チップが無くても「おもてなし」の神対応はいつまで続くのか?

ハワイから帰国しました。日本に戻って最初に感じるのは、飲食店の丁寧な接客です。

ハワイはアメリカの中ではホスピタリティーに溢れた州で、フレンドリーで親切な人がたくさんいます。しかし、やはりチップ文化の国であり、日本とはずいぶん価値観が異なります。

アメリカでは、今や飲食店では会計額の20%程度のチップの支払いが当たり前となっているようです。最低でも15%程度は支払うのが慣習です。

飲食店の接客担当は、自分が担当するテーブルで受け取るチップが収入の大きな比率を占めています(チップの配分はスタッフ間の取り決めがあるそうです)。収入を増やすためには、笑顔でサービスを行い、たくさんの注文を取って、来店者から多くのチップを稼ぐ必要があるのです。だからハワイでは接客スタッフが頻繁に次の注文を聞きに席にやってきます。

日本にはチップの風習はありません。サービス料として一律10%程度の課金を自動的に行うお店が一般的です。

不思議なことに、日本の飲食店ではサービスをしてもしなくてもサービス料がもらえるのに、一生懸命接客を行う人が多いのです。

これは、収入に関係なく良いものを提供したいという「職人気質」から来ているのかもしれません。

お金に関係なく高いサービスを提供しようとするモチベーションは、世界的に見れば稀だと思います。まさに「神対応」なのかもしれません。

日本のシステムの問題は、競争原理が働かず、同じお店で働くと努力に関係なくほとんど同じような給与にしかならないことです。

日本の飲食業で働く人たちの待遇は決して高いとは言えません。収入面での待遇改善には、チップが有効だと思います。高い接客技術で人気を集め、チップを稼ぐ高収入のスタッフが出て来れば、きっと飲食業で働こうという人が増え、人気も高まります。

残念ながら、サービスをお金で買う発想は日本人にはあまり馴染まない考え方です。チップが日本に根付く事は、これからもなさそうです。

このようなサービスのクオリティーに関係なく、一律に課金する方法で良いのでしょうか?

日本人の「職人気質」に支えられたやり方は、外国人労働者が増え日本人の意識が変われば、いずれ行き詰まるのではないかと心配になります。

kazuma seki/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年11月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。