投資のリスクは、損失の可能性としてのリスクだが、同時に、利益を得る機会としてのチャンスである。投資は、利益を得る機会に意図的に、自覚的に賭けることとして、チャンステイクなのであり、そこに、意図せざるものとして、リスクが付随するわけである。そして、リスク管理とは、意図せざるリスクの制御のことであるから、投資とは、チャンステイクとリスク管理の複合なのである。
投資の基本は分散投資であり、分散投資はリスク分散ともいわれるが、複数のチャンスに賭けることが分散なのだから、チャンス分散と呼ばれるべきである。また、分散投資は資産配分でもあり、資産とはチャンスを内包したものだから、資産配分はチャンス配分である。
資産の定義として、例えば、社債は債券という資産分類に属するとしたところで、投資の科学には何の役にもたたない。株式にしろ、債券にしろ、そのなかにチャンスを発見し、それを明確に定義することが重要なのである。
例えば、代表的な株式投資の方法論として、割安株投資があるが、それは、一定の評価指標を適用することで、平均値から乖離した属性を割安と定義して、割安さにチャンスを発見するものだから、その先の厳格なリスク管理において、他の指標については市場平均に極力一致させる手法なのである。
また、成長株投資というのもある。経済の成長は必ず産業構造の変化をもたらし、産業構造の変化は必ず企業の成長と没落を伴う。あるいは、より正確には、革新的企業の成長によって産業構造の変化が起き、その結果、少なからざる企業が淘汰と再編に飲み込まれていき、経済総体としての成長が実現するというべきである。ならば、そこには、革新を担う企業群という大きなチャンスがあるのであって、そのチャンスに賭けるのが成長株投資である。
しかし、資産のなかにチャンスを発見するよりも、発見したチャンスについて、チャンステイクする方法を考えるほうが自然である。例えば、誰しもエマージング経済圏の成長のなかにチャンスを求めるわけだが、その意図がエマージング諸国の株式市場への関心を呼び起こすのであって、エマージング株式が先にあって、そこにチャンスを探すわけではない。
ならば、エマージング株式以外にも、例えば、不動産であるとか、先進経済圏の株式市場に上場されている企業群でエマージング経済圏の成長の恩恵を直接に受けるものとか、そういう広く自由な視野でチャンステイクを構成していくはずであって、それが投資の創造性なのである。
■
森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
facebook:森本 紀行