投資は、チャンス、即ち利益を得る機会に意図的に、自覚的に賭けることとして、チャンステイクなのであり、そこに、意図せざるものとして、チャンスを攪乱するリスクが付随するわけである。そして、リスク管理とは、意図せざるリスクの制御のことであるから、投資とは、チャンステイクとリスク管理の複合なのである。
投資のチャンスは、常に、世界のいたるところに、様々な形で存在する。投資とは、発見したチャンスについて、チャンステイクする方法を考えることである。例えば、人は、エマージング経済圏のなかに成長というチャンスを発見し、それをチャンステイクしようと意図したとき、エマージング諸国の株式市場に着目するのである。
エマージング経済圏の成長がチャンスならば、チャンステイクの方法は、エマージング株式投資以外にも、例えば、不動産であるとか、先進経済圏の株式市場に上場されている企業群でエマージング経済圏の成長の恩恵を直接に受けるものとか、自由に構成され得るはずであって、それが投資の創造性なのである。また、リスク管理の方法としても、先進経済圏の株式にエマージング経済圏の成長機会を求めることで、エマージング諸国に固有の政治リスクを制御できるわけである。
同様に、人は、米国株式市場のなかにテクノロジー革新のチャンスを探すのではなく、テクノロジー革新におけるチャンステイクのために、米国株式市場、その他の国の株式市場、プライベートエクイティ、果ては一定の条件を満たす限りにおいての暗号資産など、広範な領域を視野に入れた工夫をするのである。
このチャンステイクに発した投資対象の構成こそ、投資の本質なのだが、同時に、個々の投資領域においては、チャンステイクの効率的な実現のために、様々なリスク管理の技法が用いられていて、その総合が投資を科学にするわけである。
ここで重要なことは、何がチャンステイクの創造的工夫であり、何がリスク管理の技巧なのかを自覚的に峻別することである。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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