激増する外国人観光客:日本とタイでの大きな違いとは?

激増する外国人観光客

11月10日午後のスワナプーム空港の様子

10月1日、タイでもパンデミックの入国規制が廃止となり、それ以降外国人観光客が急増している。最近のスワナプーム国際空港には1日に5万人以上もの観光客が押し寄せ、特に午後には1時間に20から25便もの国際便が到着するため、空港内は大混雑しているのだ。

実際、筆者の知人も10日ほど前にタイに着いたところ、空港の大混雑で預けていたスーツケースが手荷物受取レーンに出てくるまでに2時間も待たされたということであった。

そんな状況下、タイ政府観光局によれば10月末時点で今年は既に750万人以上の観光客が入国したとのことで、この分だと当初目標であった年内1,000万人も達成できると鼻息は荒い。

また、現地の新聞には日本人は飛行機の切符が買えないのでタイに来るのが難しくなっているという記事も出ていたが、日本に観光に行くタイ人客にタイ航空の切符が先に買われてしまい、日本人にはなかなか回ってこないということらしい。

これに対し、タイ航空もパンデミック以降倉庫で数年間埃をかぶったままになっていた2機のエアバス380を再稼働することを検討し始めたということだが、航空業界もそれほど需給が逼迫しているわけだ。

ちなみに、実は筆者も11月9日の夜、バンコクに戻ってきたのであるが、運よく夜の9時半着の便であったことから、この大混雑を避けることができた。不思議なことに、この時間帯になると空港はガラガラで入国審査もわずか数分で終わったのである。従って、もしこれからタイに来る計画であれば、むしろ夜に到着する便をお勧めする。

外国人の爆買いに沸く日本と期待外れのタイ

こうやって書くと、2019年までアジア最大の観光大国を誇ってきたタイが、いよいよ復権してきたと思えてしまうのであるが、実は現地の観光産業はそれほど手放しで喜んでいるわけではない。

というのも、これまで入国してきた750万人の外国人観光客の内、約500万人はマレーシアを中心とする陸路で来るような近隣諸国からの観光客であり、短期滞在がほとんどで大してお金を落としてくれないというのである。

ちなみに、現時点での外国人観光客のトップ5はマレーシアが128万人で、続いてインドの68万人、ラオスの56万人、そしてカンボジア、シンガポールがそれぞれ4万人弱ということだ。また、滞在期間も2〜3泊がほとんどで、長くてもインド人の4〜5泊ということである。

従って、観光収入という点では、裕福なシンガポールを除けば近隣諸国からの観光客にはあまり期待できそうにない。例えば、2019年には1泊1万バーツ(38,000円)以上もしていた5スタークラスの高級ホテルは稼働率がいまだに低迷していて、今も1泊2,000から3,000バーツの格安レートを余儀なくされているということだ。

やはり、欧米人などの長期滞在型観光客が来てくれないことには、落とすお金も小さくてタイの観光産業界にとっては期待外れというわけである。

一方、日本には陸路で来るような観光客はいないし、欧米人だけでなく台湾やタイからも多くの観光客が来ているが、彼らは滞在期間も長く何しろお金も十分持っている。さらに、今の円安もあって平気で高級ホテルに泊まり、高価な商品を爆買いするのでデパートなどが潤っている。

その結果、この表からもわかるように、パンデミック前には610億ドルの国際観光収入があったタイ、そして460億ドルの日本がアジアの2トップであったのだが、もし今の流れがこれからも続くとすれば、2023年には日本とタイの位置が逆転してしまうかもしれないのである。