夕刊フジから「岸田内閣は政権のタガが外れているのではないか」「首相の判断は機敏さを欠いている」という声があるがどう思うかという取材を受けた。
「国際基準のスピード感で決断力を発揮した安倍晋三政権と比べれば見劣るだけで、岸田政権は『過去の政権レベルに戻った』だけともいえる。だが、日本を取り巻く情勢は緊迫しており、今の危機管理では非常に不安だ。安倍氏は官房長官の菅義偉氏とのラインで強力なリーダーシップ型の政権運営を行った。岸田首相は、安倍政権の良い部分を真剣に採り入れる必要があるのではないか」と答えたところ、それが記事にもなっている。
実際のところ、安倍内閣(やそれを継承した菅義偉内閣)の仕事のスピード感とか、行き届いたところは、やはり特別だったと思う。それが、一世代で中国の8倍あったGDPを三分の一以下にしてしまった平成のダメ政治にもどったと思えばこれが日本だということなのだろう。
もっとも昭和の政治家が良かったとも思えないが、官僚機構はまともだったし、民間も活力があった。もうそれもダメになったのだから世話ないが、その責任のかなりも政治家にある。もっとも政治家は国民が選んだのだから、国民が悪いと云うことになるのかもしれない。
そんな話をしていたら、与野党メッタ切りにした本を書かないかと小学館からいわれて書いたのが、11月24日発売の『日本の政治「解体新書」: 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)である。
第1章は、「世襲政治家のバカ殿政治と霞ヶ関官僚の無気力で国家の危機」。総理になれるのは、代議士の子で父親が普通より早く死んで若くして議員になったのばかり。安倍さんも岸田さんもそうだ。橋本、小渕、それからなれなかったが小沢一郎も同じ。
海外の大統領・首相は、大体トップクラスの学歴か、そうでなくとも、そういう人としっかり渡り合える人たちであることも明らかにしている。官僚も政治家なにするものぞという気概もない。
第2章は、「左派・リベラル野党はなぜ日本だけダメなのか」「G7で共産党があるのは日本だけ」という話である。保守系与党の支持率が若い世代ほど高いというのは、日本だけだ。どうしてそんなことになってしまったかを戦後史を丁寧に分析して明らかにし、打開策を提案している。
第3章は「創価学会・公明党だけがなぜ成功したのか」。創価学会と公明党の強さの源泉はなにか、どこがほかの宗教と違うのかなどを少しまじめに分析。創価学会が日本一の宗教団体になったのは、単純に優れたところが多いからであるし、会員が満足しなければ維持も出来ないし、信者がいてもそれを政治勢力化できるかどうかは分からない。扱いにくいテーマなので類似のものはあまりないと思う。そうはいっても欠点はあるし、得票数が減っているのにも理由がある。
第4章は、旧統一教会。いまのマスコミの扱いは、つまるところ安倍派を応援していたけしからん宗教といってるだけ。この宗教の本当の問題は、安倍派と関係ないからスルーしている。本当の問題は日本で集めた金にゴルバチョフや潘基文などが群がり、北朝鮮ペースの南北統一など日本にとって不利益な目的に使われていることだ。
第5章は、「大阪から出発した維新の成功と立ちはだかる壁」。「維新の会」の誕生した背景から今日までをできる限り客観的に紹介分析。「左右」でなく改革というキーワードが日本だけでなく世界の一つのトレンドであり政界再編の軸になる合理性はあるが、克服すべき問題がなにかを分析。あわせ大阪副都構想を切り口に東京一極集中がなぜ続くか目指すべき方向性を明らかにする。
第6章は、「安倍政権の通信簿。外交は120点でも内政は75点と思うわけ」。外交に比べて内政については、安倍政権は、世代間格差の解消などに一定の成果を上げたものの、めざましい成功では無かったのは、個別分野ごとのマフィアの抵抗にあった。文部科学省や法務省・検察、マイナンバー制を標的にして厳しく攻撃。
第7章 は「『医者天国』が経済も教育改革もダメにしている」。世界最低の日本の医療界がコロナを大災害にしたし、医者が安全有利な職業であることが、いかに日本の社会全般をダメにしているか、改革案とともに論じる。あわせて「日本人の戦死者はゼロ」への極端なこだわりから来る矛盾について問題提起。
第8章は「ポスト安倍の日本の世界外交と中国・南北朝鮮との展望」は、日本外交の課題の内、中国・半島・台湾をかつて経済産業省の担当課長だった経験ももとに重点に歴史的な経緯を踏まえつつ分析。中国の現実的な民主化の必要性、台湾問題解決についての提案など。
エピローグでは、日本経済についての試論。日本が「魔法のマクロ経済政策」を求めてまじめな経済成長のための基盤づくりを怠ってきたか厳しく糾弾。マクロ経済政策は自分が努力しなくていいから、安直に議論するが、そもそも経済成長をもたらすものではない。
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