっては木材燃焼暖房自体の撤去指示、新規設置の禁止措置までも実施されている。
● 薪ストーブへの憧れと大気汚染
憧れの欧米を真似て、憧れの薪ストーブを次々に増加させた結果がどうなるか。
これは英国の大気汚染状況。
WHOの年間 PM2.5濃度基準(5µg/m3) を超える地域が多い。人口の多い都市部や近郊住宅地での木材燃焼暖房使用がこの主因と判明している。
日本の住宅地で欧州並みの大気汚染拡充を目指す日本政府、薪ストーブ業界、NHKは、大気汚染を推進しそれを【人と環境に優しい】と言うのだろうか。
日本は憧れの欧米を模倣するなら、環境対策として木材燃焼暖房は本来削減の姿勢も欧米を模倣すべきである。
● 豪州での行政府による警告
これは豪州ニューサウスウェールズ州政府EPAによる、木材燃焼煙への警告である。
行政が堂々と有害性を認識していることは、注目に値し、見習うべき姿勢であろう。
ここでは木材燃焼は環境負荷はニュートラルとしているが、そうであっても木材燃焼煙自体は有害物質を放散し近所迷惑であると指摘しているのは注目すべきものである。
薪ストーブは人と環境に過酷な暖房である。
● 欧州では電気乾燥炉で乾燥させた薪の使用が基本
欧米で発展進化した薪ストーブは、乾燥した間伐材燃焼が前提で設計製造されている。欧州では元々乾燥気候ではあるが、伐採された木材は更に電気乾燥炉によって乾燥されてから家庭等に販売される。
薪ストーブの燃焼試験では当然に電気炉乾燥薪が使用され基準クリア認証されている。それでも大気汚染は深刻化している。
乾燥薪は高価であり、代替燃料として廃材や可燃廃棄物の燃焼は欧米にあっても違反行為になるが、それも発覚しなければ、燃やせば証拠は残らないので日常茶飯事だという。
ススとり君homeの装着を強く推奨
筆者は薪ストーブの完全禁止は求めていない。過疎地や中山間地域等、生活インフラの不備な地域での使用に限っては全く問題無いと考える。
薪ストーブや暖炉は、近隣住民の頭上に煤煙悪臭さえ撒き散らさなければ、何の問題も存在しないはずである。排出するCO2に関しては議論の必要は無いと考える。
筆者は当初から一貫して何度もこれを紹介してきた。
薪ストーブの煤煙悪臭問題は、この機器の装着によってほぼ解決できる。僅か100万円である。薪ストーブを設置使用できるような人なら、この程度の費用は取るに足らないものだろう。
たったの100万円で「人と環境にやさしく」なれる。
大気汚染を防止し、多くの近隣住民に憎まれることを防ぎ、感謝される魔法のアイテムであり、今からでも遅くない、速やかに発注し装着されることを強く推奨する。
編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2022年11月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。